日本のBPM市場、2035年には63.2億米ドルへ成長予測 – AIとクラウドが牽引する業務改革の未来

ビジネスプロセスマネジメント市場調査

株式会社マーケットリサーチセンターは、2026年8月20日に「ビジネスプロセスマネジメント(BPM)の日本市場(2026年-2035年)」に関する調査資料を発表しました。この資料によると、日本のBPM市場は2025年の11.0億米ドルから、2026年から2035年にかけて年平均成長率(CAGR)19.1%で拡大し、2035年には63.2億米ドルに達すると予測されています。

市場を動かす主な要因

市場の成長を支える中心的な要因として、企業全体の業務プロセスを見える化し、継続的に改善する動きが挙げられます。また、AI(人工知能)を活用したワークフローの自動化や、クラウドネイティブ型の業務システムが広く使われるようになることも、市場の拡大を後押ししています。

日本の企業では、BPMは単なる業務フロー管理のツールとしてだけでなく、財務、人事、物流、調達、顧客対応といった複数の部署を横断してプロセスを見える化し、自動化するための基盤として活用されています。AIベースのBPMは、人の手を介する作業を減らしつつ、リアルタイムで業務判断をサポートするため、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる重要な役割を担っています。

注目される具体的な技術と導入事例

特に注目されているのは、プロセスマイニングプロセスインテリジェンスです。これらの技術は、既存の業務システムから実際の処理データを取得し、どこで業務が滞っているか、どの承認作業が非効率か、重複している作業はないかなどをデータに基づいて見える化することで、業務改善をより効果的に進めることを可能にします。財務、調達、サプライチェーン、顧客業務といった分野で、このような活用が広がっています。

事例として、2025年3月にはKao CorporationがSAP Signavioを利用し、ERPデータをもとにグローバルな業務を見える化・分析したとされています。買掛金・売掛金プロセスを含む財務業務の改善に活用し、キャッシュサイクルや全社的な業務効率の向上を目指したと紹介されています。

AIによる業務自動化も市場の最も重要な成長要因の一つです。企業はAIを使って、決まったルールに基づく単純な処理だけでなく、判断を伴う業務にも自動化の範囲を広げています。2026年4月にはNECがIndustrial AIとクラウドネイティブ型企業システムを活用し、製造・インフラ分野でのDXを強化したとされています。これにより、BPMが事務作業だけでなく、製造現場や重要なインフラの運用プロセスにも広がっていることが示されています。

金融分野では、SaaS(サービスとしてのソフトウェア)型BPMの導入が進んでいます。2026年4月にはMatsui SecuritiesがJASDECPS SaaSを導入し、証券貸借関連プロセスの効率化と精度向上を進めたとされています。

低コード型BPMも急速に普及しています。これにより、従来は業務フローを変更するたびに大規模なシステム開発が必要だったところを、業務部門側でも比較的短期間でワークフローを変更・構築できるようになりました。これにAIを組み合わせることで、自律的に業務処理を進める「エージェント型」ワークフローへの発展も進んでいます。2025年10月にはMendixがagentic AI機能を導入し、自律型ワークフローやアプリケーション開発の高速化を進めたとされています。

また、マネージドサービスやアウトソーシングも市場成長を支えています。企業はBPMソフトウェアの導入だけでなく、IT運用や業務支援まで外部に委託することで、業務の標準化と効率化を同時に進めています。2025年1月にはSHIFTがグローバル業務支援サービスを拡大し、ITプロセス支援やアウトソーシング需要に対応したとされています。

製造業では、BPMとデジタルエンジニアリングの統合が進んでいます。2026年3月にはB-EN-Gが製造業向けサービスを拡充し、データを活用した生産ワークフロー最適化やシステム連携を強化したとされています。これは、BPMが事務プロセス自動化から、製造プロセスそのものの見える化・統合へ広がっていることを示しています。

導入形態や企業規模による違い

導入形態では、クラウド型が高成長分野となっています。クラウドBPMは、インフラへの投資を抑えながら導入でき、利用規模の拡張やリアルタイム処理、複数部門・拠点間の連携が行いやすいという特徴があります。クラウドは2026年から2035年にかけてCAGR18.6%で成長すると予測されています。一方、金融や規制産業などでは、機密データの管理や重要業務の自社管理の観点からオンプレミス型も引き続き重要です。今後は、重要な処理はオンプレミス、分析や連携はクラウドといったハイブリッド型が拡大すると考えられます。

企業規模別では、大企業が現在の主な需要層です。大企業は組織構造が複雑で、複数部門や海外拠点をまたぐ業務の標準化が必要なため、BPM導入による効果が大きいとされています。一方、中小企業でも低コード、RPA、クラウドBPMの普及により導入のハードルが下がっており、業務効率化や生産性向上の手段として採用が進んでいます。

地域別では、関西がCAGR20.2%で成長すると予測されています。また、2025年の中部の市場シェアは20.3%と示されています。関東は金融機関やテクノロジー企業、本社機能が集中しているため、BPM導入の最先端地域と位置付けられています。

競争環境と今後の展望

競争環境においては、AI、機械学習、予測分析、インテリジェント・オーケストレーションといった技術の統合が、企業間の主な差別化要因となっています。さらに、モジュール型・低コード型の設計によって導入期間を短縮し、企業ごとの業務に合わせて柔軟にカスタマイズできることが重視されています。

主要企業としては、Microsoft、IBM、Appian、Oracleなどが紹介されており、それぞれの企業がクラウド、AI、コンサルティング、低コード開発などを組み合わせたソリューションを提供しています。

日本のBPM市場は、2035年に向けて、単に個別の業務を自動化するだけでなく、企業全体のプロセスをリアルタイムで把握し、AIが継続的に改善・再構成する「インテリジェント業務オーケストレーション市場」へと移行していくと考えられます。

関連情報

調査資料に関するお問い合わせは、株式会社マーケットリサーチセンターのウェブサイトから可能です。

×