LiDARの日本市場、2034年までに9億米ドル超へ成長予測 – 自動運転やインフラ整備が牽引

LiDARの日本市場、2034年には9億米ドルを超える成長を予測

株式会社マーケットリサーチセンターは、LiDAR(ライダー)の日本市場に関する最新調査レポート「LiDARの日本市場(2026年~2034年)」を発表しました。このレポートによると、日本のLiDAR市場は、自動運転技術の進展やインフラ・都市計画における精密なマッピングへの需要拡大を背景に、2034年までに大きく成長すると予測されています。

LiDARとは?

LiDARは「Light Detection and Ranging」の略で、レーザー光を使って物までの距離を正確に測り、その物の形や場所を細かく把握する技術です。センサーからレーザー光を発射し、それが物に当たって跳ね返ってくるまでの時間を測ることで、距離を計算します。この距離の情報と、レーザーがどこに飛んでいったかの情報を組み合わせることで、物の3Dの場所(点群データと呼ばれる3Dの地図情報)をとても高い精度で手に入れることができます。

LiDARシステムは、レーザーを出す部分、跳ね返ってきた光を受け取る部分、レーザーの向きを変える部分、そして自分の位置や動きを正確に知るためのGPSやIMU(動きを測る装置)などでできています。この技術は、太陽光の影響を受けにくく、夜や多少の悪天候でも安定して距離を測れるのが大きなメリットです。

日本市場の成長予測

日本のLiDAR市場は、2025年には2億1,730万米ドル規模と評価されました。この市場は、2034年までに9億3,320万米ドルに達し、2026年から2034年にかけて年平均17.00%という高い成長率を示すと予測されています。

この成長を特に強く引っ張っているのは、自動運転技術の進化と、道路や建物などのインフラ開発、都市計画において、とても詳しい地図を作る技術へのニーズが高まっていることです。

ドローン操縦

自動運転技術の進歩

LiDAR技術は、自動運転車が自分の周りの環境を正確に認識し、リアルタイムで3Dのスキャンを行い、障害物を見つけるために欠かせません。例えば、2024年にはKOITO製造がCeptonと協力して、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転車向けの短距離LiDARを開発し、自動運転レベル4の車向けに世界中の自動車メーカーから注文を獲得しました。

トヨタ、ホンダ、日産といった日本の自動車メーカーが自動運転技術に積極的に投資していることも、LiDARシステムへの需要をさらに高めています。

インフラ開発と都市計画における精密マッピング

もう一つの大きな推進力は、インフラ開発や都市計画において、非常に精密な地図を作る技術が求められていることです。LiDARシステムは、都市計画、環境モニタリング、建設プロジェクトに必要な、高精度で詳しい3Dマッピングを提供します。

例えば、日本のLiDARソリューションを提供するRIEGLは、2024年に建設情報モデリング(BIM)などに向けた3D地上レーザースキャナー「VZ-600i」を発表しました。これは、1,000メートルの範囲で素早く正確な測量ができるため、建物の記録や建設中の品質確認に役立ちます。

ドローンによるエリアマッピングのインターフェース画面

市場の主なトレンド

日本のLiDAR市場では、いくつかの重要なトレンドが見られます。

AIと機械学習との統合

LiDARと人工知能(AI)、機械学習(ML)を組み合わせることで、LiDARデータの処理や分析がより効率的になっています。これにより、自動運転車やスマートシティ、産業検査などの分野で、物の検知精度が上がり、自動で判断できるようになるなど、リアルタイムでの意思決定が可能になります。例えば、2024年にはトヨタとNTTが自動運転車向けのAIソフトウェアに5,000億円を投資しており、これにより高度なLiDARシステムがさらに進化する可能性があります。

環境モニタリングと災害管理での利用増加

日本は地震や津波、台風などの自然災害が多い国であり、災害への備えや対応に役立つ技術に力を入れています。LiDARは、高解像度の3Dスキャン技術で地形やインフラ、沿岸部を正確にマッピングできるため、環境の変化を監視したり、災害が起きた場所を管理したりするための重要なツールです。

2024年には、Cesiumが国土交通省のPLATEAUプラットフォームからの200以上のCityGMLデータセットを統合し、全国規模のオープンソースデータセット「Japan 3D Buildings」を公開しました。これはデジタルツインの可視化やシミュレーションに役立つものです。LiDAR技術は、洪水予測や土砂災害のシミュレーション、災害後の状況評価などに活用され、日本の災害リスク軽減に貢献しています。

豊かな緑と険しい崖が特徴の風景を表現した3Dモデル

LiDARセンサーの小型化とコスト削減

LiDARセンサーが小さくなり、それに伴って価格が安くなっていることも、日本のLiDAR市場に大きな影響を与えています。以前のLiDARシステムは高価で大きく、使える場面が限られていました。しかし、最近の技術の進歩により、高い精度を保ちながら、より小型で手頃な価格のLiDARセンサーが開発されています。

例えば、2024年にはLumotiveと北陽電機が、Lumotiveの技術を使った3D LiDARセンサー「YLM-10LX」を発表し、産業ロボットなどでの3Dセンシングに革新をもたらしました。このトレンドは、ドローンやロボット、手持ちのデバイスなど、より多くの産業でLiDARが使われる機会を増やしています。

市場の様々な分析

この調査レポートでは、日本のLiDAR市場を「設置タイプ(空中型、地上型)」、「コンポーネント(レーザースキャナー、ナビゲーションシステム、全地球測位システムなど)」、「アプリケーション(コリドーマッピング、エンジニアリング、環境、探査、ADASなど)」、そして「地域(関東、近畿、中部など)」というさまざまな角度から詳しく分析しています。

例えば、空中型LiDARシステムは、広い範囲のマッピングプロジェクトに高解像度の地形データを提供し、遠隔地の測量や災害管理に役立ちます。一方、地上型LiDARは、特定の建物や地形を精密にスキャンするのに使われ、都市計画や建設、文化財保護などに貢献しています。

河川の護岸工事現場で、多数のコンクリートブロックが設置されている様子

日本の各地域でもLiDARの活用が進んでいます。東京を擁する関東地方では、都市計画や交通インフラ、環境モニタリングに活用され、自動運転車のテストやスマートシティの取り組みでも広く使われています。近畿地方ではインフラや天然資源のマッピング、中部地方では産業インフラや環境モニタリング、九州・沖縄では地形マッピングや災害対策、農業モニタリング、東北地方では東日本大震災後の復興、中国地方ではインフラマッピングや災害リスク評価、北海道では多様な景観管理や林業管理、四国地方では山岳地形や沿岸地域の測量など、それぞれの地域の特性に応じたLiDARの利用が進んでいます。

競争環境

日本のLiDAR市場は、すでに活躍している大手企業と、新しく出てきたスタートアップ企業の両方が存在し、競争が激しいのが特徴です。世界的な主要企業は、自動車や測量、産業向けの高度なLiDARソリューションを提供し、強い基盤を築いています。例えば、2024年にはデクセリアルズが、LiDARの性能向上や小型化に貢献する高精度接着剤や反射防止フィルムなどの技術を発表しました。

日本の企業もこの市場で目立っており、LiDAR技術を自動車や地理空間情報(地図情報)の分野に組み込むことに力を入れています。センサー技術やソフトウェアの連携、コスト効率の面で常に新しい技術が生まれており、LiDARは日本の自動運転システムや精密なマッピングにとって、これからも重要な技術であり続けるでしょう。

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