「フィジカルAI×IOWN(R) APN×60GHz帯無線LAN」でコンビナート設備点検を高度化、国内初の実証

国内初、コンビナート設備点検の高度化を実証

NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルの3社は、IOWN(R) APN、60GHz帯無線LAN、そしてフィジカルAI技術を組み合わせることで、コンビナート設備点検をより効率的かつ高度にする実証実験を国内で初めて行いました。この取り組みは、屋外にある工場設備の点検作業を担う人々の負担を減らすことを目指しています。

本検証のイメージ図

実証の背景とこれまでの取り組み

大規模な工場設備が集まるコンビナートでは、安全に長く設備を動かすために、定期的な屋外点検が欠かせません。しかし、施設の規模が大きいと点検に多くの時間と人手が必要となり、現場で働く人たちの負担をどう減らすかが長年の課題でした。

これらの課題解決に向けて、NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルの3社は、国際的な団体であるIOWN Global Forum(TM)の活動に参加し、技術開発を進めてきました。これまでに、IOWN(R) APNを使った遠隔操作ロボットとAIによる映像解析を組み合わせた工場点検の実験(注4参照)や、IOWN(R) APNと60GHz帯無線LANを組み合わせた大容量・低遅延の通信環境の検証(注2参照)を行っています。

今回の実証実験の概要

今回、岡山県の水島コンビナートにある三菱ケミカル岡山事業所を舞台に、IOWN(R) APNと60GHz帯無線LAN (WiGig) を活用した大容量・低遅延の通信環境を整えました。この通信環境を使い、自律型ロボットやデジタルツインといったフィジカルAI技術を活用し、屋外設備の点検を高度化する検証を行いました。

具体的には、以下の項目について検証が行われ、実用化に向けた有効な結果が得られています。

  1. 屋外でロボットを遠隔操作し、自分で動く(自律走行)ことを実現。
  2. ロボットに付いているカメラやマイクで集めたデータを、遅れが少なく送ることを確認。
  3. 集めたデータをAIがリアルタイムで分析し、振動や音の異常を見つけることを確認。
  4. 集めたデータをAIが分析した後、デジタルツイン(現実の設備を仮想空間に再現したもの)に反映させ、設備のひび割れを見つけることを確認。

三菱ケミカル岡山事業所におけるロボットを用いた検証

検証内容と結果の詳細

1. 大容量・低遅延な通信環境の構築

三菱ケミカル岡山事業所と東京都内にあるNTTグループのビル間(約700km)に、IOWN(R) APNとWiGigを組み合わせた通信環境を構築しました。これにより、広いエリアで安定して大量のデータを素早く送れるようになりました。

特に、WiGigの装置を積んだロボットが動いても、最適なアクセスポイントに瞬時に切り替わる「端末主導動的サイトダイバーシティ制御技術」(注6参照)を使うことで、ロボットが動き続けても通信が途切れない安定した環境を実現しました。

本検証で用いた通信環境

2. ロボットの遠隔操作と自律走行

この通信環境を使って、東京にいるオペレーターが岡山にある四足歩行ロボットを遠隔で操作しました。ロボットは人の助けなしに広い範囲を一周でき、通信が途切れても安全に止まることが確認されました。

また、四足歩行ロボットはセンサーだけで地図を作りながら、自分の位置を見失わずに広い範囲を走り、障害物(人や物)を避けることもできました。四輪駆動ロボットも同様に自律走行ができることを確認しています。

走行中の四足歩行ロボットとロボットが取得した映像

3. ロボットが取得したデータの送信

ロボットが動いている最中も、カメラで撮影した映像データは、約700km離れた東京のビルまでIOWN(R) APNを通じて送られました。このとき、映像の遅れは目標としていた500ミリ秒(0.5秒)以内を達成しました。これにより、ロボットが安定して動きながら、遠隔地から監視や操作ができる大容量・低遅延通信の有効性が示されました。

4. ロボットによる振動と音の異常検知

四足歩行ロボットに付いているカメラとマイクを使い、映像と音のデータを同時に集め、AIで分析することで異常を見つけられるかを検証しました。

ポンプ機と配管から出る異音(水撃音)を対象にした結果、AIが分析したデータから、普段とは違う何らかの異常が起きていることを検知できました。これは、配管に取り付けられたセンサーの値と比べても、大きな違いはありませんでした。このことから、ロボットを使ってもポンプ機の異常を十分に高い精度で判断できることがわかりました。

データ収集中の四足歩行ロボット
映像データからの振動解析の結果 (一例)
音響解析の結果 (一例)

5. 自律型ロボットとデジタルツインによるひび割れ点検

自律型の四輪駆動ロボットが広い範囲を一周することで、3D空間マップが作られ、デジタルツインの基礎ができました。

次に、ロボットが撮影した高精細な映像データをIOWN(R) APN経由で東京へ送り、画像認識AIで分析した後、デジタルツインの画面に反映させました。検証では、コンクリートのひび割れ情報がデジタルツインの画面にすぐに表示され、その画像をクリックするとひび割れの詳しい状況を確認できました。

この一連の流れは、映像データの取得からAI分析、デジタルツインへの反映まで500ミリ秒以下で実現され、映像伝送の安定性も非常に高く、パケット損失は0.1%以下でした。また、将来的にひび割れに発展する可能性のある小さなひび割れも検出できることが確認されています。

これらの結果から、ロボットやデジタルツインなどのフィジカルAI技術を使うことで、遠く離れた場所からリアルタイムで設備を点検し、異常の兆候を事前に見つけることが可能になることが示されました。

デジタルツイン環境とひび割れ検知

今回の実証結果と今後の展望

今回の実証実験により、以下の点が確認されました。

  • データを集めながら、ロボットが安定して自律走行できること。

  • 自律型ロボットやデジタルツインといったフィジカルAI技術を活用することで、遠隔地からリアルタイムで設備点検や異常の兆候監視ができる可能性。

これらの技術は、点検を行う人々を一つの場所に集めたり、複数の場所で同時に点検を行ったりすることを可能にし、コンビナートなどの工場設備を点検する人々の負担を減らすことに貢献します。

今後は、映像、音、臭い、温度など、さまざまな種類のデータを統合し、「人に代わる認知機能」をさらに高める必要があります。そのために、複数の種類のデータ(マルチモーダルAI)を処理できるコンピューター基盤の高度化に向けたさらなる検証が進められる予定です。

検証における3者の役割

参考情報

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