橋の塗装にAI活用、自動化へ 国土交通省の助成に石川の北都鉄工と東京のTengun-labelが採択
老朽化する橋の塗装をAIで自動化する挑戦
日本の橋は、建設から長い年月が経ち、古くなったものが増えています。特に、建設後50年以上が経過する橋は今後さらに増える見込みです。橋を長持ちさせるためには定期的な塗装が必要ですが、この塗装作業を担う職人さんが減り、高齢化も進んでいます。このままでは、将来的に橋の塗装作業を続けることが難しくなるかもしれません。
このような状況の中、株式会社北都鉄工(本社:石川県金沢市)と株式会社Tengun-label(本社:東京都新宿区)が共同で、AI(人工知能)を使って橋の塗装を自動化するシステムを開発する研究が、国土交通省の「SBIR建設技術研究開発助成制度」に採択されました。この研究には、700万円の助成金が予定されており、北都鉄工の取締役である小池田康徳氏が研究の代表者を務めます。

AIとデジタルツインで実現する塗装の未来
これまでの橋の塗装は、高所の足場に立ち、危険な場所で熟練の職人さんが手作業で行っていました。しかし、最新のフィジカルAIやデジタルツイン技術を使うことで、塗装作業をコンピューターの中(仮想空間)で再現し、その結果を実際のロボットに反映させて自動化することが可能になると考えられています。
この研究では、デジタルツインの仮想空間上で塗装ロボットの動きを最適化し、塗装の品質を保ちながら、開発のコストや期間を抑え、実際の現場で使える自動塗装システムを目指します。
このシステムが実現すれば、次のような効果が期待されます。
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塗装の計画から実際の作業までの時間を大幅に短くできる。
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現場での作業期間が短くなり、やり直しが減り、塗装の品質が安定する。
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高所や危険な場所での作業がなくなり、作業する人の安全が確保される。
現場の知識と最先端AIの融合
この挑戦は、それぞれの分野で強みを持つ2つの会社が協力することで可能になります。

株式会社北都鉄工は、1934年創業の歴史ある会社で、橋などの大きな鋼構造物の設計から製造、工事までを一貫して行っています。橋の塗装を長持ちさせるための大切な技術を社内に持っており、現場の状況をよく知っています。

株式会社Tengun-labelは、AIや3次元画像処理、センサー技術、データ分析に特化した東京のスタートアップ企業です。デジタルツイン技術を社会で役立てたり、3D点群データの分析を行ったりしており、フィジカルAI分野の最新技術を持っています。
橋をよく知る北都鉄工と、現実世界をデジタルで正確に再現するTengun-labelが組むことで、机上の理論で終わらない「現場で本当に動く」自動化システムの実現に挑戦します。
地域連携から生まれた事業計画
この共同研究の計画は、突然生まれたものではありません。金沢市の委託事業「TENJO KANAZAWA」を通じて、地域の企業や大学との1年以上にわたる話し合いの中から形になりました。
2025年2月、北都鉄工の小池田康徳取締役が、石川の製造業が集まって次のステップを話し合う場「ものづくりOpenMic」の立ち上げに参加しました。

詳細はこちらで確認できます: https://note.com/tenjo_kanazawa/m/m6b45382eec4f
同年4月には、DX推進やAI活用に関する第2弾の会で、北都鉄工の取り組みを紹介しました。

そして2025年秋、「TENJO KANAZAWA」が大学や企業を結びつける中で、「橋梁塗装の自動化」というテーマが具体化していきました。この過程で、フィジカルAI技術を持つTengun-labelや、産学連携に詳しい金沢工業大学が紹介されたのです。
Tengun-labelは東京の会社ですが、石川県白山市にある金沢工業大学白山麓キャンパスの地方創生研究所のプログラムに参加し、すでに白山市での活動実績がありました。このように、地域での出会いが最先端の技術と企業を結びつけ、今回の研究につながりました。
研究開発の実施計画
この研究は、段階的に進められます。

2026年度(令和8年度)は、まず「F/S(調査・分析)」として、デジタルツインの仮想空間に塗装作業を再現するモデルを作ります。続く2027年から2028年度(令和9〜10年度)の「R&D(研究開発)」では、工場のような安定した場所でロボットによる自動塗装のシミュレーションを行い、その結果をもとに自動で動くロボットの開発へと進めます。
今回、国土交通省の助成制度に採択されたのは、この2026年度のF/Sの部分です。
関係者の声
株式会社北都鉄工 代表取締役社長 小池田 康秀氏

