主要上場建設会社の約9割で売上総利益率が改善 – 人手不足と積極的な価格転嫁が奏功
主要上場建設会社の約9割で売上総利益率が改善
帝国データバンクは、主要な上場建設会社50社(2025年4月~2026年3月決算企業)を対象に、2025年度の受注や業績の動向を調査・分析しました。この調査には、未上場ですが売上規模が大きい竹中工務店も含まれています。
2025年度の主要上場建設会社50社の連結業績は、売上高が前年度と比べて5.0%増、売上総利益率も1.7ポイント上昇と、どちらも増加しました。
人手不足による工事を進める能力の制約がある中で、資材費や人件費が上がった分を工事の請負金額に積極的に反映させる動きが加速した結果、50社中44社で売上総利益率が改善しています。また、単独の工事受注高が分かった企業では、前年度と比べて11.7%増となりました。これは、民間からの受注が高い水準を保ち、官公庁からの受注も回復したことが全体の受注を押し上げたためです。
売上高の動向:前年度から1兆円を超える増加
2025年度の主要上場建設会社50社の売上高合計(連結ベース)は、前年度と比べて5.0%増の21兆4097億8200万円でした。増収となった企業は36社(全体の72.0%)に上ります。
売上高の増加率では、「インフロニア・ホールディングス」が前年度比32.7%増でトップとなり、「ナカノフドー建設」が同24.9%増、「植木組」が同24.8%増と続きました。一方、減少率が最も大きかったのは「佐藤渡辺」で前年度比16.6%減でした。
政府による防災・減災、国土強靱化対策などによる公共投資が安定して行われたことで、官公庁からの受注が前年度比6.5%増と回復しました。さらに、都市部での再開発計画などによる設備投資の需要で、民間からの受注も引き続き高い水準で推移しています。これに加え、資材費や人件費の上昇分を反映した工事の請負単価が上がったことも貢献し、7割以上の企業で売上高が増加しました。

売上総利益率の動向:受注選別と価格転嫁が進む
2025年度の主要上場建設会社50社の売上総利益率(連結ベース)は、平均で13.5%となり、前年度より1.7ポイント改善しました。売上総利益率が上昇した企業は44社(全体の88.0%)で、全体の9割近くで利益を出す力が向上したことが分かります。
上昇幅が最も大きかったのは「日本国土開発」で前年度比10.3ポイントの上昇、「大成建設」が同5.1ポイントの上昇で続きました。利益率が下がった企業でも、その下がり幅は小さく、全体的に利益率の改善が目立つ結果となりました。
工事の受注環境は比較的良い一方で、深刻な人材不足のために工事ができる企業自体が限られる状況が続いています。特に大きな工事や難しい案件では、発注する側がコスト増を受け入れざるを得ない状況になりつつあります。このような状況の中で、各社が利益の大きい案件を選ぶようになったことや、資材費・人件費の上昇分を請負金額に積極的に転嫁する動きを強めたことが、全体の売上総利益率を押し上げた主な理由と考えられます。
受注動向:前年度比11.7%増、官民ともに高水準
主要上場建設会社50社のうち、単独の受注高が分かった37社の2025年度の受注高合計は、前年度と比べて11.7%増の16兆1026億3700万円でした。この37社のうち23社(62.2%)で受注高が増加しています。
この背景には、防災・減災や国土強靱化の推進による公共投資に加え、都市部の再開発や物流施設、データセンター、半導体関連工場といった大規模な設備投資が次々と行われたことがあります。また、海外からの観光客増加に伴う宿泊施設の需要の高まりなど、官公庁と民間企業の両方で活発な工事の発注が見られました。資材費や人件費の上昇分を反映した請負単価の上昇も、受注高の増加に貢献しています。
増加率では、都市部の再開発事業で受注を伸ばした「竹中工務店」が前年度比79.0%増でトップ、「清水建設」が同35.2%増、「大末建設」が同34.4%増と続きました。20%以上の受注高増加を記録した企業は13社ありました。
官公庁・民間工事の受注内訳
工事受注高の内訳(官公庁・民間)が判明した27社を見ると、官公庁工事の受注高は前年度比6.5%増の2兆8809億2900万円でした。増加企業数は16社(59.3%)です。
官公庁受注高の伸び率では、「イチケン」が前年度比538.5%増でトップ、「ナカノフドー建設」が同241.5%増、「名工建設」が同84.7%増と続きました。
民間工事の受注高は、前年度比5.2%増の9兆152億1500万円でした。増加企業数は15社(55.6%)です。
民間受注高の伸び率トップは「日本国土開発」の同88.3%増、「佐田建設」が同62.1%増、「安藤・間」が同41.8%増となりました。

まとめと今後の展望
2025年度の上場建設会社50社の売上高(連結ベース)は、国土強靱化計画に伴う官公庁工事の発注が増加したほか、都市部の再開発や物流施設、データセンターなどの設備投資により民間工事も堅調に推移しました。これに請負単価の上昇も加わり、7割以上の企業で増収となりました。
売上総利益率では、人手不足による施工能力の制約を背景に、資材費や人件費の上昇分を請負金額へ積極的に転嫁する動きが加速し、前年度比1.7ポイント改善しました。調査対象企業の88%で売上総利益率が向上しています。
単体の受注高が判明した37社の受注高合計は、前年度比11.7%増となりました。また、工事受注高の内訳が判明した27社を見ると、前年度も好調だった民間受注は高水準を維持し、官公庁受注が回復したことが全体の受注増加につながっています。
多様な需要が同時に発生している一方で、深刻な人材不足や資材調達の難しさから、企業が施工能力を大きく引き上げることは非常に難しい状況にあります。しかし、この需要と供給のギャップにより、大手建設会社は資材費や人件費の上昇分を請負金額に反映しやすくなり、2025年度は売上総利益率の改善という形で結果に表れました。
以前は売上規模を大きくすることが重視され、たくさんの案件を受ける戦略が一般的でしたが、現在は利益を確実に確保できる案件を選ぶ方向へと変化していることが明らかです。人材や工期に制約がある中で無理に受注すると赤字工事につながるため、自社の施工能力に合わせて受注量を調整し、利益を重視する姿勢を強めています。近年広がっている、資材価格の変動を契約に反映する「物価スライド条項」や、設計変更に伴う追加契約の運用も、この一環と言えるでしょう。
今後については、官公庁では防災・減災や国土強靱化対策事業などが見込まれ、民間ではAI需要を背景としたデータセンターの建設、都市部の大型再開発が続くと予想されます。さらに再生可能エネルギーや脱炭素関連ビジネスの市場拡大もあり、建設需要はしばらく安定して高い水準で推移すると予想されます。当面の受注環境に大きなマイナス要素はないものの、国内の人口減少に伴い人手不足がさらに深刻化することは確実視されています。需要が堅調な今のうちに、生産性の向上や会社を支える経営基盤を維持・確立するための対策が必要となるでしょう。
本調査に関する詳細は、以下のリンクから確認できます。


