水空合体ドローンと音響測位装置を用いた防波堤の遠隔・自動水中点検実証に成功

水空合体ドローンで防波堤の水中点検を自動化

株式会社Prodrone、KDDIスマートドローン株式会社、いであ株式会社の3社は、2026年3月24日、空を飛び水に潜ることができる「水空合体ドローン」と音響測位装置を組み合わせることで、陸上からの遠隔操作で防波堤の水中部分を自動点検する実証実験に成功しました。この技術の確立は、老朽化が進む港湾インフラの水中点検において、人手不足が深刻な潜水士に代わり、より安全で費用を抑えたインフラ維持管理を実現するものです。今回の実証は、国土交通省が進める「中小企業イノベーション創出推進事業」の一環として行われました。

水上運用向けの白い大型ドローン

実証の様子は以下の動画で確認できます。
実証動画

実証実験の背景

国内の港湾施設は、高度経済成長期に整備されたものが多く、2040年には建設から50年を超える施設が全体の約7割に達すると国土交通省港湾局は予測しています。一方で、水中点検を担う潜水士は高齢化が進み、人手不足が深刻になっています。浅い海での水中点検は、視界の悪さ、潮流、残圧管理など多くの危険が伴う作業です。そのため、安全を確保しながら、費用を抑えて点検を続けられる体制をどう作るかが大きな課題となっていました。

灯台と防波堤、海中イメージ

実証成果と技術の特徴

今回の実証では、陸上から遠隔操作を行い、ドローンを自動で飛ばして目的の海域に着水させ、水中へ自動で潜航させました。その後、水中を自動で進みながら防波堤を点検するという一連の作業を成功させました。

このプロジェクトの最も大きな特徴は、水中での自動航行点検を、遠隔から低い費用で実現した点にあります。通常、海底資源の調査などで水中を自動で進むには、INS(慣性航法装置)やDVL(ドップラー対地速度計)といった高額な機器が必要です。しかし、今回の開発では、KDDI株式会社が海底通信ケーブルの保守点検で培ってきた「高精度な音響測位技術」を採用しました。これにより、高額な機器を使わずに安定した水中自動航行が可能となり、これまで潜水士が行っていた点検作業を、より低い費用でドローンに置き換えることができるようになりました。

音響測位の仕組み

音響測位装置

自動航行ルート

実証実験の詳細

項目 内容
実証日 2026年3月24日
実証場所 愛知県南知多町師崎港
実証概要 師崎港沖の防波堤で、音響測位による水中自動航行により、防波堤の水中部分を効率的に撮影できるかを以下の手順で実証。
1. 空中ドローンによる目的海域への自動飛行・着水
2. 水中ドローンの切り離しと水中への自動潜航
3. 事前に設定されたルートに沿った防波堤水中部の自動航行・撮影
4. 水中ドローンの回収、陸上への自動飛行による帰還
実証成果 音響測位技術を使った水中自動航行により、防波堤の壁面を潮の流れに影響されずに、効率よく撮影することができました。これにより、潜水士が行っていた水中点検作業を、より低い費用でドローンに代替させることが可能になりました。

水空合体ドローンについて

1. 機体概要

この水空合体ドローンは、空中ドローンと水中ドローンを組み合わせたもので、空を飛ぶことも水中に潜ることもできます。モバイル通信(LTE)を使うことで、空中・水上・水中での遠隔自動航行が可能です。水中ドローンでの水中撮影だけでなく、マルチビームソナーを搭載して海底を測ったり、一眼レフカメラを搭載して水上インフラを空から点検したりすることもできます。

水上ドローン

基本スペック

  • サイズ:1,670mm×1,670mm×665mm

  • 重 量:31kg

  • 搭載量:15kg

  • 耐風性:10m/s

  • 耐水性:IP55

  • 飛行時間:15分(水中ドローン有)

  • 潜航時間:約1時間(潮流による)

  • ケーブル:70m

2. 音響測位による自動航行

KDDIが開発した音響測位技術により、水中ドローンの位置を正確かつ安定して測定し、事前に設定したルート(ウェイポイント)に沿った自動航行を可能にしています。音響測位は、水中ドローンが発する音響信号を、水上の空中ドローンに搭載された音響受信装置で受け取り、解析することで、ドローン間の距離や方向を測る仕組みです。空中ドローンの脚部4箇所に音響受信装置を分散して配置し、独自の信号処理技術を使うことで、位置の測定精度を高め、音の反射が多い防波堤の近くでも正確で安定した測位を実現しています。

3. 活用用途

この技術は、船を出さずに陸上から水中の様子を自動で確認できるため、様々な用途での活躍が期待されています。例えば、港湾施設や洋上風力発電設備などのインフラ点検、災害発生時に港湾施設の損傷状況を素早く把握すること、沈没船の撮影、定置網や養殖場などの漁業分野での定期的な水中監視などが考えられます。

水中インフラ点検

災害時活用

水産業活用

今後の展望

3社は今後も、水空合体ドローンの水中自動航行技術を通じて、危険な水中作業をより安全に、そして低い費用で実施できる社会の実現を目指していきます。港湾の水中インフラ点検だけでなく、災害時の迅速な水中被害状況の把握や、定置網、養殖場といった漁業分野への応用など、この技術の早期実用化と社会での活用に向けて、引き続き技術開発と実証実験に取り組んでいくとのことです。

開発体制

項目 担当企業
商品企画開発 株式会社Prodrone
音響測位技術の機体実装・統括 KDDIスマートドローン株式会社 (音響測位の技術開発:KDDI総合研究所が担当)
港湾施設点検手法 いであ株式会社

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