建築業界のAI活用、組織全体への浸透が鍵に 〜第5回 建築AI経営研究会が開催〜

建築・住宅業界では、生成AIの活用が「文章を作るAI」から「作業を担うAI」へと変化しています。しかし、AIツールを導入した多くの企業で「一部の社員しか使わない」という課題があり、組織全体の生産性向上にはつながっていない現状が見られます。

株式会社LIFEFUNDが主催する経営者向けコミュニティ「建築AI経営研究会」は、この課題に対応するため、2026年8月3日に第5回研究会を開催しました。会場とオンラインを合わせて約130名の建築・住宅事業者が全国から参加し、「AI×組織浸透」をテーマに議論が交わされました。

第5回 建築AI経営研究会の概要

「建築AI経営研究会」は、2025年11月に発足した建築・住宅業界の経営者向けコミュニティです。2か月に1回のペースで開催され、現役の建築会社が実際にAIをどのように活用しているかという具体的な事例が共有される点が特徴です。

今回の研究会では、LIFEFUND代表取締役の白都卓磨氏と、塗装業から総合建設業に展開する株式会社アスムコーポレーション代表取締役の山口博城氏が自社の事例を発表しました。プログラムは、主催講演、ゲスト講演、パネルディスカッション、コミュニケーションタイム、事例ワークショップの5部構成で実施されました。

LIFEFUND 白都卓磨氏による講演:AIを組織に根付かせる方法

LIFEFUND代表取締役の白都卓磨氏は、「AIをどう使うか」ではなく「AIを組織にどう根付かせるか」に焦点を当てて講演しました。

講演では、多くの企業がAIを一部の社員しか使えていない現状が共有されました。白都氏は、AI経営を「①個人利用 → ②特定部署 → ③全社標準化 → ④独自データ(コンテキスト)接続 → ⑤AIエージェント活用」の5段階で整理し、多くの企業が土台となる①〜②の段階を飛ばして③に進むため、AIが浸透しないと指摘しました。

AIの組織浸透を妨げる3つの壁として、以下の点が挙げられました。

  • 土台がない: クラウド化や権限、ガイドラインの未整備

  • 利益相反: AIで業務を効率化しても社員が報われないと感じる構造

  • ゴール不在: 経営者がAI活用の到達点を描けていない

また、白都氏はAIを「IQ130の“新卒社員”」と例え、自社の固有情報(コンテキスト)をAIに教える「新人教育」の重要性を強調しました。AIの成果は「モデルの賢さ × コンテキスト」という掛け算で決まるため、会議の録音や文字起こしなど、コンテキストを蓄積する文化を始めるべきだと述べました。

LIFEFUNDでは、組織浸透のために10ステップの段階を約6か月で実行し、有効なAI活用事例を半年間で896件集めたと報告しました。さらに、企業が標準AIを用意しないと、社員が個人アカウントで業務情報を入力し、情報漏えいのリスクが高まる「シャドーAI」の問題にも言及し、法人アカウントの配布と個人アカウントの使用禁止を明示する必要があると説明しました。

アスムコーポレーション 山口博城氏による講演:AIを活用せざるを得ない仕組みづくり

続いて、福岡県で塗装業から総合建設業へと事業を展開する株式会社アスムコーポレーションの代表取締役、山口博城氏が、社内へのAI浸透事例について講演しました。

山口氏は、自身が以前パソコンで資料作成が苦手だった経験から、AIを使って事業計画資料を短時間で作成できるようになった成功体験を紹介しました。この成功体験が、社内のAI活用への意識を変えるきっかけになったと振り返っています。その後、社員一人ひとりの「困りごと」をヒアリングし、業務フローの見直しから着手したと述べました。

同社のAI浸透の核となっているのは、「AIを使わざるを得ない仕組み」の構築です。指示は使い慣れた「LINE」から行い、成果物やタスクの進捗は一つのダッシュボードに集約する工夫が紹介されました。キーワードは「楽かどうか」で、「覚える量が少ない・迷わず使える・考えずに済む」を徹底し、誰が指示しても会社として同じ品質の成果物(見積書など)が返る設計にしたと説明しました。これにより、AIリテラシーや年齢に関わらず、すべての社員がAIの恩恵を受けられるようにしたとのことです。

