ロボットの「見る力」を支えるAIプラットフォーム市場、2032年には約105億ドル規模へ成長予測

YH Research株式会社は、『2026年 世界のロボットビジョンAIプラットフォーム市場調査レポート』を発刊しました。このレポートでは、ロボットビジョンAIプラットフォームの市場規模、競争状況、用途、地域ごとの特徴、そして今後のサプライチェーンの変化について詳しく分析されています。

ロボットビジョンAIプラットフォームとは

ロボットビジョンAIプラットフォームとは、産業用ロボットや移動ロボットなどが「見る力」を持ち、周囲の環境を理解し、作業を行うためのソフトウェアやアルゴリズム、開発ツール、関連技術サービスのことを指します。これらのプラットフォームは、カメラやセンサーとつながり、画像認識、3D処理、姿勢の推定、物のつかみ方計画などを通じて、ロボットが正確に動くことを助けます。例えば、センサーで物体の情報を取得し、AIで物体を検出し、最適なつかみ方を計算し、ロボットに指示を出すといった一連の流れをサポートします。

市場規模の拡大予測

YH Researchの初期調査によると、世界のロボットビジョンAIプラットフォーム市場は、2025年には約32億5000万米ドル、2026年には約38億5000万米ドルに達すると予測されています。さらに、2032年には約105億8000万米ドルまで成長すると見込まれており、大きな市場拡大が期待されています。

市場規模予測

この市場の成長は、産業用ロボットの導入が増えていること、3Dセンサーの価格が下がっていること、AIの処理能力が向上していること、そしてAIを搭載したロボットへの投資が拡大していることなどが背景にあります。特に、アジア地域は世界の産業用ロボット新規導入の約74%を占めており、ロボットの「見る力」を高度化し、AIソフトウェアを導入する大きな拠点となっています。

プラットフォームの進化と主な機能

これまで個別の案件ごとに設計されてきたビジョンシステムは、今後、標準化され、部品のように組み合わせられるプラットフォームへと変化していくと考えられます。プラットフォームの主な機能には、センサーとの接続、画像や点群(3Dデータ)の処理、物体の検出や分類、ロボットの動作計画、AIモデルの学習・検証・導入、そして稼働状況の監視などが含まれます。

主な用途としては、ばらばらに置かれた部品をつかむ「ランダムビンピッキング」や、パレットに積まれた荷物を下ろす・積む作業、機械の操作、組み立て時の位置決め、溶接や塗装の誘導、物流でのピッキング、外観検査、寸法測定、移動ロボットの環境認識、そしてロボットによる自律的な操作などが挙げられます。

競争環境と主要企業

世界の市場では、AI基盤企業、マシンビジョン企業、ロボットメーカー、3Dビジョン専門企業、システムインテグレーターなど、さまざまな企業が競争しています。各社は、計算基盤、アルゴリズム、カメラ、ロボットコントローラー、これまでのノウハウ、販売ルートなど、異なる強みを持っています。

主要な企業としては、NVIDIA、Cognex、KEYENCE、FANUC、ABB、KUKAなどが挙げられます。NVIDIAはAIモデルや開発環境、シミュレーションに力を入れています。CognexとKEYENCEは、産業用画像処理ソフトウェアやAIツール、カメラ、そして幅広い製造業の顧客基盤を持っています。FANUC、ABB、KUKAといったロボットメーカーは、視覚機能をロボットコントローラーやプログラミング環境に直接組み込んでいます。

競争の焦点は、単純な認識の正確さだけでなく、実際の現場環境への対応力、さまざまな種類のロボットとの互換性、導入にかかる期間、作業の速さ、データの活用、安全性、そして全体の費用へと移っていくと見られます。

企業分類

認識方式と用途の多様化

ロボットビジョンAIプラットフォームは、認識の仕方によって主に3つに分けられます。

2Dビジョンプラットフォーム

一般的な画像(白黒やカラー)を処理し、比較的費用が安く、高速で処理できるのが特徴です。平面での位置決め、コンベヤーでの追跡、部品の認識、コードの読み取り、外観検査などに使われます。

3Dビジョンプラットフォーム

ステレオカメラや3Dセンサーなどを使って、奥行きのある画像や点群(点の集まりで形を表すデータ)を生成します。これにより、3Dでの物体の切り分け、姿勢の推定、物のつかみ方の計算などを行い、ロボットに空間情報を提供します。ランダムピッキングやデパレタイジング、機械への部品供給、複雑な組み立て作業、物流ピッキングなどが主な用途で、特に成長が活発な分野の一つです。

マルチモーダル融合プラットフォーム

2Dや3Dの情報のほか、力覚(力の感覚)や触覚、言葉による指示、場面の意味情報、ロボットの状態など、複数の情報を統合して認識します。複雑な物流や移動しながら作業するロボット、柔軟な組み立て作業、研究室の自動化、人間型ロボットなどでの利用が中心です。現在は研究開発が進む段階ですが、今後高い成長が期待されています。

認識方式と用途

用途別では、現在「ロボットガイダンス・操作」が売上の大部分を占めていますが、自律移動ロボット(AMR)や移動しながら作業するロボット、AIを搭載した人間型ロボットの発展により、「環境認識・自律作業」向けの需要が拡大すると予想されます。

地域別の動向

ロボットビジョンAIプラットフォームの研究開発と供給は、北米、欧州、中国、そして日本が主な地域です。

  • 北米: GPUやAI開発のフレームワーク、産業用画像処理ソフトウェア、ロボットの基盤モデル、倉庫自動化で強みを持っています。

  • 欧州: 高い信頼性が求められる製造基盤、厳しい安全・品質基準、研究開発と標準化に強みがあります。

  • 中国: 大規模な製造基盤、サプライチェーンの集積、AI・センサー技術の急速な発展が特徴です。

  • 日本: 高精度なビジョン・光学技術、精密な製造ノウハウ、装置・部材産業に強みがあります。

地域別動向

サプライチェーンと今後の変化

サプライチェーンは、CMOSイメージセンサーや3Dカメラ、AIプロセッサなどの「上流」部品・技術から、ロボティクスAIプラットフォームやマシンビジョンソフトウェアなどの「中流」システム統合、そして自動車、電子・半導体、物流、食品飲料などの「下流」アプリケーション分野へと広がっています。

参入障壁としては、高度なアルゴリズムや大量のデータが必要な技術的な壁、高精度で信頼性の高い中核部品の要求、システムを統合する能力と業界のノウハウ、そして導入後の運用・保守サポート体制が挙げられます。

今後のサプライチェーンは、AIチップの高性能化・低消費電力化、3D/マルチモーダルセンサーの普及、ソフトウェアが主導する価値の変化、クラウドとエッジの連携、そして標準化やオープンなエコシステムの拡大が進むと予想されます。

サプライチェーン

まとめ

ロボットビジョンAIプラットフォームは、ロボットが事前にプログラムされた動きをするだけでなく、環境に適応し、自律的に作業を行うための重要なソフトウェア基盤となっています。今後は、3D化、AIを前提とした開発、簡単な設定で使えるローコード化、部品のように組み合わせられるモジュール化、そして複数の情報を融合するマルチモーダル化が進むでしょう。これにより、ロボットはさらに多様な場所で活躍し、私たちの社会や産業を大きく変えていくに違いありません。

YH Research株式会社の詳細は以下のURLから確認できます。
https://www.yhresearch.co.jp

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