日本の建築、エンジニアリング、建設(AEC)市場が大きく成長へ:2034年には15億ドル規模に

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株式会社マーケットリサーチセンターが発表した最新の調査資料によると、日本の建築、エンジニアリング、建設(AEC)市場は、今後大きく成長する見込みです。

調査会社によると、2025年には6億8,680万米ドルだったこの市場が、2034年には15億3,030万米ドルに達し、2026年から2034年までの年平均成長率(CAGR)は9.31%と予測されています。この成長は、建設方法の技術革新、都市化の進行、そして環境に優しいインフラへの関心の高まりが主な要因とされています。

AECとは?私たちの生活を支える大切な仕事

AECとは、建築(Architectural)、エンジニアリング(Engineering)、建設(Construction)という三つの主要な分野を合わせた言葉です。この業界は、私たちが生活し、働き、移動する上で欠かせない建物、道路、橋などのインフラを、計画から設計、そして実際に作り上げるまでの一連のプロセス全体を担っています。

  • 建築:建物のデザインや機能、安全性、見た目を考え、利用する人にとって使いやすい空間を創造する役割です。

  • エンジニアリング:建物の構造が安全であるか、電気・水道・空調などの設備がきちんと機能するかを設計し、道路やダムといった土木構造物の設計と分析も行います。

  • 建設:設計図をもとに、実際に建物やインフラを造る仕事です。現場の管理や材料の調達、職人の手配、品質や安全の管理など、プロジェクト全体をスムーズに進めるための多くの作業が含まれます。

AEC業界は、社会の基盤となるインフラを整備することで、経済の成長と私たちの生活の質の向上に欠かせない役割を果たしています。

市場成長を後押しする要因

最新技術の活用

日本のAEC市場では、建設方法や材料に新しい技術が導入されています。例えば、建物の情報をコンピューター上で一元管理する「Building Information Modeling(BIM)」や、ロボットを使った自動化技術は、建設作業をより効率的にし、コストを減らし、プロジェクトの精度を高めています。これにより、日本のAEC市場の需要が高まっています。2024年10月には、日本のスタートアップ企業であるAster Co., Ltd.が、石材の表面に塗るだけで耐震性を大きく高める物質を開発するなど、新しい技術が次々と生まれています。

都市化とインフラ整備

特に東京や大阪のような大都市圏では、人口が集中しており、住宅や商業施設、複合施設の需要が高まっています。これに伴い、スマートで持続可能な都市計画の解決策が求められています。混雑した都市でスペースを有効に使うため、高層ビルや垂直方向の建設が増えています。また、交通インフラの近代化や都市の再開発プロジェクトもAEC市場を形作っています。例えば、2024年3月には、東京の麻布台ヒルズに日本で最も高いビル「森JPタワー」(高さ330メートル)が完成し、東京の新しいランドマークとなりました。

環境に優しい建設への注目

日本は、持続可能性と環境への意識が高く、エネルギー効率の良い建物や再生可能エネルギーを取り入れたインフラの建設が進んでいます。例えば、2024年11月には、日本が世界で初めて木製パネルの人工衛星「LignoSat」を打ち上げ、持続可能な宇宙研究への一歩を踏み出しました。政府も、交通ネットワークや住宅、都市開発に関するプロジェクトを通じてインフラ整備を強化しており、官民連携(PPP)も大規模なインフラ開発を可能にしています。2024年11月には、国際協力機構(JICA)とヨルダンエネルギー・鉱物資源省が共同で「ゼロエネルギーハウス・ビルディング促進」プロジェクトを設立するなど、国際的な取り組みも進んでいます。

各分野における市場の動向

調査では、製品、導入モード、企業規模、エンドユーザー、地域といった様々な観点から市場が分析されています。

ソフトウェアが市場をけん引

AEC市場では、BIMやCAD、プロジェクト管理ツールといったソフトウェアの利用が特に広がっています。これらのツールは、プロジェクトの設計や計画に必要な手間を省き、正確で効率的なプロジェクトを適切なコストで実現するのに役立っています。IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などのソフトウェアアプリケーションを建設分野に応用することが、市場の発展において非常に重要になっています。

