水道管の図面をAIが読み取り、拾い表と概算見積書を自動作成するアプリが登場
株式会社renueは、水道管の図面をAIが読み取り、配管の数量を自動で拾い出し、拾い表と概算見積書を作成するアプリを開発しました。このアプリは、建設業界が抱える人手不足や積算業務の負担を減らすことを目指しています。
アプリの主な機能
このアプリは、給排水設備の図面(PDF形式)をアップロードするだけで、配管の長さやバルブ、量水器などの部品の数を自動で計算します。給水、給湯、排水といった配管の種類や、管の太さ(口径)ごとに分けて集計し、Excel形式の拾い表と概算見積書を自動で生成します。

特に注目すべきは、図面に凡例(記号の説明)がない場合でも、製図の一般的な知識を使って配管の種類を判別できる点です。また、AIが読み取った結果は、図面上の線と照らし合わせたり、配管のつながりをチェックしたりして自動で確認されます。もし信頼できない部分があれば「要確認」として示されるため、担当者は画面上でクリックするだけで簡単に確認・修正し、拾い表や見積書に反映させることができます。
開発の背景と目的
建設業界では、働く人が減り続けています。1997年には685万人いた就業者数が、2024年には477万人まで減少し、約30%も減少しました。さらに、55歳以上のベテランが全体の36.7%を占める一方で、29歳以下の若手は11.7%にとどまっており、熟練者の技術や知識を受け継ぐことが難しくなっています。
2024年4月からは、建設業にも時間外労働の規制が適用され、限られた人数と時間で同じ量の仕事をこなす必要が出てきました。このような状況で、積算業務は特に専門的な知識や経験が必要とされるため、特定のベテランに負担が集中しがちです。
土木や建築の分野では、AIを使った数量拾いが広がり始めていますが、給排水設備の積算には特有の難しさがありました。それは、配管の種類、管の素材や太さ、バルブなどの部品の種類と数を同時に読み取る必要があるためです。また、設計事務所によって図面の凡例や記号の書き方が異なるため、自動化が難しいとされてきました。さらに、CADデータではなく紙の図面をPDFにしたものしか手に入らない案件も多く、手作業に頼らざるを得ないのが現状でした。
renueがこのアプリを開発したのは、こうした課題に対し、AIとコンピューターが正確に計算する仕組み(決定論的アルゴリズム)を組み合わせることで、実用的な解決策を示すためです。AIの読み取り結果を自動で確認し、「どこが怪しいか」を明確にすることで、積算の正確さを保ちながら業務の自動化を進めることを目指しています。
仕組みの特長
凡例のない図面でも系統を判別
アップロードされたPDF図面は、まずページごとに自動で分類され、配管平面図など、数量を拾い出す対象が絞り込まれます。部分的な詳細図などは参考にしますが、合計には含めず、同じ配管を二重に数えてしまうことを防ぎます。

給水、給湯、排水といった配管の種類は、図面に凡例がなくても判別できるように設計されています。凡例があればその情報を使いますが、なければ「給水は実線、給湯は一点鎖線、排水は破線」といった一般的な製図のルールに基づいて判別します。バルブや量水器などの記号も、業界で一般的に使われる名称に統一して数えられます。管の太さや種類は、配管の近くに書かれた文字から読み取り、まとめて集計されます。事前の設定やテンプレートの登録は不要で、PDFをアップロードするだけで作業が始まります。
通り芯から縮尺を確定し、正確に集計
配管の長さを正確に測るためには、図面の縮尺を正しく知ることが重要です。このアプリは、通り芯(建物の柱の位置を示す基準線)を画像から自動で見つけ出し、AIが読み取った寸法と比べて縮尺を確定します。図面の枠に書かれた縮尺とも照らし合わせ、大きな違いがあれば「要確認」として示します。縮尺が確定できない場合は、無理に数字を出すのではなく「算出不能」と明確に伝えます。