具体的な活用事例として、図面からの数量拾い、見積書の自動生成、過去事例との比較、カタログからの最適材料提案、外壁塗装のカラーシミュレーション、顧客管理、ガントチャートによるタスク可視化、資金繰り予測などが共有されました。また、ツールに依存しすぎないよう、Claude、ChatGPT、Geminiといった複数のAIモデルを用途やコストに応じて切り替えられる設計にしている点も述べられました。

パネルディスカッション:実践的なAI活用への議論

第1講座と第2講座の登壇者に加え、アスムコーポレーションのAI推進担当である田中鉄朗氏を交えたパネルディスカッションが行われ、参加者からの質問に答えました。

主なテーマは以下の通りです。

  • 社長の視座と現場のギャップをどう埋めるか: 経営目線と現場の関心のズレに対し、情報の一部公開や、経営者が「AI・新規事業・お金」に時間を集中させる工夫が共有されました。

  • 内製アプリか、コンテキスト運用か: 保守・改善の推進体制を置ける企業は内製アプリも有効ですが、そうでない場合はコンテキストを整えてAIエージェントが参照できる形にする方が生産性を上げやすいという使い分けの考え方が示されました。

  • 導入で避けたい失敗: 「もっと早く全社員へ法人アカウントを配ればよかった(シャドウAIを防げた)」「人事評価と早期に連動させたのは良かった」「段階を踏みすぎず、早めにAIエージェントに触れさせた方がよい」など、両社の経験に基づく率直な意見が語られました。

  • 費用・権限とセキュリティ: 従量課金のAPI連携は申請を一本化して承認制にする、AIガイドラインは国が公開する資料を基に自社版を整備するといった運用が紹介されました。

参加者の高い満足度と次回の展望

第5回研究会終了後のアンケートでは、総合満足度が5点満点中4.42(「4:満足」以上が92.4%)と、前回を上回る結果となりました。

参加者からは、「社内普及の手順を詳しく知ることができた」「AI社内浸透のロードマップを具体的に考えることができた」「シャドーAIのリスクを認識し、本格的な導入の必要性を強く感じた」といった声が寄せられました。

100名を超える参加者が続く「建築AI経営研究会」は、建築業界におけるAI経営が一過性のブームではなく、継続して取り組むべき重要な経営課題として定着しつつあることを示しています。

次回 第6回研究会のご案内:「AI×社長」

次回、第6回 建築AI経営研究会は、2026年9月28日(月)に東京駅前会場およびオンラインで同時開催されます。テーマは「社長AI×部署AI」で、株式会社ハウスクラフト代表取締役の遠藤真二氏がゲスト講師として登壇します。

  • 日時: 2026年9月28日(月)13:00〜17:30

  • 会場: オフライン会場@東京駅前、オンライン配信(ワーク・パネル中心のため会場参加推奨)

  • 内容: ①経営者向け建築AI経営ノウハウ共有、②ハウスクラフト代表取締役・遠藤真二氏による特別講演、③生成AI実践ワークショップ、④経営者交流会

  • 定員: 会場は先着限定(要申込)

  • 対象: 経営者のみ

  • 参加費: 初回参加無料

  • 懇親会: 18:00〜(実費6,000円程度)

  • 申込先: https://kenchiku-ai.com/260908_study/

人手不足や市場縮小が進む中で、AIを活用して経営の打ち手を見つけたい経営者の参加が期待されます。メディア関係者の取材も歓迎されています。

会社紹介

  • 会社名: 株式会社LIFEFUND

  • 代表者: 代表取締役 白都卓磨

  • 設立: 2000年(2023年に現社名へ変更)

  • 所在地: 静岡県浜松市中央区鴨江三丁目70番23号

  • 売上高: 27.1億円(2025年実績)

  • 社員数: 83名(2026年7月)

  • 事業内容: 注文住宅(ARRCH、PG HOUSE)、不動産、相続コンサルティング、AI教育事業ほか

  • URL: https://lifefund-recruit.com/

LIFEFUNDは「建築業界のAI浸透を推進します」というメッセージを掲げており、建築AI経営研究会に関するメディア関係者からの取材も受け付けています。

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