建築業界の人手不足に「教育」で挑む:AIとCADで即戦力人材を育む産学連携プロジェクトの結果発表
安心計画株式会社は、九州産業大学 建築都市工学部 住居・インテリア学科、および株式会社Lib Workとの産学連携プロジェクトとして開催した「住宅プランコンテスト2025 ~AI×CADで拓く、次世代の住まいづくり〜」の最終結果を発表しました。

このコンテストは、安心計画株式会社と株式会社Lib Work、九州産業大学建築都市工学部教授 香川治美研究室が共同で開発した教材を使用し、住宅設計の実務で使われる3D-住宅CAD「Walk in home」と建築生成AI「タノモシカ」を大学教育に導入した実践型プログラム(全7回)の集大成として実施されました。
建築業界が抱える課題と新たな教育プログラム
日本の建設業における就業者数は、1997年のピーク時から約3割減少し、2024年には約477万人となっています。高齢化が進む一方で若い世代の入職者が少なく、業界全体での技術の継承が大きな課題です。
また、業界のデジタル変革(DX)においても、BIM(Building Information Modeling)の導入率は58.7%にとどまるなど、「ツールを使いこなせる人材」の不足が生産性向上の妨げとなっています。BIMとは、建物の情報を3次元モデルに集約し、設計から維持管理まで共有・活用する手法です。
このような状況を受け、学生時代から「AIとCADを組み合わせた設計の流れ」に触れ、実務現場が求めるスキルを身につけるための新しい教育プログラムが企画されました。
AIとCADを活用した設計の総合力評価
本コンテストでは、単にデザインの美しさだけでなく、実務に役立つ「設計の総合力」が評価の対象となりました。
-
3D住宅CAD「Walk in home」:プランの検討や図面作成に加え、耐震性や断熱性能といった建物の構造や環境性能の検証に使用されました。
-
建築生成AI「タノモシカ」:提案の意図をわかりやすく見せるためのパース作成や、アイデアを広げたり整理したりするために活用されました。
審査では、一般からのWeb投票による「意匠性」、プロの設計者による「アイデア・独創性」、そしてCADが計算する数値に基づく「住宅性能(耐震・断熱など)」を組み合わせた多角的な評価が行われ、優秀なプランが選ばれました。
コンテスト総合順位
約1ヶ月間の一般Web投票とCADによる住宅性能の数値評価を合わせた審査の結果、デザイン性と実務的な住宅性能を両立したプランが選出されました。結果は以下の通りです。
- きらりおーた:「スマートな動線と機能美が交差する、陽だまりの邸宅」
- 蕃茄:「家族の思いやりが寄り添う、奥様想いの安らぎ平屋」
- 肉寿司:「庭のBBQも、毎日の家事も思いのまま。リアルな日常を豊かにするモダン邸宅」
総合1位から3位までのプランについては、講評が公開されています。
AIを「相棒」として使いこなす教育効果
全7回のプログラムを通じて、学生たちはAIに答えを丸投げするのではなく、自分の考えを広げるためのツールとしてAIを使いこなす力を身につけました。
受講後のアンケートでは、「3Dで空間を可視化することで、空間を理解する能力が大きく向上した」「数値で裏付けられた安全性を意識することで、デザインに対する自信につながった」といった声が上がっています。また、3人1組のチーム設計を通じて、実務に欠かせない意見のまとめ方や時間管理といった協力するスキルの重要性を実感する機会となりました。
関係者からのコメント
-
九州産業大学(建築都市工学部住居・インテリア学科 香川治美教授)
「設計は、理論と感性の行き来によって深まります。AIで発想を広げ、3DCADで根拠ある形にするプロセスを授業で経験できたことは、学生にとって大学の建学の理想である『産学一如』を体感する貴重な学びでした。実務のリアルさに触れながら、『生きる力』を育む確かな成果となりました。」 -
株式会社Lib Work(設計部 渡邊 太郎)
「限られた資源で提案のスピードと品質を両立させる現場にとって、教育段階からAIやCADを『道具』として使いこなせる人材は非常に頼りになります。このプロジェクトが業界全体の生産性向上につながる第一歩になると確信しています。」 -
安心計画株式会社(事業推進本部 岡原光輝)
「人材不足の本質は、採用が難しいだけでなく、『育てる仕組み』が現場の進化に追いついていない点にあります。当社は今後もAI×CADを通じた教育支援を続け、業界の未来を担う次世代の人材育成をサポートしてまいります。」
AIと協働する次世代の建築家モデル
学生たちは、それぞれのコンセプトから住まいのアイデアを生み出し、3D-CADによる検証と生成AIによるビジュアル表現の工夫を重ねることで、実現可能な提案へと発展させました。入賞した上位チームは、デザインの美しさだけでなく、構造や断熱性能といった専門的な評価軸においても高い成果を出しています。
最近の教育現場では、「AIリテラシー」を単なる操作技術ではなく、「ツールに振り回されず、主体的に使いこなす力」と定義する動きが広がっています。本プログラムでも、以下の役割分担を明確にすることで、判断の質を高めるプロセスを重視しました。
-
3D-CAD:構造・温熱環境などの客観的な数値に基づき、「プランの根拠付け」に活用。
-
生成AI:発想の整理やパース作成など、「表現の最大化」を担う「相棒」として活用。
AIから答えをもらうのではなく、目的に応じてツールを使い分け、最終的な意思決定は人間が責任を持って行う。この姿勢が、今後の建築実務において不可欠なスキルとなります。本コンテストは、「AIに仕事を奪われる」という心配を超え、「AIと協力することで創造性と生産性を最大限に高める」次世代の職能モデル(AI協働型アーキテクト)の育成において、その有効性を示す意義深いプログラムとなりました。
今後の展望
安心計画株式会社は、本コンテストで得られた知識と成果をモデルケースとして、今後も大学や教育機関との産学連携を通じて、3D-CADと生成AIを活用した実践的な建築教育の支援を推進していく予定です。建築業界のDX推進と、未来を牽引する次世代人材の育成に引き続き貢献していきます。
関連リンク
※Walk in homeは株式会社DTSの商標または登録商標です。


