水道管の図面をAIが自動で読み取り、拾い表と見積書を生成するアプリが登場

水道管の図面をAIが読み取り、拾い表と概算見積書を自動生成

株式会社renueは、給排水設備図面のPDFをアップロードするだけで、給水・給湯・排水といった系統や管の種類、口径ごとに配管の長さやバルブなどの個数を自動で算出し、拾い表(Excel形式)と概算見積書を作成するアプリを開発しました。

このアプリは、凡例が記載されていない図面でも、製図の一般的な知識に基づいて系統を判別できます。また、AIが読み取った結果は、図面上の線との照合や配管のつながりの確認によって自動でチェックされます。信頼性が低い箇所は「要確認」として示され、担当者は画面上で簡単に確認・修正することが可能です。

水道管の数量拾い 概算見積書づくり

取り組みの概要

今回開発されたアプリは、給排水設備図面のPDFを使い、配管数量の拾い出しから拾い表と概算見積書の作成までを一連の流れで行えるものです。これまでの積算担当者が手作業で行っていた「図面を目で追い、長さを測り、部品を数える」という作業を、AIが下書きし、人間が確認して最終決定する、という新しい分業体制に置き換えることを目的としています。

図面のPDFはページ画像に変換され、マルチモーダル生成AIが製図の一般的な知識をもとに、配管のルートや記号を正確に読み取ります。読み取った後の処理は、AIではなく、常に同じ結果を出すアルゴリズムが担当します。これにより、縮尺の確定や長さの計算、系統ごとの集計が機械的に処理され、読み取り結果が変わらなければ、必ず同じ数字が出力されます。

読み取りに自信が持てない箇所は「要確認」として一覧に表示され、担当者はクリック一つで確認・修正できます。拾い表には、確認の進捗状況が「確認状況」として明示されるため、未確認の数字はまだ仮の状態であるとすぐに分かります。出力される拾い表は、系統×口径ごとの集計に加え、記号の個数、ページごとの詳細、検算結果などがまとめられた4シート構成のExcelファイルです。

このアプリは現在デモ版として実装されており、今後は実際の設備工事会社やサブコンと協力し、その正確性と実用性をさらに高めていく予定です。

開発の背景と目的

建設業界では、働く人の数が減り続けています。建設業で働く人の数は、1997年のピーク時に比べて約30%減少しました。また、働く人の36.7%が55歳以上である一方で、29歳以下の若い世代は11.7%にとどまり、ベテランの技術や知識の引き継ぎが難しくなっています。

2024年4月からは、建設業でも時間外労働の上限規制が適用され、限られた時間と人数でこれまでの業務量をこなす必要が出てきました。人手不足による倒産も増えており、特に建設業での倒産が最も多くなっています。

積算業務は、個人の経験や知識に大きく依存する分野です。土木分野の事例では、ベテラン担当者が一つの案件で数時間から十数時間をかけて図面から数量を読み取っており、若手が関わる機会はほとんどありませんでした。

土木・建築分野ではAIを使った数量拾いが広がり始めていますが、給排水設備の積算には特有の難しさがあります。建築の数量拾いが面積や長さといった計測が中心であるのに対し、給排水設備では「どの系統の配管か」「管の種類や口径は何か」「バルブや量水器の種類と個数はいくつか」といった複数の情報を同時に読み取る必要があるためです。また、凡例や記号の書き方が設計事務所ごとに異なることも、自動化を難しくしていました。さらに、PDF図面しか手に入らず、CADソフトの計測機能が使えない案件も多いため、手作業に頼らざるを得ないのが現状です。

renueがこのアプリを開発した目的は、AIと常に同じ結果を出すアルゴリズムを組み合わせることで、この分野に実用的な解決策を示すことです。単にAIで読み取るだけでなく、自動で検算し、「どこが怪しいか」を明確にすることで、積算の正確性を保ちながら自動化のメリットを提供することを目指しています。

renueはこれまで、図面AI「Drawing Agent」で2D図面の読み取りや3Dモデル生成の技術を培ってきました。その技術を設備積算の分野に応用したのが、今回の取り組みです。

従来の数量拾いの課題

目視と手作業に頼る拾い出し

給排水設備の積算では、配管の数量を拾い出す作業に特に時間がかかります。担当者は図面上の配管を系統ごとに色分けしながら追いかけ、定規で長さを測り、バルブなどの部品を一つずつ数え上げます。この繰り返し作業が積算にかかる時間の大部分を占め、案件が重なる時期には見積書の提出期限を圧迫することもあります。

