スパイスファクトリーと立命館大学が「デザイン・イネーブルメント」で共同研究を開始

スパイスファクトリー株式会社は、立命館大学 デザイン・アート学部と協力し、「Design Enablement(デザイン・イネーブルメント)」という考え方に関する共同研究と連携をスタートしました。この取り組みは、教育、研究、そして人材を育てることを目的とした協力協定を結んで進められます。

スパイスファクトリーの執行役員 Chief Design Officerである本村 章氏は、立命館大学 デザイン科学研究所の客員研究員に就任する予定です。

SPICE FACTORYロゴ

背景:専門デザイナーが少ない組織での「デザイン実装力」という課題

現在、多くの企業や組織でデジタル技術を使った変革(DX)を進める必要性が高まっています。しかし、専門のデザイナーを十分に配置できない組織が多いのが現状です。

このような状況では、「どうすればデザイナーを増やせるか」だけでなく、「専門のデザイナーがいなくても、組織にいる人々(ビジネス担当者やエンジニアなど)が、デザインの考え方を使って問題を解決する力をどうやって持続させるか」が重要になっています。

さらに、最近では生成AIの技術が進み、アイデアを形にするのがとても簡単になりました。しかし、それによって「何を作るべきか」「どんな価値を提供すべきか」といった、根本的なアイデアを考える力が、これまで以上に大切になっています。デザインの考え方は、一部の専門家だけのものではなく、数学や英語のように誰もが身につけるべき「ソフトスキル」になりつつあります。

デザイン・イネーブルメントとは

デザイン・イネーブルメントとは、一部の専門家だけでなく、組織にいる誰もがデザインのプロセスに参加できるようにするための環境作りや仕組み化を指す言葉です。

この考え方は、企業やチームが「こんな状態になりたい」という望ましい目標を最初に決め、その目標に向かって、現場のチームや担当者自身がデザインできるようになることを目指します。大切なのは、プロジェクトが終わった後も、その「デザインする力」が組織の中に残り、持続することです。

デザイン・イネーブルメントは、デザインの知識を組織内に広げ、持続させるために、次の3つの方法を提案しています。

  • ひきだす(Pulling):相手の考えや目標を対話の中から引き出し、一緒に新しいものを作り出すこと。

  • つたえる(Pushing):デザインの知識を、講義やガイドラインを通じて教えること。

  • みせる(Demonstrating):実際にデザインする様子を見せ、経験を通じて感覚的に伝えること。

生成AIの普及により、誰もがアイデアを形にできる時代になりつつありますが、同時に「何を作るべきか」を構想する力の重要性は増しています。デザイン・イネーブルメントは、デザインの知が組織全体に根付くための設計思想として位置づけられます。

共同研究・連携の内容

今回の共同研究と連携では、主に以下の3つの活動を進めていきます。

1.デザイン・イネーブルメントの実証研究

地方自治体や企業におけるDXの取り組みの中で、デザインの知識がどのように使われ、機能しているかを実際に調査し、記録します。スパイスファクトリーが関わるプロジェクトを通じて、デザイン・イネーブルメントの理論を深め、社会の課題解決に役立つ新しい知識を生み出すことを目指します。

2.組織変革・人材開発プログラムの研究開発

研究で得られた知識を、スパイスファクトリーが提供するDX支援や人材育成プログラムに反映していきます。将来的には、立命館大学のデザイン・アート分野での教育連携や、寄附講座、人材育成に関する取り組みも視野に入れています。

3.研究成果の社会発信

研究で得られた成果は、論文発表、学会での発表、実務者向けのイベント、記事などを通じて広く社会に発信し、DXを進める上での共通の考え方作りにも貢献することを目指します。スパイスファクトリーが開催している「Design Enablement Forum」も、引き続き情報発信の場として活用されます。

関係者コメント

スパイスファクトリー株式会社 執行役員 Chief Design Officer/HCD-Net認定 人間中心設計専門家 本村 章氏

本村 章氏

「デザイン・イネーブルメント研究の始まりには、専門デザイナーがいない、または人数が限られている組織の中で、実際にデザインに関する判断や問いを担っているのは誰か、という現場で何度も向き合ってきた問いがあります。

組織の中で実質的にデザインの役割を果たしている人々の活動を、理論として明確にし、再び実践に活かしていく。生成AIによってアイデアを形にするコストが下がっている今、改めて問われるのは、組織の中にデザインの実行力をどのように蓄積し、持続させるかという課題です。

この問いに、立命館大学 デザイン・アート学部、そしてデザイン・イネーブルメント理論の共同提唱者である八重樫先生と一緒に、より広い研究の視点から取り組めることを大変嬉しく思います。」

立命館大学 デザイン・アート学部 教授/デザイン科学研究所 DML(Design Management Lab)チーフ・プロデューサー 八重樫 文氏

八重樫 文氏

「デザイン・イネーブルメントは、組織の中にある創造的な力を引き出し、人々が自ら価値を考え、実践へと移していくための条件を整える考え方です。これは、立命館大学 デザイン・アート学部が育成を目指すCX(Creative Transformation)人材の考え方と深く重なります。

DXがデジタル技術を通じて社会を変革していくように、CXは創造的な発想と実践を通じて社会生活や組織のあり方に変化を促していくものです。スパイスファクトリー株式会社が社会の課題解決の現場で培ってきた実践は、この力を研究する上で重要なフィールドです。

今回の連携を通じて、現場でのデザイン実践のあり方を丁寧に検討し、デザイン・イネーブルメントの理論を深め、社会での実現を進めていきたいと考えています。」

今後について

スパイスファクトリーはこれからも、理論と実践を繰り返し行いながら、社会の課題解決に向けたDXやデザインの取り組みをさらに進化させ、教育、研究、人材育成にも貢献していきます。

また、今回の共同研究と連携で得られた知識を社会に還元し、公共や行政の分野を含むさまざまな現場での価値創造や組織の変革に貢献していく方針です。

参考資料

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