従業員退職による倒産が5年連続で増加、過去最多ペースで推移

帝国データバンクの調査により、従業員の退職が原因で倒産に至る「従業員退職型」の企業が、2026年1月から7月にかけて83件に上ったことが明らかになりました。これは前年同期の74件と比較して約12.2%の増加であり、コロナ禍の2022年以降、5年連続で増加傾向にあります。このペースで推移すると、2026年の年間件数は過去最多だった前年(124件)を大きく上回り、新たな記録を更新する見込みです。
増加する「従業員退職型」倒産の現状
今回の調査は、2013年1月から2026年7月31日までに判明した、負債1,000万円以上で法的整理による倒産を対象としています。従業員の退職が直接的または間接的な要因となった倒産が、近年特に目立っています。

2026年1月から7月の「従業員退職型」倒産を業種別に見ると、最も多いのは「サービス業」で22件(全体の26.5%)でした。老人福祉施設や美容室での発生が多く見られます。次に多いのが「建設業」で20件となり、1月から7月としては初めて20件台に達しました。現場の職人や営業担当者の退職が相次ぎ、事業の継続が難しくなるケースが目立っています。また、「運輸・通信業」でも12件発生し、貨物自動車運送業を中心に前年同期の8件から増加しました。
賃上げ困難が人材流出に拍車
近年、「従業員退職型」倒産が増加する背景には、コスト増を商品やサービス価格に転嫁できず、従業員の賃上げが難しいという問題があります。これにより、事業の中心となる人材の流出を食い止められない企業が多く存在します。
例えば、貨物運送業を営んでいた東海サービス(2026年5月破産)は、競争の激化や燃料費の高騰により収益が悪化する中で、ドライバーの賃上げができずに退職が相次ぎました。また、内装工事を手掛けていた五十嵐建設(2025年12月破産)では、中核メンバーの独立や退職が相次ぎ、人手不足が深刻化。最終的に事業の継続を断念せざるを得なくなりました。
労働市場の流動性が高まる中で、待遇改善が難しい企業ほど人材流出のリスクが高まっています。特に、少数の熟練技術者や中心メンバーに事業が大きく依存している企業では、従業員の怪我や長期離脱が原因で事業運営能力が低下し、倒産に至るケースも確認されています。
人手不足が経営リスクに直結
帝国データバンクが2026年4月に発表した「人手不足に対する企業の動向調査」では、正社員の人手不足を実感している企業が2社に1社の割合に上ることが示されています。この深刻な人手不足の状況において、新しい人材を確保できない「採用難」だけでなく、既存の従業員が退職してしまう「従業員退職」も、企業の大きな経営リスクとなっています。
業績悪化などを理由に賃上げができない中小零細企業を中心に、「従業員退職型」の倒産は今後も高い水準で推移する可能性が高いと見られます。
本調査の詳細については、以下のリンクから参照できます。