「私たちは長年、橋を作り、塗装してきました。塗装は地味ですが、橋の寿命を左右する大切な作業です。しかし、その技術を持つ職人が減り、将来的に誰がこの国の橋を守るのかという危機感を抱いてきました。今回、フィジカルAIという最先端技術に挑戦するのは、職人の技をデジタルの世界に取り込み、次の世代に引き継ぐためです。地方の企業でも、日本全体のインフラの課題解決に貢献できると信じています。」
株式会社北都鉄工 取締役/研究代表者 小池田 康徳氏

「私が受け継ぐのは、会社だけでなく、地域のインフラを守ってきた技術と責任です。しかし、これまでのやり方では、次の世代に引き継げません。塗り替えを待つ橋は増え続ける一方で、職人さんは減っています。会社を持続させることと、社会インフラを守り続けることは、私にとって同じ課題です。フィジカルAIとデジタルツインへの挑戦は、その両方に対する新たな一歩です。この協働をきっかけに、ロボットが橋の塗り替えをできたらいいな、という夢が現実に向けてスタートします。職人さんの技術をデータとして残し、デジタルツインでシミュレーションし、フィジカルAIが担えるようにする。すべての仕事をAIに置き換えるのではなく、限られた人手でもこれまで以上に塗装ができるようにすることで、この会社も、この国の橋も、次の50年を迎えられるでしょう。研究代表者として、必ず現場で動くものにします。」
株式会社Tengun-label 代表取締役 岩澤 秀樹氏
「北都鉄工さんは、橋梁の設計・製造・施工・メンテナンスを現場で担い、塗装に求められる品質や安全性を熟知している企業です。フィジカルAIやデジタルツインは、現場から離れた技術では成り立ちません。実際の橋梁、施工環境、職人の判断、品質管理の条件を知る企業と組むことで、初めて現場で使える技術になると考えています。この研究は、北都鉄工さんの現場の知識と、Tengun-labelが持つ3D空間認識、点群処理、デジタルツイン、フィジカルAIの技術を結びつける取り組みです。橋梁塗装は高度な技能が必要な分野であり、インフラの老朽化や熟練技能者の減少が進む中で、その技術の継承と自動化は緊急の課題です。現実空間を計測し、デジタルツイン上で作業条件を検証し、その結果をロボットに反映させる仕組みを作ることで、熟練技能の継承、安全性の向上、品質の安定化に貢献できると信じています。金沢工業大学白山麓キャンパスの地方創生研究所メンバーシッププログラムへの参画や、TENJO KANAZAWAを通じた地域とのつながりを大切にしながら、北陸のものづくり企業とともに、全国のインフラ維持管理に役立つ技術として実装していきたいと考えています。」
今後の展望
北都鉄工は、これからもパートナー企業や研究機関との連携を深めながら、古くなったインフラの維持管理という社会の課題を解決するため、フィジカルAIやデジタルツイン技術を使った研究開発を進めていきます。将来的には、技術を確立し、社会で実際に使われるようにし、製品化、そして事業として展開していくことを目指しています。
会社概要
株式会社北都鉄工
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創業: 1934年2月
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設立: 1958年1月
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資本金: 9,000万円
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従業員: 132名(2026年6月現在)
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本社: 〒920-0041 石川県金沢市長田本町チ10番地1
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代表者: 代表取締役社長 小池田康秀
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事業内容: 橋梁・クレーン・水門・プラント等、大型鋼構造物の設計・製造・施工およびメンテナンス
株式会社Tengun-label(テングンレーベル)
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設立: 2020年7月15日
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本社: 〒160-0023 東京都新宿区西新宿8-19-13 1204号室
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地域連携: 金沢工業大学白山麓キャンパス 地方創生研究所メンバーシッププログラムに参画
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代表者: 代表取締役 岩澤秀樹
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事業内容: デジタルツイン技術の社会実装/3D点群データ活用コンサルティング/AIを用いた点群データ処理、解析技術によるアルゴリズム構築とシステム開発
関連情報
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国土交通省「SBIR建設技術研究開発助成制度」制度ページ
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_tk_000121.html -
令和8年度採択課題一覧
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002010350.pdf


