VTOL型ドローンが鉄道沿線の冬季斜面調査を効率化 JR東日本らが実証実験
VTOL型ドローンを活用した鉄道沿線の冬季斜面調査実証実験
東日本旅客鉄道株式会社新潟支社、第一建設工業株式会社、東鉄工業株式会社、エアロセンス株式会社の4社は、VTOL（垂直離着陸）型ドローンを使った鉄道沿線の冬季斜面調査の実証実験を行いました。この実験は、2025年4月に只見線、12月に上越線で実施され、JR東日本としては初めてとなるレベル3.5によるVTOL型ドローンの自動飛行機能を活用したものです。
これにより、冬季の斜面状況を把握する方法の選択肢が増え、より適切な規模での調査が可能になると期待されています。
冬季斜面調査の課題とVTOLドローンの可能性
JR東日本新潟支社では、雪が多く降る地域での安全な運行を保つため、山間部の線路沿いにある斜面の積雪状況やなだれの発生を、必要に応じて調べています。これまで、冬季の斜面調査は、社員が車両や徒歩で行うほか、広い範囲を調べるときはヘリコプター、特定の場所を調べるときはマルチコプター型ドローンが使われていました。中くらいの距離を調査する際には、マルチコプター型ドローンを移動させながら使うため、時間がかかるという課題がありました。
今回の実証実験では、中距離の冬季斜面調査を効率よく行うために、VTOL型ドローンがどれだけ役に立つかを検証しました。
実証実験の内容
実証実験は、只見線の大白川駅～上条駅間と、上越線の土樽駅～越後湯沢駅間で行われました。ドローンが飛行している間には、新潟市中央区にある施設管理部門など、離れた場所へ飛行画面をリアルタイムで共有する試験も行われました。また、ドローンに搭載する機材の性能評価や、斜面の状況調査にどれだけ使えるかも確認されました。
VTOL型ドローンの機体概要と記録装置
この実験で使われたのは、国産のVTOL型ドローン「AS-VT01K」（エアロセンス社製）です。この機体は、国土交通省の「第二種型式認証」を取得しており、目視できない場所での飛行も申請なしで可能です。LTE通信を使って遠隔で操作でき、最大50kmの距離を自動で飛行できます。
ドローンのペイロード（荷物を積む場所）には、固定カメラやジンバルカメラを搭載できます。只見線での実験ではジンバルカメラを、上越線での実験では固定カメラを搭載して試験しました。フロントカメラの映像は、リアルタイムで確認しながら調査を進めました。
今後の展開
VTOL型ドローンの自動飛行機能を活用した今回の鉄道沿線斜面確認の実証実験の結果をもとに、2025年度冬季の斜面検査へのVTOL型ドローンの活用を検討していきます。
今後は、新型機材「AS-VT02K」の活用も検討されています。この新型VTOL型ドローンは、防塵・防滴性能の規格であるIP43を備え、現行機種では飛行できなかった小雨の中でも飛行が可能です。これにより、点検や災害時の調査など、天候の影響を受けにくくなり、さらに多くの場面での活用が期待されます。
また、より迅速に調査を行うため、東京都内から機体を輸送する「はこビュン」の検証も予定されています。新型VTOL型ドローンは、二分割式のコンパクトな運搬ケースに収納できるため、これまで難しかった「はこビュン」での輸送の選択肢が広がります。新幹線輸送の速達性や安定性を活かし、VTOL型ドローン機材の迅速な手配や災害時の緊急輸送などが検討されます。
引き続き、冬季の調査業務においても、DX（デジタルトランスフォーメーション）を活用し、効率的なメンテナンスと働き方改革への取り組みを進めていきます。
「はこビュン」について
「はこビュン」は、JR東日本グループが提供する荷物輸送サービスです。速さや正確さ、環境への優しさといった鉄道の強みを活かし、地域とモノをつなぎ、地域の魅力を発信しています。
「はこビュン」の具体的なサービスは以下のリンクで確認できます。
