オペレーショナルテクノロジー(OT)セキュリティ市場、2035年には1,789億3,000万米ドルに達する見込み
オペレーショナルテクノロジー(OT)セキュリティ市場、2035年には1,789億3,000万米ドルに達する見込み

産業界では、接続性や自動化、データの活用を重視した運用への移行が加速しており、これに伴いオペレーショナルテクノロジー(OT)セキュリティ市場が大きな成長局面を迎えています。2025年には443億4,000万米ドルと評価されたこの市場は、2035年には1,789億3,000万米ドルに達すると予測されており、2026年から2035年までの年平均成長率(CAGR)は14.97%と見込まれています。
OTセキュリティが注目される背景
この市場の成長は、単なるサイバーセキュリティのトレンドにとどまらず、産業用制御システム(ICS)、プログラマブルロジックコントローラー(PLC)、監視制御・データ収集システム(SCADA)など、重要なシステムを守る方法に根本的な変化が起きていることを示しています。情報技術(IT)とOTの融合が進むことで、これまで独立していた産業設備が、より広範なサイバーリスクにさらされるようになっています。
OT環境は、ランサムウェアや不正なネットワークアクセス、サプライチェーン攻撃、産業スパイ活動、マルウェア攻撃といった脅威に対して、これまで以上に脆弱になっています。これらの攻撃は、生産の継続性や作業員の安全性、設備の信頼性、さらには国のインフラの強靭性に直接影響を及ぼす可能性があります。従来のITセキュリティとは異なり、OTセキュリティでは物理的なプロセスを保護する必要があり、システム停止や誤った制御命令の実行は、操業面、財務面、安全面に重大な影響を与えかねません。
市場を動かす主な要因
OTセキュリティ市場の最大の成長要因は、政府機関、産業システム、公益事業、重要インフラを標的としたサイバー攻撃の急増です。例えば、インドでは政府機関に対するサイバー攻撃件数が2019年から2023年の間に約138%増加したと報告されています。サイバー犯罪者は、古い機器や限定的なセキュリティ設定、複雑なベンダー環境、高いダウンタイムリスクを抱える接続型OT環境を標的にする傾向があります。
さらに、Industry 4.0、産業用IoT(IIoT)、スマートファクトリー、クラウド接続型工場、リモート監視プラットフォームの普及により、産業ネットワーク全体の攻撃を受ける可能性のある範囲(アタックサーフェス)が拡大しています。同時に、各国の規制強化や重要インフラ保護に関する法制度の整備が進み、企業はより高度なサイバーセキュリティ対策を求められています。
市場が抱える課題
長期的な成長が期待される一方で、OTセキュリティ市場にはいくつかの課題も存在します。特に、産業システムとサイバーセキュリティの両方に精通した専門人材の不足が大きな障壁となっています。OT環境では、ICS、SCADA、DCS、PLC、工場通信プロトコル、安全制御システム、業界固有の規制に関する専門知識が不可欠です。
また、高度な監視ツール、エンドポイント保護、セキュリティ情報・イベント管理(SIEM)システム、ハードウェアの更新、従業員教育、脆弱性診断、保守運用などには多額の投資が必要となるため、中小企業では導入コストが大きな課題となっています。さらに、多くの既存設備はサイバーセキュリティを前提として設計されていないため、本格的なOT保護を実現するには追加投資が必要になる場合があるでしょう。
今後の市場動向と成長機会
最近の市場動向を見ると、OTセキュリティ市場は統合型かつインテリジェンス主導型の段階へと進化しています。2025年にはオンプレミス型が市場を牽引しましたが、これは多くの産業企業がセキュリティインフラ、データ管理、システム設定、運用継続性を自社で管理できる点を重視しているためです。
しかし、予測期間中はクラウド型が市場を牽引すると見込まれています。クラウドソリューションは、柔軟性、拡張性、迅速な導入を実現できることから、企業の需要が高まっています。複数の工場や遠隔施設を運営する企業では、クラウドプラットフォームを利用することで、OTシステムから収集したセキュリティデータを一元管理し、脆弱性の迅速な特定やインシデント対応の自動化、IT部門とOT部門の連携強化が可能になります。AIや機械学習の活用により、異常行動の検知や脅威予測といったクラウド型ソリューションの価値はさらに高まるでしょう。
地域別では、2025年には北米が市場シェアの40.0%を占め、世界市場をリードしました。これは、高度な産業基盤、大規模な重要インフラ、成熟したサイバーセキュリティ投資、厳格な規制制度が背景にあります。北米電力信頼性協会(NERC)のCritical Infrastructure Protection(CIP)基準や、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC)とNERCが正式採用した「NERC CIP-015-1」のような規制強化は、今後もOTセキュリティ対策の普及と強化を促進すると予想されます。
2035年に向けて、OTセキュリティは産業サイバーセキュリティ分野における最も重要な投資領域の一つとなるでしょう。運用停止による損失の増大、規制要件の厳格化、コネクテッド産業システムの普及を背景に、サイバーレジリエンス、コンプライアンス対応、インフラ近代化、安全な産業イノベーションへの投資は今後も拡大していく見通しです。

