日本のBPM市場、2035年には63.2億米ドル規模へ成長予測 – AIとクラウドが変革を加速

株式会社マーケットリサーチセンターは、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)の日本市場に関する調査レポートを発表しました。このレポートによると、日本のBPM市場は2025年時点で11.0億米ドル規模に達しており、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)19.1%で拡大し、2035年には63.2億米ドルに達すると予測されています。
BPM市場の成長を支える主な要因
市場の成長をけん引するのは、企業全体の業務プロセスを「見える化」し、継続的に改善していく動きです。特に、AI(人工知能)を活用した業務の自動化や、インターネットを通じてサービスを利用するクラウド型の業務システムが広く使われるようになることが大きな要因とされています。
AIによる自動化と業務の「見える化」
BPMは、単に業務の流れを管理するだけでなく、財務や人事、物流、顧客対応といったさまざまな部署の業務プロセスをまとめて「見える化」し、自動化する仕組みとして活用されています。AIをBPMに組み合わせることで、人の手を介さずに業務を進めたり、リアルタイムで正確な判断をサポートしたりすることが可能になり、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる役割が期待されています。
特に注目されているのが、「プロセスマイニング」と「プロセスインテリジェンス」という技術です。これらは、既存のシステムに残された業務の記録から、どこで業務が滞っているか、どの承認作業に時間がかかっているか、重複している作業はないかなどをデータで分析し、「見える化」します。これにより、データに基づいた効率的な業務改善ができるようになります。財務、調達、サプライチェーン、顧客業務など、さまざまな分野での活用が広がっています。
企業事例に見るBPMの活用
具体的な事例として、2025年3月にはKao CorporationがSAP Signavioを利用し、ERP(統合基幹業務システム)のデータをもとにグローバルな業務を「見える化」し分析したとされています。特に買掛金・売掛金プロセスを含む財務業務の改善に活用し、キャッシュの流れや会社全体の業務効率を高めることを目指しました。
また、AIによる業務自動化は市場の最も重要な成長要因の一つです。企業はAIを使い、簡単なルールに基づく処理だけでなく、判断を伴う業務にも自動化の範囲を広げています。製造業やインフラ分野では、産業向けAIとクラウドシステムを組み合わせることで、部署間の連携や業務の「見える化」を高める動きが進んでいます。2026年4月にはNECが産業向けAIとクラウド型の企業システムを活用し、製造・インフラ分野でのDXを強化したとされています。
金融分野では、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)型のBPM導入が拡大しています。証券取引や金融関連業務をクラウド化し、手作業を減らしながら処理の正確性を高める需要が高まっています。2026年4月にはMatsui SecuritiesがJASDECPS SaaSを導入し、証券貸借関連プロセスの効率化と精度向上を進めたとされています。
低コード型BPMとマネージドサービスの普及
「低コード型BPM」も急速に広がっています。これは、プログラミングの知識があまりなくても、短い期間で業務の流れを変更したり、新しいシステムを開発したりできるプラットフォームです。これにAIを組み合わせることで、業務が自律的に進む「エージェント型」のワークフローへの発展も期待されています。2025年10月にはMendixがagentic AI機能を導入し、自律型ワークフローやアプリケーション開発の高速化を進めたとされています。
また、「マネージドサービス」や「アウトソーシング」も市場成長を支えています。企業はBPMソフトウェアを導入するだけでなく、システムの運用や品質管理、業務支援までを外部の専門業者に任せることで、業務の標準化と効率化を同時に進めています。2025年1月にはSHIFTがグローバル業務支援サービスを拡大し、ITプロセス支援やアウトソーシング需要に対応したとされています。
製造業では、BPMとデジタル技術の統合が進んでいます。工場でのデータと企業システムをつなげ、生産工程、品質管理、在庫、調達などをまとめて管理することで、工場単位ではなく会社全体で業務を最適化する動きが強まっています。2026年3月にはB-EN-Gが製造業向けサービスを拡充し、データを活用した生産ワークフローの最適化やシステム連携を強化したとされています。
市場を構成する要素と導入の形
BPM市場は主に「プラットフォーム」と「サービス」に分けられます。AIワークフロー自動化、プロセスマイニング、低コード開発などが可能なプラットフォームが中心的な役割を担っています。一方、BPM導入には既存システムとの連携や業務設計、運用改善などが必要なため、コンサルティングやシステム統合といったサービスも重要です。
導入の形では、「オンプレミス」(自社でシステムを保有・運用する形)と「クラウド」(インターネット経由でサービスを利用する形)があり、クラウド型が大きく成長しています。クラウドBPMは、初期投資を抑えられ、利用規模の変更がしやすく、リアルタイムでの処理や複数の部署・拠点間での連携がしやすいというメリットがあります。クラウドは2026年から2035年にかけてCAGR18.6%で成長すると予測されています。
企業規模別では、現在は複雑な組織構造を持つ大企業が主な利用者ですが、低コードやクラウドBPMの普及により、中小企業でも導入が進んでいます。
業務機能別では、人事や調達・サプライチェーン、営業・マーケティング、財務・会計、顧客サービスなど、幅広い分野でBPMが活用されています。特に、標準化された繰り返し作業が多い財務や人事の分野では、自動化による効果が大きいとされています。
エンドユーザーと地域別の動向
BPMは、IT・通信、小売・消費財、政府・防衛、医療・ライフサイエンス、金融(BFSI)、製造業など、非常に多くの分野で採用されています。金融分野では、取引の正確性や監査の必要性が高いため、BPMとの相性が良く、AIと組み合わせることで不正検知や高度な意思決定も可能になります。製造業では、スマートファクトリー化とともにBPMの需要が高まっており、生産計画や品質管理、物流などを統合し、生産性向上に役立てられています。
地域別では、関西がCAGR20.2%で成長すると予測されており、製造業や産業DXを背景にBPMの需要が伸びているとされています。また、関東には金融機関やテクノロジー企業、本社機能が集中しているため、BPM導入の最先端地域と位置付けられています。中部の2025年におけるシェアは20.3%と示されています。
競争環境と主要企業
BPM市場では、AI、機械学習、予測分析といった技術を統合することが、他社との差別化の重要なポイントとなっています。また、導入期間を短縮し、企業ごとの業務に合わせて柔軟にカスタマイズできる「モジュール型」や「低コード型」の設計も重視されています。
主要企業としては、Microsoft、IBM、Appian、Oracleなどが挙げられ、これらの企業はクラウドやAI、コンサルティングを組み合わせたソリューションを提供し、企業の業務変革を支援しています。
まとめ
日本のBPM市場は、今後10年で大きく成長し、単なる業務の効率化にとどまらず、業務を「見える化」し、データに基づいて継続的に改善・再設計していく方向へと変化すると考えられます。AI、プロセスマイニング、低コード開発、クラウドといった技術が一体となることで、BPMは従来の業務管理の枠を超え、企業全体の変革を支える基盤へと進化していくでしょう。2035年に向けて、日本のBPM市場は、個別業務の自動化から、企業全体のプロセスをリアルタイムで把握し、AIが継続的に改善・再構成する「インテリジェント業務オーケストレーション市場」へと移行していくと予測されています。
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