3D生成AIが建築設計をどう変えるか?大林組・三菱地所設計とMQueが議論した「アイデアの拡張」イベントレポート

MQueは、2026年6月29日に「3D生成AIの建築設計における活用可能性」をテーマとしたラウンドテーブルイベント「建築×AI Roundtable(第2回)『3D生成:アイデアの拡張』」を、株式会社三菱地所設計の本社内で開催しました。

このイベントは、3D生成AIをはじめとする3D技術の急速な進展を受け、建築設計の現場での実務活用について情報を共有し、整理することを目的としていました。株式会社大林組や株式会社三菱地所設計から、設計、DX、構造、施工、経営戦略などの実務担当者が集まり、活発な議論が交わされました。

議論の主な論点は以下の通りです。

  • プロンプト、スケッチ、画像から3D空間や動画が生成できる場合、社内で誰が最も活用できるのか

  • 意匠設計に効果的な用途と、設備や施工に効果的な用途はどのように異なるのか

  • 3Dにどのような意味付けをすれば、実際の業務に活用できるのか

イベントの様子

瀧川永遠希氏の講演:「3Dとは何か ─ 3D生成技術を入力と出力で体系化する」

講演の前半では、Outerport創業者の瀧川永遠希氏が「そもそも3Dとは何か」「なぜ3Dデータが必要なのか」という根本的な問いから解説しました。

3D技術は目的によって必要なものが大きく変わるため、「入力」(テキスト、スケッチ、画像、生成された3D空間など)と「出力」(動画、3D空間、解析・検証用の3D、BIMなど)の組み合わせで、その能力を体系的に捉える見方が示されました。テキストやスケッチ、画像から3D空間や体験動画を生成する最新の研究事例も紹介され、このモジュール的な視点を持つことで、自社のどの業務に3D技術が役立つかが見えてくると説明されました。

プレゼンテーション中の瀧川氏

勝又海氏の講演:「現実空間のスキャンから3D再構成、そして業務への接続」

講演の後半では、東京大学大学院博士課程の勝又海氏が、現実の空間をスキャンして3Dデータを作成し、それを業務へ繋げていく流れを解説しました。

LiDARや写真によるデータ取得から、寸法を高精度に保つ「測れる3D」と、写真のようにリアルに見せる「見せる3D」の違いについて説明されました。さらに、3Dデータに意味や属性を与えてBIMや図面業務へ接続する考え方が、最新の研究動向とともに紹介されました。

特に強調されたのは、「見た目の美しさ」と「計測精度」は異なるものであり、何の判断に使うのかを基準に必要な精度を見極めることの重要性です。現場での具体的な実装を見据えた多くの論点が共有されました。

プレゼンテーション中の勝又氏

質疑応答・パネルディスカッション

講演後には、参加者からの質疑応答が行われ、瀧川氏と勝又氏がパネルディスカッション形式で回答しました。主な論点は以下の通りです。

  • 現実空間をスキャンして3D化する技術の現状と精度

  • 3Dデータに意味を与え、図面やBIMなどの業務データへ接続する考え方

  • 設計から施工まで、工程を超えて3Dデータを活用する際の課題

  • 先端技術の進展と、現場の実務をどのようにつなぐか

ディスカッションを通じて、「3D技術が何ができるか」だけでなく、「何の判断に、どの精度で使うのか」という目的を起点に考えることの重要性が共有されました。また、建築分野ならではのデータ蓄積を活かすことで、汎用的な技術を各社の実務に役立てる可能性についても前向きな展望が示されました。

グループディスカッション:「3Dの自社業務への活用可能性」

イベント後半では、テーブルごとに「3D技術を自社のどの業務に活用できるか」をテーマにグループディスカッションが行われました。設計に携わる立場や職種によって3D技術に求めるものが異なり、同じ技術でも「誰が、どの場面で、何のために使うか」によってその価値が変わるという気づきが共有されました。

参加各社が自社の業務に引き寄せて具体的な活用方法を検討する、熱量の高い対話の場となり、「技術がここまで進歩したら、こう使ってみたい」という次の行動に向けた具体的なイメージを高める機会となりました。

建築×3D生成AIの実装に向けて

3D生成AIをはじめとする3D技術は、建築設計において着実に実務への導入が進んでいます。しかし、技術の選択肢が広がるほど、「どの技術を、何の判断に、どこまで使うのか」という実務における見極めはますます重要になっています。

このラウンドテーブルでは、3D技術の能力を「入力」と「出力」の軸で体系的に整理し、各社の具体的な業務に結びつけて議論することで、「3D技術が自社のどの業務に役立つ可能性があるか」という問いに向き合う共通の視点が共有されました。

3D生成AIを単に「おもしろい技術」として見るのではなく、「自社のどの業務に役立つかを見極めるべき領域」として主体的に捉えることが、今後ますます重要になるでしょう。MQueは今後も、コンピュータービジョンをはじめとする先端技術の研究成果を建築設計の実務に確実に導入することを目指し、技術開発だけでなく、活用の判断基準を含めた議論の場づくりを継続していく方針です。