オンプレミスとクラウドの使い分け

システムを導入する方法としては、企業内でシステムを運用する「オンプレミス」と、インターネットを通じてサービスを利用する「クラウドベース」があります。日本では、信頼性やデータの管理、セキュリティの面から、多くの企業がオンプレミスソリューションを選んでいます。特に機密性の高いプロジェクトでは、データを社内に保管し、厳格な規制基準を守るためにオンプレミスが好まれます。一方、クラウドベースのソリューションは、その柔軟性や、必要に応じて規模を変えられるスケーラビリティ、そしてコスト効率の良さから、日本のAEC市場で significant なシェアを占めると予測されています。クラウドベースのツールは、離れた場所にいるチーム間でのリアルタイムな共同作業を可能にし、大規模なプロジェクトで特に重要です。また、リモートワークやモバイルアクセスをサポートし、持続可能性への注目が高まる中で、物理的なサーバーの必要性を減らすことにもつながります。

中小企業と大企業、それぞれの役割

中小企業は、住宅建設や改修、地域に特化したプロジェクトなど、その適応性や地域の専門知識を活かして、日本のAEC市場で重要な役割を果たしています。また、大規模プロジェクトにおいては下請けサービスを提供することでサポートしています。一方、大企業は、広範なインフラ整備、都市開発、ランドマークとなるようなプロジェクトを主導し、日本のAEC市場をけん引しています。スマートシティや持続可能な建築プロジェクトをリードし、AIやBIM、ロボット工学といった新しい技術を管理しています。

建築会社と教育機関の重要性

建築会社は、日本の厳しい安全基準や環境基準に沿って、持続可能で災害に強い構造物を設計する中心的な役割を担っています。都市化が進む中で、これらの企業は複合用途開発やエコフレンドリーな設計において革新を進めています。また、大学や技術機関といった教育セクターは、AEC市場で大きなシェアを占めています。持続可能な設計や災害に強い建設における最先端のトレーニング、研究、革新を提供し、業界リーダーと協力して、労働力不足や技術の進歩に対応する専門家を育成しています。

地域ごとの特色

日本の各地域でもAEC市場は様々な動きを見せています。

  • 関東地域:東京や横浜での都市再開発が活発で、高層ビル、複合用途開発、交通インフラに重点が置かれています。

  • 関西地域:大阪、京都、神戸の都市再生プロジェクトを背景に、インフラのアップグレードや文化遺産の保存が重視されています。

  • 中部地域:名古屋を拠点に、産業開発、高速鉄道の拡張、再生可能エネルギープロジェクトを通じてAECの成長を推進しています。

  • 九州・沖縄地域:福岡や那覇のような都市におけるスマートシティイニシアチブと高度な建設技術を重視した都市再生の取り組みと並行して、観光開発やインフラ整備に焦点が当てられています。

  • 東北地域:2011年の震災からの復興努力によって形成されており、災害に強いインフラと住宅に焦点を当てています。

  • 中国地域:広島と岡山における交通ネットワークや港湾施設を含むインフラ開発プロジェクトから恩恵を受けています。

  • 北海道地域:リゾート、ホテル、スキーロッジに焦点を当てた観光とエコフレンドリーな開発が成長を牽引しています。

  • 四国地域:交通インフラのアップグレード、農村再生、災害に強い住宅プロジェクトによって推進されています。

競争の激しい市場

日本のAEC市場は、鹿島建設、清水建設、大林組といった国内の大手企業と、グローバルな企業が競い合う激しい競争が特徴です。各社は、グリーンビルディングの実践、都市再開発、耐震構造への注力、そしてBIMやAIなどのデジタル建設技術への投資を通じて、競争力を維持しようとしています。

まとめ

日本の建築、エンジニアリング、建設(AEC)市場は、技術の進歩と社会のニーズに応えながら、今後も成長が期待される分野です。未来の都市や社会を形作るAEC業界の動向に注目が集まります。

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