長さの計算と集計はAIに任せず、コンピューターが正確に処理するアルゴリズムで行われます。配管の曲がり角(エルボ)や分岐点(チーズ)も自動で数えられます。拾い表には、合計値だけでなく、担当者が確認したかどうかや、読み取りの際に仮定したこと、判別できなかったことまですべて記載されます。これにより、数字の根拠をいつでも確認でき、社内でのチェックやお客様への説明にも役立ちます。
AIの読み取りを自動で確認し、人が確定
このアプリは、AIの読み取り結果をそのまま信用するのではなく、必ず確認する仕組みになっています。AIが示した配管の経路が、図面上の実際の線と重なっているかを照らし合わせ、ずれていれば修正し、線が見つからなければ「実在しないルートの疑い」として報告します。また、配管のつながりもチェックし、どこにもつながっていない記号があれば「拾い漏れの可能性」として警告します。

これらの確認結果は「要確認」として画面と拾い表に一覧で表示されます。担当者がリストの項目をクリックすると、図面上の該当箇所が強調表示され、その場で修正したり、確認ボタンを押したりするだけで確定できます。読み取れなかった配管は、図面をクリックして手動で追加することも可能です。人が修正した項目は自動で「確認済み」となり、修正後の再集計は数秒で完了します。概算見積書も、拾い表からボタン一つで作成でき、どこまでが図面に基づいた事実で、どこからが仮の数字なのかが一目でわかるようになっています。
想定される効果
-
拾い出し作業にかかる時間の削減
配管の種類判別、縮尺の確定、長さの集計、記号の数え上げが自動化されるため、担当者は「要確認」の部分の確認や修正に集中できます。これにより、作業時間の削減が見込まれます。概算見積書も自動で作成されるため、見積書を作成するまでの時間を短縮し、お客様への提示を早くできます。CADデータがないPDF図面だけの案件でも利用できるため、これまで手作業だった作業を効率化できます。拾い表はExcel形式で出力されるため、社内での共有もスムーズです。 -
積算品質の安定化
配管の種類判別や数え上げが自動化されることで、担当者ごとの拾い漏れや分類ミスが減り、積算の品質が安定します。AIが読み取りに自信がない箇所を「要確認」として明確に示すため、従来は担当者の注意に頼っていたチェック作業が仕組みとして組み込まれます。拾い表には、長さの根拠や読み取り時の仮定が残るため、数字の出どころをいつでも確認でき、積算の根拠を説明する際にも役立ちます。また、縮尺を複数の情報から確認することで、PDF変換による全体の誤差を抑えられます。 -
若手への業務開放
このアプリを使うことで、「どの線が給水か」といった専門知識がなくても、AIの判別結果と「要確認」リストを元に積算業務に参加できます。最終的な確認をベテランが行うことで、経験の浅い担当者でも拾い作業を進められる体制づくりをサポートします。
今後の展開
このアプリは現在、営業用のデモとして動いている段階です。今後は、実際の設備工事会社やサブコンと協力して検証を行い、実際の案件の図面での正確さや使いやすさを高めていく計画です。
技術面では、設計事務所ごとの記号の書き方の違いや、複数の階にまたがる配管の追跡、改修工事で使われる古いスキャン図面への対応を広げていきます。また、同じ図面を複数回読み取って結果を比較する方式で、読み取りの安定性をさらに高める検証も進めています。
この配管拾いの仕組みは、ガス配管の数量拾いにも同じ技術で対応しており、将来的には電気、空調、消防といった他の設備系統への応用も検討されています。最終的には、積算・見積システムとの連携により、拾い表の作成から見積書の提出までの時間をさらに短縮することを目指しています。
renueは、図面AI「Drawing Agent」で培った技術を設備積算の分野に応用し、建設業の人手不足を解決するソリューションを提供し続けていきます。
会社概要
会社名:株式会社renue
所在地:〒105-7105 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター 5階
代表者:山本悠介
事業内容:AIコンサルティング業
URL:


