日本のパブリッククラウド市場、2035年には約1,563億ドル規模へ成長予測

日本のパブリッククラウド市場、2035年に向けて急成長

日本国内のパブリッククラウド市場は、企業のデジタル変革(DX)の推進、生成AIの本格的な活用、そしてデータ処理の需要増加を背景に、大きく広がることが予測されています。

株式会社レポートオーシャンによると、この市場は2025年の569億3,290万米ドルから、2035年には1,563億60万米ドルへと成長する見込みです。2026年から2035年までの年平均成長率(CAGR)は11.88%と予測されており、従来のITインフラから、柔軟で拡張性が高く、費用効率の良いクラウド環境への移行が進んでいます。

Report Ocean

AI時代の到来がクラウド需要を押し上げる

近年、日本の企業では生成AIや機械学習モデルを使った業務改革への関心が高まっています。これらの技術を実際に使うためには、大量のデータを処理する能力、速いデータ保存、そして柔軟なコンピューティング環境が必要です。このような背景から、パブリッククラウドサービスへの需要が強く伸びていると考えられます。

特に金融、製造、通信、小売、ヘルスケアといった分野では、多くのデータをリアルタイムで処理する必要が増しており、クラウドを使ったアプリケーション開発やAIに対応したインフラへの投資が増加しています。企業は、必要な時に必要な分だけリソースを利用できるクラウドモデルに切り替えることで、設備への投資を減らし、事業の変化に素早く対応できるようになります。

SaaS、PaaS、IaaSの進化と市場競争

日本パブリッククラウド市場では、サービスの種類ごとに異なる成長が見られます。SaaS(Software as a Service)は、業務アプリケーションをクラウドで利用する企業が増えたことで広く導入されています。一方、PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーション開発環境やAIサービスを作る基盤として重要性を増しています。さらにIaaS(Infrastructure as a Service)は、大規模なデータ処理や高性能なコンピューティングの需要が高まることで、企業のデジタル基盤として欠かせない存在となっています。特にAIが中心となる時代では、GPUコンピューティング、データ処理環境、リアルタイム分析能力を持つクラウドインフラへの需要が高まり、クラウドを提供する企業間の技術競争も激しくなっています。

パブリッククラウドとは

パブリッククラウドとは、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)といった第三者のプロバイダーが、企業や個人に提供するクラウドコンピューティングサービスです。サーバー、ストレージ、ネットワークなどのコンピューティングリソースは、クラウドプロバイダーのデータセンターで管理されます。ユーザーは使った分だけ料金を支払う「従量課金制」でこれらのリソースにアクセスできるため、必要な時に必要なだけ使える柔軟性があります。

市場の主な動向と新たな機会

2025年にはSaaSが市場をリードしましたが、今後はIaaSが市場を牽引すると予測されています。これは、柔軟なコンピューティング、ストレージ、ネットワークリソースへの需要が高まっているためです。

また、生成AI、IoT、ロボット技術、デジタルツイン、リアルタイム分析の導入が広がることで、スケーラブルなパブリッククラウドやエッジインフラへの需要が生まれています。製造業、医療、金融、小売、エネルギー、政府機関といった各業界に特化したクラウドプラットフォームも注目を集めています。

クラウド活用の変化(2025年〜2035年)

  • 2025年: クラウドへの移行が本格化し、AIに対応した基盤への投資が拡大しました。多くの企業が基幹システムのクラウド移行を進め、AI分析やデータ統合、業務自動化といった高度な利用が広がっています。

  • 2026年: 生成AIサービスの企業利用が拡大し、高性能なクラウド環境への需要がさらに高まると見込まれます。クラウドサービスは、企業の経営変革を支える重要な基盤となるでしょう。

  • 2027年: 複数のクラウドサービスを組み合わせる「マルチクラウド戦略」や、既存システムとクラウドを連携させる「ハイブリッドクラウド環境」の導入が進むと予想されます。企業は、セキュリティやコスト管理を重視しながら、柔軟なIT環境を構築していくでしょう。

  • 2035年: 市場規模は1,563億60万米ドルに達すると予測されています。クラウドは単なるITサービスではなく、AI、自動化、データ経営、新しい事業を生み出すための不可欠な企業基盤として定着することが期待されています。