図面を読み解くために必要な知識は、マニュアル化が難しく、担当者を増やそうとしても育成に時間がかかります。作業は担当者の経験と知識に大きく左右されます。例えば、給水と給湯の配管を区別するには、線の種類や記号の読み方を知っている必要があり、凡例がない図面では設計者の意図を推測しながら判断する場面も出てきます。

担当者が変わると、拾い漏れや系統の誤分類が起きやすいため、見積もりの正確さを保つためには別途チェックする工程が欠かせません。このチェックにも図面を追い直す時間がかかるため、ベテランへの負担が集中し、見積書の提出が遅れたり、仕事の機会を逃したりすることにつながります。また、ベテランの退職とともに、積算のノウハウが失われるリスクも抱えています。

凡例のばらつきと図面の品質

給排水設備図面の記号や線の種類は、JIS規格に沿ったものから設計事務所独自の書き方まで様々です。凡例が添付されていない図面や、古いスキャン図面が使われることも珍しくありません。

凡例があることを前提とする自動化ツールは、このような図面には対応できないため、結局は図面を読める人の目に頼ることになります。線の種類や記号の解釈を一つ間違えると、その系統の集計全体が狂ってしまうため、担当者は常に間違いが許されないという緊張感の中で作業しています。

縮尺の不確かさが全体に影響

PDFとして出力された図面は、印刷設定や変換の過程で縮尺が変わってしまうことがあります。縮尺を間違えたまま長さを計算すると、一部の拾い漏れとは異なり、全体の数量に一律の誤差が生じるため、見積金額に大きな影響が出ます。

手作業では、担当者が通り芯の寸法などから縮尺を確認し、修正しますが、この確認自体も経験が必要な作業です。もし集計後に誤りに気づけば、拾い直しでさらに時間を失うことになります。

仕組みの特長

凡例のない図面でも系統を判別

アップロードされたPDFは、まずページごとに自動で分類され、配管平面図や部分詳細図、凡例などから拾いの対象となる図面が絞り込まれます。部分詳細図は参考として読み込まれますが、合計からは除外されるため、同じ配管が二重に計上されるのを防ぎます。

読み取り結果は、図面の上に系統ごとに色分けされて表示されます。これにより、系統ごとに表示を切り替えながら、拾い残しがないかを目で確認することもできます。

給水・給湯・排水といった系統の判別は、図面に凡例があるかどうかに関わらず機能します。凡例があればその定義を優先し、なければ「給水は実線、給湯は一点鎖線、排水は破線」といった一般的な製図の慣習に基づいて判断します。

バルブ、量水器、止水栓、衛生器具などの記号も、業界で一般的に使われる言葉に変換して数え上げます。口径や管の種類(VP・HIVP・SGPなど)は、配管近くの注記から読み取り、表記の揺れを吸収した上で、系統と口径ごとの集計に紐づけます。図面ごとの事前設定やテンプレートの登録は不要で、PDFをアップロードするだけで拾い出しが始まります。

建築図面、平面図

通り芯から縮尺を確定し、常に同じ結果で集計

長さの正確さは、縮尺の確定によって決まります。このアプリは、通り芯(柱の位置を示す基準線)を画像処理で自動的に検出し、AIが読み取った寸法値と照らし合わせることで縮尺を確定します。図面の枠に書かれた縮尺とも比較し、大きな違いがあれば「要確認」として表示されます。縮尺が確定できない場合は、曖昧な数字を出すのではなく「算出不能」と明確に示します。

長さの計算と集計はAIに任せず、常に同じ結果を出すアルゴリズムが担当します。読み取られた経路は直角に補正され、寸法注記、通り芯からの計算、縮尺換算のどれを根拠に長さが算出されたかが、配管一本ごとに記録されます。エルボ(曲がり管)は経路の折れ点から、チーズ(分岐管)は分岐の接続関係から機械的に数えられます。

立て管の長さは、断面図から階の高さが読み取れた場合にのみおおよその値を計算し、読み取れない場合は数字を作らず「階高の情報をご提供いただければ自動で加算します」と案内します。給水と給湯の配管が近くに並んでいて一本ずつ区別できない区間は「要確認の束」として合計から外し、内訳が確定したものだけを数量に戻します。

拾い表には、合計値だけでなく、長さの信頼度(人が確認済み・高信頼・中・低/要確認)の内訳、読み取り時の仮定、読み取れなかった事項がすべて記載されます。これにより、数字の根拠を後から確認できるため、社内でのダブルチェックやお客様への説明にもそのまま利用できます。

拾い出し表

AIの読み取りを自動で検算し、人が確定

このアプリは、AIの読み取り結果をそのまま信用しないという前提で設計されています。AIが示した経路が図面上の実際の線と重なっているかを照合し、ずれていれば修正し、線が見当たらない場合は「実在しないルートの疑い」として報告します。