登壇者コメント

瀧川 永遠希氏のコメント

「3D技術は『何ができるか』だけでなく、入力と出力の組み合わせで『何に使えるか』を整理することで、自社のどの業務に役立つかが見えてきます。多くの研究は公開されており、知見を持ち寄れば、建築領域での実用化は着実に進むと考えています。本日の議論が、そのきっかけになれば幸いです。」

勝又 海氏のコメント

「現実の空間をスキャンして3Dデータを作成し、意味を与えて図面やBIMにつなぐ技術は、ここ1〜2年で大きく進展しています。一方で、『見た目の美しさ』と『計測精度』は別物であり、何の判断に使うのかを基準に必要な精度を見極めることが重要です。皆様の具体的な業務と照らし合わせて議論できたことは、研究を実務に近づける貴重な機会でした。」

株式会社MQue 佐藤愛季氏のコメント

「研究の最前線にいる開発者と、建築設計の第一線で実務を担う皆様が、同じ場で率直に意見を交わせたことに、大きな手応えを感じています。技術の話だけでも、現場の話だけでも見えてこない『使いどころ』が、両者が交わることで具体的に見えてくる──そうした場面を何度も目にした一日でした。この対話を起点に、研究の成果を一つずつ現場の実装へとつなげていきたいと考えています。」

開催概要

  • イベント名:建築×AI Roundtable 第2回「3D生成:アイデアの拡張」

  • 日時:2026年6月29日(月)9:00〜12:00

  • 会場:株式会社三菱地所設計 本店内

  • 参加企業:株式会社大林組、株式会社三菱地所設計

登壇者プロフィール

瀧川 永遠希(Towaki Takikawa)

瀧川永遠希氏

Outerport創業者兼代表取締役。University of Waterlooでコンピュータサイエンスを修了後、University of Torontoで博士課程に在籍中。NVIDIAにてコンピュータビジョンやシミュレーションの研究開発に従事し、国際学会で多数の論文が採択されています。Outerportを創業し、図面や技術書類を読み取り、設計からパラメータ最適化までを一貫して行う「設計AIエージェント」で製造・エンジニアリング業界の課題解決に取り組んでいます。

勝又 海 (Kai Katsumata)

勝又海氏

東京大学大学院 情報理工学系研究科博士課程にて、3D Gaussian Splatting、GAN、画像生成・編集などの研究に従事しています。動的3Dシーン表現やGAN反転に関する研究が国際会議で採択されるなど、3D/画像生成AI領域の先端研究に取り組んでいます。

佐藤 愛季(Aki Sato)

佐藤愛季氏

住友電気工業で生産技術に従事した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーで製造業や消費財企業への戦略策定、オペレーション変革などを支援。MQueでは、図面チェックや3D技術を扱うモデリング事業において、顧客の課題整理、導入設計、事業推進を担当しています。

株式会社MQueについて

株式会社MQueは、シミュレーション、モデリング、対話AIの独自技術を開発し、社会実装を担うディープテック企業です。世界的な研究実績を持つ研究者の先端技術を、企業や組織が直面する高難度の課題解決に結びつけることで、社会課題の解決に取り組んでいます。

MQueは、高度な技術や知見が個人や組織に属人化し、社会全体で十分に活用されていないという課題に対し、設計、性能、人の知恵を一つの意思決定として統合することで、実現可能性、性能、納得性を兼ね備えた最適な解決策を導くことを目指しています。

研究成果を単なる技術提供に留めず、実際の業務や意思決定に組み込み、社会への導入まで一貫して行うことを重視しています。

このビジョンを実現するため、「シミュレーション」「モデリング」「対話AI」の3つの領域で、研究と事業を一体的に展開しています。

各事業概要

  • シミュレーション事業:流体シミュレーション、AIサロゲートモデル、最適化などの分野で世界的な実績を持つ研究者を中心に、ものづくりの高度化に取り組んでいます。熱機器や航空宇宙産業の企業と連携し、シミュレーションの開発・適用だけでなく、代替モデルの構築や、それを基盤とした最適化までを一貫して提供。設計プロセスの高速化と性能向上を実現しています。

  • モデリング事業:世界最高峰のコンピュータビジョン国際学会で高い評価を受けたエンジニアと連携し、建築・製造業における設計プロセスの最適化に取り組んでいます。ゼネコン、デベロッパー、設計事務所向けには設計図面の確認自動化・最適化を提供し、建築・製造業メーカーに対しては、顧客の嗜好や設計意図を反映した提案力・設計力の強化を支援しています。

  • 対話AI事業:人とAIの協働に関する研究者と、組織設計や経営者育成を専門とするコンサルタントが協働し、独自の対話AI技術とユースケースを開発しています。大手金融機関、総合商社、人事関連企業などと連携し、これまで経験に頼りがちだった配属・評価・育成・採用を、科学的手法と企業固有の文脈を踏まえて再構築しています。

会社概要

  • 名称:株式会社MQue

  • 住所:東京都文京区後楽2丁目3−21住友不動産飯田橋ビル 4階 Room8

  • 代表:津田 拓也

  • URLhttps://mque.co.jp/

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