日本の玄武岩繊維市場、2035年には3,699万米ドル規模に拡大予測~老朽インフラ更新需要が牽引

玄武岩繊維の日本市場は、今後大きく成長すると予測されています。2025年時点の市場規模は1,534万米ドルと推定されており、2026年から2035年の間に年平均成長率(CAGR)9.20%で拡大し、2035年には3,699万米ドルに達する見込みです。

株式会社マーケットリサーチセンター

市場成長の背景

この市場拡大の背景には、日本の沿岸部や地震が多い地域にある古いインフラの更新需要があります。特に港、トンネル、防潮堤、橋などでは、鉄筋が塩分で錆びることが維持費用を高くしています。このような場所では、錆びにくく長持ちする「玄武岩繊維」のような金属以外の補強材に注目が集まっています。公共機関やインフラ事業者は、最初に費用がかかっても、長期間で見たときの費用(ライフサイクルコスト)を重視する傾向が強まっています。玄武岩繊維は、鉄鋼製の補強材や高価な炭素繊維の中間的な選択肢として、耐久性と価格のバランスが良いと評価されています。

製品タイプ別の動向

製品タイプ別に見ると、日本市場では「ロービング」が最も多く使われています。ロービングは、玄武岩繊維強化プラスチック(BFRP)鉄筋や補強パネルなど、様々な用途に利用できます。既存の複合材料やコンクリート加工の設備にも比較的導入しやすいため、日本の建設業者やプレキャストコンクリートメーカーにとってメリットがあります。ロービングは予測期間中にCAGR 9.8%で成長すると見込まれています。

一方、「ファブリック」は10.5%の成長が予測されており、特定の方向への補強が必要な積層材や特殊な構造に利用が広がると考えられています。「メッシュおよびグリッド」は、インフラ補修の需要を背景に、最も速いペースで拡大するとみられています。コンクリートの補修や道路の修繕、海の構造物などで、従来の金属製メッシュの代わりに使われることが期待されています。軽量で工事が簡単なため、現場での作業量を減らすことにもつながります。

用途別の動向

用途別では、「複合材料」分野が市場の中心であり、2026年から2035年にかけてCAGR 9.9%で成長すると予測されています。玄武岩繊維をプラスチックやセメントと組み合わせることで、錆びにくさ、耐久性、機械的な性能を管理しやすくなります。特に、エポキシ樹脂やビニルエステル樹脂との相性、燃えにくさ、長期間の耐久性を高めることが製品開発の重要なテーマです。

また、玄武岩繊維を直接セメントやモルタルに混ぜて、引っ張る力やひび割れへの強さを高める「非複合用途」も拡大しています。この方法は樹脂材料や固める工程が不要なため、予算や工期に制約がある補修・改修工事で導入しやすいという特徴があります。研究結果によると、玄武岩繊維は300℃で5分間加熱した後でも約80%の強度を保つとされ、一定の耐熱性も非複合用途を後押しする要因となっています。

最終用途別の動向

建築・建設分野

「建築・建設」分野が最大の市場を形成し、予測期間中のCAGRは11.2%と、主要な区分の中でも高い成長が見込まれています。日本では、古い公共インフラの更新に加え、地震への強さ、燃えにくさ、耐久性を重視する設計が増えているため、玄武岩繊維の特性と市場のニーズが合致しています。特に海や沿岸の構造物、トンネル、橋、地震対策、工場で作られる部材などでは、鋼材の錆びを防ぎながら長持ちさせられる点が評価されています。2025年には、世界初の玄武岩由来コンクリートが導入された例も報告されており、玄武岩を構造材料として広く活用する動きも出ています。

風力エネルギー分野

「風力エネルギー」分野は、市場規模では建設分野よりも小さいものの、最も成長性の高い最終用途の一つです。日本で洋上風力発電を含む再生可能エネルギーの開発が進む中、風力発電のブレード(羽根)の補強材や部品、構造パネルなどへの玄武岩繊維の利用が検討されています。玄武岩繊維は、繰り返しの負荷に強く、熱にも安定しており、ガラス繊維よりも耐久性が高まることが期待されるため、部品の寿命を延ばし、コストを抑えたい風力発電事業者にとって適した素材とみられています。

その他の分野

「自動車」「航空宇宙・防衛」「造船」でも用途が広がる可能性があります。玄武岩繊維は、ガラス繊維に近い引っ張る力を持つ一方で、熱に強く、炭素繊維よりも低コストです。そのため、炭素繊維ほどの高い性能は必要ないものの、ガラス繊維以上の耐久性や硬さを求める用途に適していると考えられています。例えば、自動車のシャシー部材、バッテリーケース、軽量パネル、輸送機器部品などでの活用が期待されています。ただし、これらの分野では、製品として認められるための認証取得や長期間にわたる性能確認が必要なため、建設用途に比べて採用は慎重に進むとみられています。

技術的な進展と持続可能性

市場拡大を支える技術面では、製造効率の向上、コーティング技術、表面処理、国内での加工能力の拡充が重要視されています。研究機関や産業界では、より速い製造炉や加工技術の改善が進められています。例えば、2025年3月には、軽さと電気の通りやすさを両立し、電磁波の遮蔽にも対応するアルミニウム被覆玄武岩繊維「AluCoat」が紹介されています。

また、玄武岩繊維は、天然の岩石を原料とするため、多くの合成繊維と比較して、原材料の面で環境への影響を説明しやすく、エネルギー消費や廃棄時の環境負荷を抑えられる材料として注目されています。日本では、公共工事などで初期費用だけでなく、ライフサイクルコストやリサイクル可能性を考慮する傾向が強まっており、玄武岩繊維の特性が高く評価される可能性があります。

市場の実用化と競争環境

玄武岩繊維市場は、研究段階から具体的な調達・施工案件へと移行しつつあります。2025年11月には、プレキャストコンクリート企業と玄武岩繊維企業が、玄武岩繊維強化マクロファイバーを使用した製品の導入で提携したとされています。また、製造技術への投資も活発化しており、2025年7月には建設用途向けの自動玄武岩繊維製造技術を手掛ける企業が260万ユーロの資金を調達しています。

日本の玄武岩繊維市場はまだ始まったばかりですが、インフラを長持ちさせることが国の方針として重要になるにつれて、戦略的な重要性が高まっています。競争の焦点は、単なる価格だけでなく、繊維の品質の安定性、国内での加工対応力、用途に応じた製品の種類、認証取得の支援、技術指導、価格の安定性などに移っています。新材料の採用には長い評価・承認期間が必要なため、メーカーは施工会社との共同試験や技術支援が重要になります。

主要企業としては、Zhejiang GBF Basalt Fiber Co., Ltd(中国)、Technobasalt Invest、ALLTE CLOTH CORPORATION(日本)、Kamenny Vekなどが挙げられます。

まとめ

日本の玄武岩繊維市場は、老朽インフラの更新、地震対策、沿岸構造物の錆び対策、再生可能エネルギーの拡大、軽量化、持続可能性といった様々なテーマによって成長が支えられる市場です。特に、鉄鋼材よりも錆びにくく、炭素繊維よりも低コストで、ガラス繊維よりも高い機械的・熱的性能を持つという「中間的な性能と価格のバランス」が最大の強みです。今後は、材料の性能向上に加え、認証や規格化、コンクリートとの接着性、長期間の耐久性の証明、国内での加工体制、施工現場への導入のしやすさなどが普及の速度を左右すると考えられます。

短期的には建築・建設やインフラ補修が需要を牽引し、中長期的には風力発電、自動車、船舶、航空宇宙などへ用途が広がることで、市場はさらに拡大していくと見込まれています。

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