日本の建設市場、2035年には約8,345億米ドル規模に成長予測 – デジタル化と既存インフラ更新が鍵

株式会社マーケットリサーチセンターは、日本の建設市場に関する詳細な分析レポート「Japan Construction Market 2026-2035」を発表しました。このレポートでは、日本の建設市場が今後10年間でどのように変化し、成長していくかについて詳しく解説されています。
日本の建設市場、安定した成長を予測
日本の建設市場は、2025年時点でおよそ6,209.5億米ドル規模に達しており、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)3.0%で拡大し、2035年には約8,345億米ドルに達すると予測されています。市場全体としては成熟しているものの、住宅、商業施設、交通インフラ、エネルギー・公益設備、医療・高齢者施設など、さまざまな分野で安定した建設の需要が続く見通しです。
特に、古くなったインフラの更新、災害に強い建物づくり、再生可能エネルギーへの投資、都市の再開発、観光客の増加に対応するための整備、そして建設現場でのデジタル技術の活用が、今後の市場の成長を支える大切なテーマとなるでしょう。
市場を支える多様な建設需要
エネルギー・公益分野への投資
電力供給設備や再生可能エネルギー関連施設への投資が市場を大きく動かしています。発電所や送電設備、蓄電池などの建設需要が市場を押し上げています。地球温暖化対策やエネルギーの安定供給への関心が高まる中で、太陽光や風力といった再生可能エネルギーのインフラ整備が今後も重要になると考えられます。
商業建設の成長
海外からの観光客の増加やオフィスの需要拡大により、ホテル、商業施設、複合施設、オフィスビルなどへの投資が続いています。特に大都市や主要な観光地では、宿泊施設や商業空間の整備が進む傾向にあります。新しい建物を建てるだけでなく、既存の建物の価値を高めたり、用途を変えたり、改修したりすることも市場の機会を生み出しています。
公共・社会インフラの整備と更新
道路、鉄道、橋、港、空港といった交通インフラに加え、学校、研究施設、病院、高齢者施設などの建設需要も市場を支えています。日本では多くのインフラが高度経済成長期に整備されており、老朽化対策や長く使えるようにすることが大きな課題です。このため、新しく作るだけでなく、改修や補修、耐震補強、更新工事が長期的な市場を形成しています。
医療・高齢者施設の建設需要
高齢化が進む日本では、病院、診療所、介護施設、サービス付き高齢者住宅などへの需要が高まりやすい状況です。医療と介護を地域で一体的に提供する施設や、自宅での医療を支える拠点など、従来の大きな病院とは異なる形の施設整備も進む可能性があります。
住宅分野の変化
住宅分野は、日本の建設市場で大きな割合を占めています。都市部を中心とした住宅建設が市場を支え、所得水準や都市化も住宅の需要に影響を与えます。マンション、一戸建て、賃貸住宅など、さまざまな形の住宅が存在し、地域や家族構成によって需要の構造が異なります。
しかし、日本では新築だけでなく、リフォームやリノベーションの重要性が高まっています。人口の変化や既存の住宅が増えていることを考えると、今後は単に住宅の数を増やすよりも、古い住宅を耐震化したり、省エネにしたり、バリアフリーにしたりして、価値を高める需要が大きくなる可能性があります。特に高齢者のいる家庭では、段差の解消や手すりの設置、浴室の改修などの需要が続くでしょう。
自然災害への対応
日本では地震、台風、豪雨、洪水などの自然災害のリスクが高いため、政府や企業は建物やインフラの耐震性、耐水性、そして災害後も事業を続けられるようにする対策を進める必要があります。これにより、住宅、商業ビル、工場、公共施設などの耐震補強や改修工事が継続的に発生しています。
商業・産業施設のリノベーションと産業投資
商業施設や産業施設でも、リノベーションや改修の需要が市場を支えています。古いオフィスや工場では、耐震性、省エネルギー性能、通信設備、空調、照明などを現代の基準に合わせる必要があります。新しく建てるよりも既存の建物を活用する方がコストや環境への負担を抑えられる場合もあるため、今後は改修工事の割合が高まる可能性があります。
製造業は、日本の建設需要の重要な基盤です。自動車、半導体、電子部品、精密機械、化学、食品などの工場建設や設備の更新が市場を支えています。特に高度な製造設備を必要とする産業では、建物だけでなく、クリーンルーム、電力設備、空調、給排水、特殊な配管などを含む総合的な技術力が必要になります。

交通インフラの更新・高度化
鉄道、道路、空港、港湾などの交通インフラの更新や高度化も引き続き重要です。日本では鉄道の利用率が高く、都市部では駅やその周辺施設の再開発が進むことも多いです。駅ビル、オフィス、商業施設、ホテルなどを一体にした複合開発は、交通インフラと不動産開発を組み合わせた代表的な成長分野です。
空港や港湾についても、観光や国際物流の拡大に対応するための更新・拡張需要があります。海外からの観光客が増え続ければ、旅客ターミナル、ホテル、商業施設、交通アクセスなどの整備が必要になるでしょう。一方、港湾ではコンテナを扱う能力の強化や脱炭素への対応、物流の効率化が建設需要を生み出します。
建設DXによる生産性向上と未来の建設現場
市場の成長を支えるもう一つの大切な要素が、建設業でのデジタル技術の導入です。AI(人工知能)、ロボット、VR(仮想現実)、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)などを活用し、設計、工事、進捗管理、品質管理、安全管理などを効率化する動きが進んでいます。
BIMは、建物を3次元のデジタルモデルとして設計し、そのデータを工事や維持管理まで共有する仕組みです。従来の2次元の図面だけでは分かりにくかった設備同士のぶつかり合いや工事の順番などを事前に確認できるため、やり直しやミスを減らしやすいです。また、建物が完成した後も設備情報を維持管理に利用できるため、建物のライフサイクル全体での効率化につながります。
AIは、工事の計画、費用の予測、安全上のリスク分析、設計のサポートなど、幅広い用途で使われる可能性があります。例えば、過去の建設データを分析し、工事の遅れや費用超過の可能性を予測できれば、プロジェクト管理の精度を高められるでしょう。また、画像認識を使って現場の写真から工事の状況や安全装備の有無を確認することも可能になります。

