日本の大規模公開オンライン講座(MOOC)市場、2030年までに18億2,000万米ドル超へ成長予測

日本のMOOC市場レポート

株式会社マーケットリサーチセンターは、日本の大規模公開オンライン講座(MOOC)市場に関する詳細な調査レポート「Japan Massive Open Online Course Market Overview, 2030」を発表しました。このレポートは、2030年までの市場規模予測や、市場の動向、さまざまなセグメント別の分析などを提供しています。

大規模公開オンライン講座(MOOC)とは

MOOC(Massive Open Online Course)は、インターネットを通じて提供される、誰でも大規模に参加できる教育プログラムです。多くの人が無料で、または低コストで、時間や場所を選ばずに質の高い教育を受けられることが特徴です。コンピュータサイエンス、ビジネス、アート、科学、健康など、幅広い分野の講座が用意されています。

日本のMOOC市場の概況と成長予測

日本のMOOC市場は、学習への関心や、教育機関同士の協力、デジタルインフラの進歩によって、着実に成長してきました。2013年には東京大学や京都大学などの主要大学が「JMOOC(日本大規模公開オンライン講座推進協議会)」を立ち上げ、日本のMOOC環境は活発化しました。当初は日本語での大学レベルのコンテンツ提供に重点が置かれましたが、パンデミックをきっかけにデジタル学習が急速に広まり、MOOCはスキルアップの重要な手段として注目されるようになりました。

特に、高齢化が進む日本の労働力のリスキリング(新しいスキルの習得)が新たな機会となっています。IT、データサイエンス、ロボティクス、AIに特化したMOOCは、ビジネスパーソンや企業からの需要が高まっています。「gacco」や「Fisdom」といったプラットフォームは、企業と協力して専門的な資格や業界に合わせた学習プログラムを提供しています。また、「成長戦略アクションプラン」のような政府の取り組みも、生涯学習の一環としてデジタル学習を推進し、市場を活性化させています。

この調査レポートによると、日本のMOOC市場は2030年までに18億2,000万米ドルを超える規模に達すると予想されています。

規制環境と国際協力

日本のMOOCに関する規制は、JMOOCによって支えられています。JMOOCは、大学、職業訓練、企業研修の各分野にわたる講座の品質を保証する機関として機能しています。国としての包括的なMOOC政策や大規模な政府資金はないものの、JMOOCは基準設定や普及促進において重要な役割を担っています。文部科学省のカリキュラム改革も、MOOCの拡大に良い影響を与えています。

国際的な連携も進んでおり、2025年にはJMOOCがタイのMOOCと共同ワークショップを開催し、マイクロクレデンシャルやデジタルバッジを通じた生涯学習の促進に焦点を当てました。東京大学のCourseraやedXの講座には、200カ国以上から約68万人の学生が登録しており、日本のMOOCが世界的に注目されていることが分かります。

プラットフォームの種類

日本のMOOC市場では、主に2種類のプラットフォームがあります。

  • XMOOC(eXtended MOOC): 従来の学校の授業に近い、講師主導で体系的な学習方法が特徴です。Coursera、edX、そして日本の「gacco」などがこれにあたります。明確な学習目標、小テスト、認定資格があり、大学生や企業研修生、資格取得を目指す社会人に人気です。高品質で資格が取得できるコースへの需要が高い日本では、XMOOCが市場をリードしています。

  • CMOOC(Connectivist MOOC): 学習者が主体となり、参加者同士で協力しながら知識を作り上げていく学習方法です。日本では、体系的な指導や資格を重視する文化的な背景から、XMOOCほど普及していません。しかし、芸術、人文学、自己啓発といった分野のコミュニティでは、CMOOCがアイデア交換の場として活用されています。

最近では、XMOOCのコンテンツとCMOOCのような参加型の要素を組み合わせたハイブリッド形式を試す日本の教育テック系スタートアップも現れており、より双方向的な学習モデルへの移行が見られます。

学習者層の分析

日本のMOOC市場では、さまざまな学習者層が利用しています。

  • 高校生: 大学進学準備や英語学習、STEM(科学・技術・工学・数学)スキルの習得のためにMOOCを利用するケースが増えています。

  • 学部生: 大学の授業を補完したり、世界中の専門的なコンテンツに触れたり、マイクロクレデンシャルを取得したりするためにMOOCを活用しています。

  • 大学院生: データサイエンス、ビジネス分析、人工知能といった専門的で高度な分野の学習にMOOCを選んでいます。

  • 企業学習者: デジタル化が進む労働環境と高齢化に対応するため、企業が従業員のリスキリングやスキルアップのためにMOOCプロバイダーと提携する例が増加しています。

  • 生涯学習者: 退職者や趣味を持つ人々が自己啓発のためにMOOCを利用しています。人文科学、健康、文化関連の科目に強い関心を示しており、地方自治体やNGOも高齢者のデジタルリテラシー向上を支援しています。

このように、多様な学習者のニーズに合わせて、プラットフォームやコースの内容が最適化されています。

人気のある学習分野

MOOCで人気の高い分野は多岐にわたります。

  • テクノロジー&エンジニアリング: 国のデジタルトランスフォーメーション、AI、ロボティクスといった優先課題を背景に、コーディング、サイバーセキュリティ、データサイエンスなどのコースが特に人気です。

  • ビジネス・経営: プロジェクトマネジメント、リーダーシップ、デジタルマーケティング、起業家精神に関するコースが、専門家や大学院生に支持されています。多くの日本企業が従業員の能力向上に活用しています。

  • 自己啓発: コミュニケーションスキルや時間管理、批判的思考といったソフトスキルを向上させたい若年層や中途採用の専門家からの関心が高まっています。

  • 健康・ライフサイエンス: 医療従事者だけでなく、一般の学習者にも広く支持されており、メンタルヘルスや公衆衛生政策、ウェルネスといった分野が注目されています。

  • 芸術・人文・社会科学: 哲学、歴史、社会学、文学といった分野は、教養を深めたい人や大学生、生涯学習者に人気があります。

  • 教育・指導: 教員養成課程の学生や現職の教育者を対象に、教育法やカリキュラムの革新、デジタル教育ツールに関するコースが提供されています。

日本のMOOCは、学術的、職業的、自己啓発といった幅広い学習ニーズに応える多様な科目ポートフォリオを提供しています。

MOOCの課題と展望

MOOCには、言語の壁、コース修了率の低さ、より実践的で就職に直結する成果の必要性といった課題も存在します。しかし、AIやビッグデータを活用した個別最適化された学習、自動フィードバック、VRやAR技術による没入型学習体験など、新たな技術の導入により、MOOCの未来はさらに広がると考えられています。


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