AIは仕事を奪うのか?経済学から見るAIと人間が協力する未来

住まいを選び直す自由

株式会社property technologiesが運営するPropTech-Labは、連載「住まいを選び直す自由 ー住宅流動性と人生設計の経済学ー」の第2回として、「AIは仕事を奪うのか──タスク代替の経済学と『人間と機械の分業』」を公開しました。本稿では、一橋大学大学院の清水千弘教授が、AIと仕事の未来について経済学的な視点から解説しています。

AI普及と生産性の謎「ソローのパラドックス」

1987年、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・ソローは、コンピューターが広く使われているにもかかわらず、生産性の伸びが見られないという「ソローのパラドックス」を指摘しました。それから約40年が経った現在、私たちは同じような問いに直面しています。ChatGPTや画像生成AI、自動運転技術が普及しているにもかかわらず、マクロな生産性統計にはAIの影響が限定的にしか現れていません。これは「AI版ソローのパラドックス」とも呼ばれています。

しかし、過去のソローのパラドックスは、時間が経つにつれて解消されました。コンピューターと情報技術が企業の業務プロセスや組織、人材と「補完」し合う関係を築き、社会に定着するまでに20年以上の時間がかかったためです。このことから、AIについても同様に、社会に正しく組み込まれることで生産性は確実に上昇すると考えられます。ただし、そのためには制度や人材、組織、既存設備の変革が必要であり、これには時間がかかると指摘されています。

AIの経済学的定義と変化の仕組み

トロント大学の研究者たちの著書に基づき、AIは「予測コストを劇的に低下させる技術」と定義されています。

AIとは、予測のコストを劇的に低下させる技術である。

AIは、画像認識や文章生成、自動運転、医療診断支援など、あらゆる場面で「ある条件の下で何が起こるか」を確率的に推論する役割を担います。これにより、人間が行えば時間と専門知識が必要だった作業を、機械が安価かつ大量に行えるようになります。

経済学の原理によれば、あるもののコストが下がると、その利用が増え、その「補完財」(一緒に使うと価値が高まるもの)の価値が上がり、「代替財」(代わりになるもの)の価値が下がります。AIの場合、予測のコストが下がることで、人間の予測労働の価値は下がります。一方で、「判断する力」「データを整える力」「判断を実行に移す力」といった予測の補完財の価値は上がると考えられています。

例えば、経理職員は計算の予測をする仕事でしたが、AIの登場で計算予測のコストは下がります。その代わりに、社員とのコミュニケーションを円滑に進め、倫理観を持って組織を支えるといった「判断」と「行動」が、経理職員の価値の中心になるでしょう。AIは人間を置き換えるのではなく、人間が担うべきタスクの内容を変えるということです。

AIは仕事を奪うのか?タスク代替の視点

2017年、オックスフォード大学の研究者が発表した論文では、米国の労働市場の約47%の職業が自動化のリスクにさらされるという衝撃的な推計が示されました。しかし、この推計に対しては、多くの経済学者から反論が出ています。

ドイツの労働経済学者メラニー・アーンツらは、この研究が「職業全体が代替される」ことと「職業の中の特定のタスクが代替される」ことを混同していると指摘しました。実際には、ほとんどの職業は複数のタスクで構成されており、AIに代替されるのはその一部のタスクです。タスクごとに細かく評価し直すと、職業全体が消失するケースははるかに少なくなり、OECD加盟国全体では自動化リスクが高い職業は約9%に下方修正されました。

AIは仕事を奪うのではない。仕事の中の特定のタスクを代替するのである。

技術的な可能性として「AIができること」を見積もるのではなく、「実際の職業の中でAIに代替されるタスクの割合」を見積もる「タスク中心の発想」が重要です。AIは職業そのものを奪うのではなく、タスクを再編成する役割を担い、その再編成の質が社会全体の生産性を決めると考えられています。

AIに仕事を奪われず、むしろAIを組織にうまく組み込んで生産性を上げるためには、過去の歴史から学び、AI時代における「人間と機械の新しい分業ルール(予測・判断・責任の三層構造)」を理解することが必要です。

本連載の続きは、PropTech-Lab公式サイトで読むことができます。

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『PropTech-Lab』は、不動産市場に新たな価値をもたらし、住まいを選ぶ際の新しい基準や簡便さ、価値観を育むことを目指しています。市場のニーズに応え、価格高騰を抑えながら、より多くの人々が質の高い住宅を手に入れられるよう取り組んでいます。

『PropTech-Lab』 所長 清水 千弘 氏について

清水千弘氏

清水千弘氏は、一橋大学大学院ソーシャルデータサイエンス研究科教授であり、社会科学高等研究院都市空間不動産解析研究センターのセンター長を務めています。東京工業大学大学院を中退後、東京大学で博士号(環境学)を取得。財団法人日本不動産研究所研究員、リクルート住宅総合研究所主任研究員、麗澤大学教授、日本大学教授、東京大学特任教授などを歴任しました。

2022年1月に株式会社property technologiesグループに参画し、社外取締役を経て、2024年7月より『PropTech-Lab』所長に就任しています。

株式会社property technologies(プロパティ・テクノロジーズ)について

株式会社property technologiesは、「UNLOCK YOUR POSSIBILITIES. ~テクノロジーで人生の可能性を解き放つ~」をミッションに掲げています。年間36,000件以上の不動産価格査定実績や、グループで累計約15,000戸の不動産販売で培ったリアルな取引データとノウハウを活かし、「リアル(住まい)×テクノロジー」を通じて、誰もが、いつでも、何度でも、気軽に住み替えることができる未来を目指しています。手軽で利用しやすい不動産取引を提供しています。

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