ロボットも、日本の建設市場で重要性を増すと考えられます。建設現場では高齢化や人手不足が大きな課題となっており、資材の運搬、溶接、測量、検査、危険な作業などをロボットや自動機械に置き換えることで、生産性を高める必要があります。
特に日本では、建設業で働く技術者の不足が今後の成長を妨げる可能性があります。そのため、市場規模を大きくするだけでなく、「少ない人数でより多くの工事をこなす」ことが重要になります。自動化、プレハブ工法、モジュール建築、工事管理のデジタル化などは、この課題への主要な解決策となるでしょう。
VRやAR(拡張現実)も設計・施工段階での活用が期待されます。建物の持ち主や設計者が完成前の建物を仮想空間で確認したり、工事現場で設備の配置を重ね合わせたりすることで、設計の変更や意思の疎通のミスを減らせます。特に大規模で複雑なプロジェクトでは、このような可視化技術が工事期間や品質に与える効果は大きいとされています。

主要企業と今後の競争環境
日本の建設市場では、鹿島建設株式会社、株式会社大林組、清水建設株式会社といった総合建設会社が主要な役割を担っています。このほか、日本工営株式会社、株式会社竹中工務店、三井住友建設株式会社、株式会社錢高組、大和ハウス工業株式会社、東芝プラントシステム&サービス株式会社、森ビル株式会社などが市場に関わっています。
大手総合建設会社の強みは、単に工事をする能力だけでなく、大規模なプロジェクトを一括して管理できる点にあります。設計から資材の調達、工事、品質管理、安全管理、環境への配慮、引き渡し後の管理までをまとめて行えるため、大型のインフラや超高層ビル、工場、複合再開発などで優位性を持っています。
今後の競争では、工事の能力だけでなく、人手不足にどう対応するかが重要になります。建設業界では技術者の高齢化が進み、現場の人員確保が難しくなる可能性が高いです。そのため、ロボット、AI、BIM、ドローン、遠隔での工事管理などをいち早く導入し、生産性を高められる企業ほど有利になるでしょう。
脱炭素と省エネルギーへの対応
脱炭素への対応も競争力に直接関わってきます。建設業では、建物の利用時だけでなく、セメントや鉄鋼などの建材を作る過程や、建設機械、資材の運搬などでも多くの二酸化炭素が発生します。そのため、二酸化炭素排出量の少ない建材を使ったり、木造・木質化を進めたり、省エネ設計を取り入れたり、再生可能エネルギーを利用したりするなどの対応が重要になります。
建物の省エネルギー性能も市場の重要なテーマです。オフィス、商業施設、住宅では、断熱性能を高めたり、効率の良い空調やLED照明、スマートな制御システム、太陽光発電などを組み合わせたりして、エネルギー消費を減らす需要が高まります。新しく建てるだけでなく、既存の建物の省エネ改修も大きな市場機会となるでしょう。

2035年に向けた日本の建設市場の展望
総合的に見ると、日本の建設市場は2025年の約6,209.5億米ドルから2035年には約8,345億米ドルへと拡大する見通しで、CAGR3.0%の安定成長が予測されています。成熟した市場であるため急激な成長は期待されていないものの、市場規模が非常に大きく、インフラの更新、防災、都市再開発、エネルギー、医療・高齢者施設など、複数の需要源が存在します。
特に日本市場の特徴は、「新しいものをたくさん建てる市場」から、「既存の社会の基盤を更新し、強くし、より良い機能を持たせる市場」へと徐々に変化している点にあります。人口の変化を考えると、住宅や公共施設を無制限に増やすよりも、古くなった建物の改修、耐震化、省エネ化、用途変更などの重要性が高まる可能性が大きいでしょう。
一方で、製造業での先端設備投資、観光関連施設、再生可能エネルギー設備、都市再開発など、新しい建設においても成長の機会は存在します。特に大都市圏では、駅の周辺や古い市街地を複合施設へと再整備する再開発案件が、商業、オフィス、住宅、ホテルにわたる大規模な需要を生み出す可能性があります。
2035年に向けた最大の課題は、人手不足の中でこれだけの建設・改修需要にどう対応するかです。この点でAI、BIM、ロボット、VR、プレハブ・モジュール化などの導入は、単なる技術の流行ではなく、市場の成長を維持するための必要な条件となり得るでしょう。
したがって、日本の建設市場は今後、「規模の拡大」だけでなく、「生産性の向上」「防災・強靱化」「脱炭素」「デジタル化」という四つの方向で変化すると考えられます。大手建設会社、専門の施工会社、コンサルタント、設備会社、不動産開発業者がこれらの課題にどこまで一体となって対応できるかが、今後の競争力を左右するでしょう。
最終的に、日本の建設市場は単に建物やインフラを新しく作る市場ではなく、古くなった社会の基盤の再生、高齢化社会への対応、災害への備え、エネルギーの転換、都市機能の再編を担う巨大な社会基盤市場として成長していくと見られます。特に、既存の建物の改修と価値向上、デジタル技術を使った施工、耐震・防災、再生可能エネルギー関連の建設が、2035年に向けた主要な成長テーマになると考えられます。
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