BIMサービス市場、2032年には31.20億米ドルへ拡大予測 – 制度化と実務定着が成長を牽引
LP Informationが発表した最新の市場レポート「世界ビルディング インフォメーション モデリング サービス市場の成長予測2026~2032」により、BIMサービス市場の今後の見通しが明らかになりました。
BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)サービスとは、デジタル技術とソフトウェアを使って、建物の3Dモデルを作り、設計から工事、そして運用やメンテナンスまで、プロジェクト全体で情報を共有し、活用する仕組みを指します。このサービスは、建設プロジェクトのさまざまな段階で多くの利点をもたらします。

市場規模と今後の予測
LP Informationの調査によると、BIMサービスの世界市場は、2025年には21.00億米ドルでしたが、2032年には31.20億米ドルに拡大すると予測されています。2026年から2032年までの年平均成長率(CAGR)は6.0%に達する見込みです。
この市場の成長は、BIMの導入が当たり前になるだけでなく、どの工程でどれだけ深くBIMを活用するかが重要になる段階に入ったことを示しています。高成長市場というよりも、ルール作りや実際の仕事への定着が進むことで、着実に市場が広がっていくと考えられます。

成長を牽引する二つの軸
市場の需要を支える主な理由は二つあります。
一つ目は、発注者や公共機関がBIMの利用を契約の条件とすることが増えている点です。デジタルデータでの成果物が求められることで、BIMの管理、確認、データチェックといった繰り返し発生するサービスへの需要が高まっています。
二つ目は、建設会社がVDC(バーチャルデザイン&コンストラクション)の活用を高度化している点です。例えば、4D工程管理(時間軸を加えた管理)、5D数量・コスト管理(コスト軸を加えた管理)、工事のしやすさの確認、設備の調整などが、特に複雑なプロジェクトで広がりを見せています。
プロジェクト後半から運用段階に大きな成長余地
今後、特に成長の可能性を秘めているのは、プロジェクトの後半から建物の運用段階にかけてのサービスです。例えば、古い建物の改修に向けた「scan-to-BIM」(既存建物をスキャンしてBIMモデルを作成する)、建物の現状を正確に把握するサービス、完成時のデジタルデータ「デジタルアズビルト」、建物運用管理のための「AIM」などが挙げられます。これらがCMMS(設備管理システム)やCAFM(施設管理システム)、IWMS(統合ワークプレイス管理システム)と連携することで、単発の設計支援よりも継続的なサービス需要につながりやすいでしょう。
さらに、エネルギー消費のモデリングやLCA(ライフサイクルアセスメント)、環境認証のための書類作成など、サステナビリティ(持続可能性)に関する業務も、進んだプロジェクトでは標準化が進みつつあります。
主要企業と市場の競争状況
BIMサービス市場では、AECOM、WSP、Gensler、HDR、VIATechnik、TÜV SÜD、Hilti、Arup、GSource Technologies、Hitech CADD Servicesなどの企業が主要プレーヤーとして活動しています。しかし、2025年時点での上位10社の売上シェアは約33.0%にとどまっており、市場全体としては特定の企業に集中しているわけではなく、多くの企業が競い合っている状況です。

この分散した市場構造は、BIMサービスが設計支援だけでなく、調整、検証、工事との連携、運用への引き継ぎといった、さまざまな機能の集まりであることを示しています。大手総合エンジニアリング企業が大規模プロジェクトを主導する一方で、専門的なサービスを提供する会社や、外部に業務を委託する会社にも活躍の場が残されています。今後は、用途、地域、プロジェクトの段階によって、競争で優位に立つ企業が異なってくるでしょう。
主要企業の動向
現在、BIMサービスは単なるモデリング支援を超え、建物のデジタル資産化や都市・インフラ情報の統合へと範囲を広げています。AECOMは、香港土地測量署との連携で進めた3Dデジタルエコシステムと3Dデジタルマップがアジアのスマートシティ賞を受賞したと発表しており、BIMが個別の建物の設計支援だけでなく、都市全体の情報基盤につながり始めていることを示しています。
また、デジタルツイン(現実の世界をデジタル空間で再現する技術)を通じて、建物の運用段階での活用も活発になっています。WSPは、ニュージーランドのNevis Bluffでのデジタルツイン活用事例を公表し、点検情報、画像、リスク評価、推奨される対策をまとめて管理する仕組みを運用しています。BIMサービスの価値が設計や工事で終わらず、維持管理や意思決定の支援にまで広がっている点は、今後のビジネスチャンスとして重要です。
さらに、脱炭素化への対応や、検証業務の付加価値を高める動きも進んでいます。AECOMは、One Click LCAとの提携を通じて、建設・インフラプロジェクトの脱炭素対応を強化すると発表しました。TÜV SÜDも、持続可能な不動産向けの中立的な評価基盤とBIM活用を打ち出しています。BIMサービスは今後、設計の効率化だけでなく、環境性能の向上、データの品質管理、投資判断の支援まで含む、総合的なサービスへと進化していく可能性が高いです。
今後の展望と日本企業への示唆
今後、BIMサービス市場は、大規模な公共インフラや難易度の高いプロジェクトが引き続き中心となるでしょう。それに加えて、改修や既存建物の性能向上、産業施設でのBIM活用も進むと見られます。特に、既存の建物をデジタル化し、運用資産の情報を整備し、施設管理システムと連携させることは、BIMサービスが提供できる領域をさらに広げる要因になるでしょう。地域的には、BIMの制度化が進む公共プロジェクトが多い市場や、複雑な民間プロジェクトが多い市場で需要が高まりやすいと考えられます。
競争は特定の企業に集中するよりも、サービスの専門化が進む方向へ向かう可能性が高いです。今後は、単にモデルを作る能力だけでなく、標準の設定、共通データ環境(CDE)の運用、データの検証、デジタルツインとの連携、サステナビリティ対応といった、幅広い要素をまとめて提供する力が問われるでしょう。BIMは単独の設計支援ツールではなく、建設・エンジニアリング・建設(AEC)産業のデジタル化と持続可能な変革を支える重要な基盤としての役割を強めていくでしょう。
日本企業にとっては、この市場情報がBIMを導入すべきか否かという議論を超え、プロジェクトのどの段階でどのような機能を外部サービスとして活用すべきかを判断するための具体的な材料となります。新規事業やサービスの拡大を考えている企業にとっては、設計支援だけでなく、scan-to-BIM、完成時のデジタルデータ(アズビルト)、施設管理(FM)システムとの連携、環境性能評価といった、プロジェクトの下流工程や付加価値の高い領域に注目することが重要です。協力会社を選ぶ際には、大手総合型企業と専門特化型企業のどちらが自社のプロジェクトに適しているかを見極める必要があります。また、競合他社を把握する上でも、各社がどの工程で強みを持っているかを細かく分析することが大切です。投資の評価や社内での意思決定の際にも、市場全体の成長率だけでなく、制度による要件化、運用段階へのBIMの拡張、脱炭素関連業務の標準化がどこまで進むかを理解することが、経営判断に役立つでしょう。
レポートの詳細情報
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