セキュリティとデータ管理が市場成長の鍵

パブリッククラウドの導入が進むにつれて、企業はサイバーセキュリティ、データ保護、法律や規則への対応をより重視するようになっています。特に金融機関、政府機関、医療分野など、高いデータ保護が求められる分野では、高度なセキュリティ機能を持つクラウド環境への需要が増加しています。また、日本企業ではデータの保存場所や国内規制への対応も重要視されており、安全性と柔軟性の両方を兼ね備えたクラウド運用モデルが求められています。これにより、クラウドセキュリティサービスやデータ管理ソリューションといった関連市場も成長する機会が広がっています。

主要なクラウドプロバイダー

  • Amazon Web Services (AWS)

  • Microsoft Azure

  • Google Cloud Platform (GCP)

  • Alibaba Cloud

  • Oracle Cloud Infrastructure (OCI)

  • IBM Cloud

  • Salesforce

  • Tencent Cloud

  • Huawei Cloud

  • VMware

  • DigitalOcean

  • OVHcloud

  • SAP

  • その他の主要なプレイヤー

企業DXと産業デジタル化が新たなビジネス機会を創出

製造業におけるスマートファクトリー化、小売業での需要予測や顧客分析、金融業でのリアルタイムリスク管理など、各産業でクラウドの活用範囲が広がっています。日本では、人手不足への対応や業務効率化の需要が高く、クラウドを活用した自動化・省力化ソリューションへの投資が増えています。さらに、IoTデバイスの普及やエッジコンピューティングとの連携により、クラウドは企業の内部だけでなく、製品やサービスの価値を高めるプラットフォームとしても発展しています。

クラウド市場の競争激化と成長戦略

日本パブリッククラウド市場では、世界的なクラウド事業者と国内のIT企業による競争が続いています。市場に参加する企業は、単にインフラを提供するだけでなく、AIサービス、セキュリティ、業界に特化したソリューション、データ分析機能といった付加価値の高い分野に力を入れています。今後は、クラウドの性能だけでなく、企業ごとの業務課題に対応できる専門性、データ活用の支援、運用管理サービスの提供能力が、競争力を左右すると考えられます。

日本パブリッククラウド市場の成長を支えるリスク

急速な市場成長の裏側には、経営層が注意すべきいくつかのリスクも存在します。

  • クラウドへの依存度上昇による「戦略的コントロールリスク」

    • 特定の一つのクラウドプロバイダーに頼りすぎると、将来的な事業の柔軟性が制限される可能性があります。複数のクラウド環境の活用や、データの移行性、システム同士の連携を考えた長期的なIT計画が重要です。
  • AI時代のクラウドコスト増加と収益性への影響

    • 生成AIなどの活用は高性能なコンピューティングリソースを必要とし、クラウドのコストが増える可能性があります。クラウドへの投資が企業の売上や業務効率化に確実につながっているか、投資の効果(ROI)を見える化することが課題です。
  • サイバーセキュリティとデータ主権問題

    • サイバー攻撃やデータ漏洩といったセキュリティリスクは、経営にとって重要な課題です。特に金融や医療など、高いデータ保護が求められる分野では、クラウドサービスの選択が事業の継続性や企業のブランドに直接影響します。また、日本国内の規制やデータがどこに保存されるか(データ主権)も、クラウド戦略を決める上で重要です。
  • 人材不足とクラウド運用能力の制限

    • クラウドアーキテクトやデータエンジニア、サイバーセキュリティの専門家など、高度なデジタル人材の不足は、企業がクラウドを十分に活用できない主なリスクです。人材育成や、外部の専門企業との協力が重要になります。
  • クラウド市場競争激化によるビジネスモデル変化への対応

    • 市場の競争が激しくなる中で、クラウドプロバイダーはインフラ提供者から、AIプラットフォームやデータ分析基盤を提供する戦略的なパートナーへと変化しています。企業ユーザー側は、特定のベンダーへの依存やサービス価格の変更、技術のロードマップ変更が事業に与える影響を慎重に評価する必要があります。

今後10年間、日本パブリッククラウド市場の成長機会を最大限に活かす企業は、クラウド導入そのものだけでなく、AI、データ、セキュリティ、人材を統合した経営戦略としてクラウドを活用できる企業になるでしょう。

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