大林組、3D都市モデル「PLATEAU」活用で環境設計プラットフォーム「ArchiPALETTE™」を開発

設計初期から高度な環境シミュレーションを可能に

株式会社大林組は、設計者が建物の建設による風や景観への影響を簡単に予測・評価できる環境設計プラットフォーム「ArchiPALETTE™(アーキパレット)」を開発しました。このプラットフォームを使うことで、これまで専門家への依頼が必要だった環境評価を、設計の早い段階から何度も行えるようになります。これにより、検討の時間を短くし、設計の質を高めることができます。

ArchiPALETTEの機能概要

開発の背景

近年、地球環境に配慮した建物や街づくりが重要視されており、風の流れ、日当たりの良さ、屋外での快適性などを考える「環境配慮設計」の必要性が高まっています。国や自治体では、国土交通省が主導する日本全国の3D都市モデル整備・オープンデータ化プロジェクト「PLATEAU(プラトー)」のようなデジタル基盤の整備が進んでいます。しかし、実際の設計現場で環境評価を行うには、専門的な知識や大量のデータ処理が求められるため、設計者が日常的に使うのは難しいという課題がありました。特に、デザインを変えるたびに専門家に分析を依頼するこれまでの方法では、設計の初期段階で十分に比較検討することが難しく、もっと早く検証できる方法が必要とされていました。

「ArchiPALETTE™」の主な特長

「ArchiPALETTE™」は、まず風環境CFD(数値流体力学に基づいて風の影響を評価するシミュレーション技術)の機能を搭載しました。その主な特長は以下の通りです。

1. 解析プロセスの全自動化

ウェブブラウザで評価したい場所を選ぶだけで、高画質なテクスチャ付きの3D都市モデル(PLATEAU)を自動で簡単に取得できます。さらに、独自の形状処理技術を使って、取得したデータをシミュレーションに適した3Dモデルに自動で変換します。気象データと組み合わせた条件設定から、解析の実行、結果の表示までが全て自動で行われます。これにより、設計者は設計の早い段階から環境や景観の評価を繰り返し行えるようになり、検討のサイクルを大幅に短縮し、やり直しの手間を減らせます。

3D地図での解析範囲指定

2. 解析時間の大幅短縮

独自のビッグデータ処理技術とクラウドHPC(高性能な計算資源をインターネット上で利用する仕組み)を組み合わせることで、複数の風向きの解析を同時に行えます。これにより、一般的なパソコン1台で計算した場合と比べて、計算の効率が約500倍も向上するとされています。また、解析結果は信頼性の高い風洞実験と比較して検証されており、十分な精度が確認されています。

ArchiPALETTEによる計算時間の比較

3. 解析結果の3D地図可視化

解析結果は、写真のようにリアルな3D地図の上に重ねて表示されます。建物だけでなく、周りの街全体における風の流れなど、周辺環境への影響を視覚的に把握できます。これにより、専門知識がない人とも評価結果を分かりやすく共有することが可能です。

3D都市モデルに重ねて表示された気流シミュレーション結果

今後の展望

大林組は、自社の設計施工プロジェクトに「ArchiPALETTE™」を導入し、風環境や景観に加えて、日当たりや屋外の快適性など、対応できる範囲を広げていく計画です。さらに、過去のデータを活用したAIによる学習で、環境予測をより速く行えるようにします。設計者と顧客が3D地図に表示されたデータを共有しながら、建物とその周辺の都市空間を一体的に検討できるプラットフォームへと発展させることを目指しています。

大林組は、優れたデザインと高い環境性能を両立した提案を設計の早い段階から迅速に行えるよう、設計体制の高度化を図ります。また、建物だけでなく、周辺の都市環境の快適性や環境性能にも配慮した設計を進めることで、顧客や社会への提供価値を高めていくとしています。

×