古民家再生で地域を活性化 島根の古民家宿「輪島屋」改修工事内覧会を開催

日本の伝統的な家屋が並ぶ集落の風景

株式会社エブリプランの古民家再価値化事業「解く(TOKU)」は、島根県出雲市大社町鷺浦の古民家・一棟貸し宿「輪島屋」の内覧会を開催します。内覧会は2026年9月26日(土)から10月2日(金)までの1週間、予約制で行われます。

この内覧会では、第2期改修工事中の現場が公開され、飲食、宿泊、小売、美容など、店舗空間の検討を進める事業者が招待されます。輪島屋への出店や入居を募るものではなく、古材と手仕事の実物に触れ、参加者が自身の事業と古民家活用を組み合わせる可能性を探る場となります。

予約フォーム: https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc-qhKiMQrS76ZExMu6Tcrj36AOBz7Z64ja0yGnX-is9HNJhg/viewform

社会課題としての空き家を地域資源に転換する

全国で空き家が増加し、2023年の総務省「住宅・土地統計調査」では約900万戸、空き家率13.8%と過去最高を更新しました。特に島根県では空き家率が17.0%と高く、1950年以前に建てられた古民家の割合が7.7%で全国1位を占めています。

県内には約2万戸の古民家が残る一方で、過去5年間で約4,000戸が取り壊されており、良質な古材や手仕事の痕跡が廃棄物として失われている現状があります。「解く(TOKU)」は、空き家を単なる問題ではなく、地域に蓄積された資源として捉え直し、解体される建物から古材を救い出し、次の事業空間へ引き継ぐ「更新」の実践を行っています。

輪島屋の内覧会は、この「更新」のプロセスを工事中の現場で公開する試みです。

空撮の集落と湾の風景

「本物」とは何か ― この内覧会を開く理由

「解く(TOKU)」が考える「本物」とは、建築を今の暮らしや使い方に合わせて更新し続けることの積み重ねに宿るとされています。伝統的建築においては「保存」か「解体」かの議論がありますが、「解く(TOKU)」は、そのどちらでもない「更新」という第三の道を提案し、実践しています。

かつての日本では、地域の人々が協力して家を直し、住み継ぐ文化がありました。輪島屋の改修は、この「更新」を現代の事業空間づくりとして実践しています。

改修を主導するのは、出雲市出身でアメリカでデザインと木工を学んだ作り手、ワイルズ一氏です。彼は、故郷を一度離れたからこそ見えた地元の文化の価値を、建物の更新を通じて次の世代に伝えようとしています。

ワイルズ一氏のコメント「僕が育った出雲の集落では、家を直すとなれば大工仕事のできる地域のおじさんたちが集まって、自分たちの手で直すのが当たり前でした。(中略)建物も同じだと思います。育った環境から受けた影響を素直に形にして、更新を続けていく、その先に『本物』が生まれます。アメリカで暮らして、外から自分の故郷を見たことで、そのことに気づきました。完成した建物より、つくっているさなかのほうが、きっと面白いはずです。」

工事中の建物内で横顔を見せる男性

輪島屋とは ― 空き家×空き家のドッキングで生まれた空間

輪島屋の再生では、島根県江津市黒松の空き家2棟を手作業で解体し、瓦、建具、天井ユニットなど多くの古材を救出し、鷺浦の輪島屋へ「部分移築」しました。「解く(TOKU)」はこの手法を「空き家と空き家のドッキング」と呼んでいます。明治、昭和初期、現代の建材が一室に共存することで、新旧の重なりが空間の魅力となっています。

特に注目されるのは、日本海を望む個室風呂です。解体した住宅の風呂の天井(からかさ天井)をほぼ同じ意匠で部分移築し、屋根瓦は切り出して床タイルに、古材は建具へと姿を変えています。

中央に四角い開口部がある木製の構造物

リノベーション中の部屋で窓から海を眺める男性

海を望む木桶風呂の浴室

なぜ今、工事のさなかに公開するのか

「解く(TOKU)」は、古民家をはじめとする伝統建築の「保存か解体か」という二択に対し、「更新する」という第三の道を提案しています。蓄積された時間を活かしつつ、空き家やその建材を、事業者の希望に合わせて店舗、宿、サロンなどへ再生します。古民家率が全国の25年先を行くと言われる島根県から、この循環型建築の実践モデルを発信しています。