線の種類と系統の宣言の照合、配管のつながり(接続グラフ)の整合性チェックも行われます。どの配管にもつながっていない孤立した記号は「拾い漏れの可能性」として警告されます。

検算の結果は「要確認」として画面と拾い表に一覧で表示されます。担当者が確認リストの項目をクリックすると、図面上の該当箇所が強調表示され、その場で修正するか、確認ボタンを押すだけで確定できます。

系統や口径の修正、誤検出の削除に加え、読み取れなかった配管を図面上でクリックして描き足す手動追加にも対応しています。人が触れた項目は自動で確認済みとなり、修正後の再集計はAIを使わないアルゴリズム処理のため、数秒で完了します。拾い表には、人が確認した項目数が「確認状況」として明確に表示され、未確認の数字は下書きとして扱われます。

概算見積書は、拾い表からボタン一つで作成できます。配管工事、弁類、支持金物、試験費、諸経費といった見積書で一般的な項目に沿った構成で、拾い数量は実際の値として白いセルに、単価は後で変更できる仮の値として色付きのセルに分かれています。これにより、どこまでが図面に基づいた事実で、どこからが仮定なのかが一目でわかるようになっています。

見積書

想定される効果

拾い出し工数の削減

  • 系統の判別、縮尺の確定、長さの集計、記号の数え上げが自動化されるため、担当者の作業は「要確認」箇所の確認と修正に集中できます。これにより、従来の目視による拾い出しと比較して、作業時間の削減が見込まれます。

  • 概算見積書まで自動で作成されるため、拾い表から見積書へ転記して体裁を整える手間が省けます。単価を自社の実際の価格に差し替えるだけで、概算提示までの時間を短縮できます。

  • CADデータが手に入らずPDF図面しかない案件にも適用できるため、これまで完全に手作業で行っていた拾い出し作業を置き換えることが可能です。

  • 拾い表はExcel形式で出力されるため、集計後の転記や社内での共有がスムーズに行えます。

積算品質の安定化

  • 系統判別と数え上げの自動化により、担当者ごとの拾い漏れや誤分類のばらつきを抑えることができます。

  • 読み取りに自信が持てない箇所が「要確認」として明確に表示されるため、これまでは担当者の注意に頼っていたチェック作業が、仕組みとして組み込まれます。

  • 長さの根拠、読み取り時の仮定、判読できなかった事項が拾い表に残るため、数字の出どころをいつでも確認できます。積算根拠の説明を求められる際にも、確認済みの範囲と概算の範囲を分けて示すことが可能です。

  • 自作の検証用図面(正解データ付き)を7回読み取らせた実験では、合計数量の誤差は±2〜8%の範囲でした(特定の検証図面1件に対する実測値で、実行ごとに変動します)。系統×口径の分類と記号16個の数え上げは、すべての実験で正解と一致しました。

  • 縮尺を複数の根拠を照らし合わせて確定するため、PDF変換によって生じる全体的な誤差を抑えることができます。

若手への業務開放

  • 「どの線が給水か」といった知識がなくても、AIの判別結果と要確認リストを基に拾い出し作業に参加できます。ベテランの確認を最終工程に置くことで、経験の浅い担当者でも拾い作業を進められる体制づくりを支援します。

今後の展開

今回の仕組みは、営業デモとして実装された段階です。今後は、設備工事会社やサブコンとの共同検証を通じて、実際の案件の図面での正確性と実用性を確認していきます。

技術面では、設計事務所ごとの記号の書き方の違い、複数階にわたる系統の追跡、改修工事で使われる古い図面など、様々なバリエーションへの対応を広げることに取り組む予定です。読み取りの安定性についても、同じ図面を複数回読み取って照らし合わせる方式の検証を進めます。

この拾い出しの仕組みは、ガス配管の数量拾いにも同じ技術で対応しており、電気、空調、消防といった他の設備系統への展開も検討されています。将来的には、積算・見積システムとのデータ連携により、拾い表作成から見積書提出までの時間を短縮することを目指しています。

renueは、図面AI「Drawing Agent」で培った図面読み取り技術を設備積算の分野に広げ、建設業の人手不足を解決するソリューションを提供し続けていきます。

会社概要

  • 会社名: 株式会社renue

  • 所在地: 〒105-7105 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター 5階

  • 代表者: 山本悠介

  • 事業内容: AIコンサルティング業

  • URL: https://renue.co.jp/

本件に関するお問い合わせ

株式会社renue 広報担当

  • メール: info@renue.co.jp

  • 電話: 03-4500-7154

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