瓦屋根と木造の伝統的な日本家屋

山を背景にした日本の伝統的な家屋の集落

「工事中に公開する」理由は、古民家の活用を検討する事業者に「本物の情報」を届けるためです。改修の過程こそが、古材の活かし方や手仕事の質、空間づくりの考え方を伝える最もリアルな場であると考えられています。

当日見学できるものとして、以下の点が挙げられています。

  • 「昭和の内装剥がし」の現場:古い屋根の裏側や太い躯体が現れる「時間の地層」をめくる工程。

  • 再活用する古材の見学:選定された床材や欅の薄板などを実際に手に取って見学。

  • 質の違いの体感:新建材と時間を経た木材・土壁の質感の違いを同じ空間内で確認。

プロジェクトリーダーの守山基樹氏のコメント「私は京都大学助教として伝統的な街並み景観の研究をしてきました。(中略)工事の途中を見ていただくことで、古民家を事業空間として活用する具体的なイメージを持ち帰っていただけると思っています。」

眼鏡をかけた男性のポートレート

どんな使い方ができるのか ― 事業空間としての古民家・土蔵

古民家や土蔵の空間は、新品の内装では再現できない時間の厚みや、太い梁、手仕事の建具がつくる本物の質感により、それ自体が事業のストーリーを生み出します。

輪島屋で実際に見学できる活用例のヒントは以下の通りです。

  • 飲食店: 古材の梁や建具、腰壁がつくる内装は、他にはない体験を提供します。箪笥の表面板を腰壁に、瓦を床タイルにするなど、素材の転用が店の物語となります。

  • 宿泊: 輪島屋自体が一棟貸し宿としての改修事例です。水回り(個室風呂)まで古材で仕上げる方法を実物で確認できます。

  • 小売・サロン: 土蔵の重厚な空間は、商品や施術に「本物の質感」の背景を与えます。

建築スケッチ

古民家風の寝室

木製バスタブが特徴的な浴室

縁側に座る女性

空き家から部材を移築してテナント空間に仕立てる事例は、輪島屋が「解く(TOKU)」にとって最初の実践です。そのため、図面やイメージパースだけでは伝わらない具体的な現場を公開することで、参加者が自身の業態での活用を具体的に検討できる場となるでしょう。

畳の和室から海を望む風景

内覧会 開催概要

  • 期間:2026年9月26日(土)〜10月2日(金)

    • 朝の部(9-12時)/昼の部(13-16時)/夕の部(16時以降)
  • 方式:予約制。期間中の希望日時を予約すると、作り手が現場を案内します。

  • 会場:輪島屋(〒699-0761 島根県出雲市大社町鷺浦16)

  • 輪島屋 公式サイト:https://wajimaya.com/

  • 対象:飲食、宿泊、小売、美容など店舗空間を考える事業者、建築設計者

  • 主催:株式会社エブリプラン 古民家再価値化事業「解く(TOKU)」

  • 参加費:無料(要事前申込)

  • 申込方法:下記フォームから事前予約(希望日時を連絡すると、担当者から確定の連絡があります)

「解く(TOKU)」について

「解く(TOKU)」は、古民家割合が全国1位の島根県から「消費から、自らつくる暮らしへ」を掲げる古民家再価値化事業です。古民家・土蔵の発掘から、設計、移築、改修、運用までをワンストップで支援しています(土蔵移築ワンストップサービスは、2026年2月時点の調査で国内初とされています)。島根の課題先進地から循環型建築の実践を広げていくことを目指しています。

「鮮」のロゴ

株式会社エブリプランについて

株式会社エブリプランは、1996年設立の島根県松江市に本社を置く総合まちづくりコンサルタント企業です。「地域の未来への挑戦を支え、輝く地上の星々を共創します」を理念に掲げ、自治体の総合計画や観光振興計画の策定を多数手掛けています。行政計画(ソフト)から、本事業のような現場実装(ハード)までを一貫して支援できることが強みです。

EVERYPLANのロゴ

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