『エッジAIロボティクス白書2026年版』が発刊、産業革新の全貌を体系的に解説

『エッジAIロボティクス白書2026年版』が発刊

一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構（INGS）は2025年11月26日、『エッジAIロボティクス白書2026年版』の発刊とその概要を発表しました。この白書は、エッジAIとロボティクスが融合することで生まれる産業の新しい動きを、市場の様子から具体的な技術、そしてそれぞれの業界での活用例まで、わかりやすく解説した報告書です。

市場の動きと成長の予測

エッジAI市場は、2024年には87億〜207.8億米ドル規模と推計されており、2030年までには毎年20〜30％以上の高い成長が続くと予測されています。この成長の大きな理由として、製造業、物流、ヘルスケアといったさまざまな現場で、ロボットが自律的に動くようになることが挙げられます。

「三層分担アーキテクチャ」とは

エッジAIロボティクスの重要な考え方に「三層分担アーキテクチャ」があります。これは、ロボットがクラウドに頼りすぎず、その場で素早く判断し、自律的に動き、運用コストを最適化するための仕組みです。

具体的には、ロボット自身（エッジ）が安全な動きの制御や簡単な判断を行い、近くのサーバー（MEC/ローカル層）が複数のロボットの協力や情報の共有、作業の割り当てを担当します。そして、遠くのクラウドは、ロボットが学習するためのデータ分析や、長期的な最適化に専念します。この仕組みにより、ロボットは安定して動き、データの安全性も高まります。

2025年の重要な変化

2025年は、人間に近い形をしたヒューマノイドロボットが本格的に現場で使われ始めることと、エージェンティックMLOpsという、AI（人工知能）のモデルをロボットに自動で組み込む技術が成熟する、重要な時期になると考えられています。NVIDIAの技術を中心に、クラウドとロボットが一体となることで、ロボットを現場に導入するまでの期間が大幅に短縮され、専門知識がなくてもロボットを運用できるようになることが期待されています。

市場が成長する背景には、IoT（モノのインターネット）機器での素早いAI判断の需要、5G通信の普及、高性能なAI専用プロセッサの進化、そして製造業、ヘルスケア、自動車産業での現場の自動化が求められていることがあります。ロボットの分野では、自律移動ロボット（AMR）や協働ロボット（コボット）の普及が進み、生産ラインの柔軟化、少量生産への対応、故障の予測、エネルギーの最適化が、投資の効果を裏付ける要素となっています。

進化する技術と多様な応用事例

技術面では、少ない電力でAIが判断する技術、人間とロボットが視覚、音声、言語を使って自然にやり取りする技術、そしてロボットが現場で学習し、自分で問題を解決する技術が中心となります。

センサー技術も進化しており、AIが組み込まれたセンサーシステムや、力を感知するスマートセンサー、AI画像センサーなどが、製造現場での品質管理や故障の予測に役立つでしょう。これらのセンサーを組み合わせることで、視覚、触覚、振動、温度といった様々な情報を100ミリ秒未満という速さで分析し、変化する環境に素早く対応できるようになります。

業界別の活用例

• 製造業: 自律移動ロボット（AMR）、AIを使った画像検査、協働ロボットを組み合わせることで、多様な製品を少量生産し、品質を安定させることが可能になります。AI画像センサーによる精密な外観検査や、予測型振動センサーによる設備の異常の早期発見が、不良品の削減や工場の稼働率向上に直結します。

• 物流・倉庫: ロボットがその場で素早く判断することで、人とロボットが一緒に働く環境でも安全が確保されます。夜間の棚卸しの自動化や、最適なルートを自動で決めることで、24時間体制での稼働と人手不足の解消が進むでしょう。

• 建設・インフラ: 自動で作業するロボット、点検ドローン、AIを使った構造物監視が、人手不足の解消と安全性の向上を同時に実現します。AIが現場で素早く判断することで、危険な場所での作業を最小限に抑えることができます。

• スマート農業: ドローンを使った農薬散布や、自動で収穫するロボット、AIによる作物の診断システムが、効率的な農業と持続可能な生産を推進します。

• ヘルスケア・サービス: 小さなAI言語モデルを組み合わせることで、案内や点検の作業がより柔軟になります。視線、ジェスチャー、音声の統合的な認識により、患者や利用者の意図を素早く理解し、介助や配膳、移動支援をリアルタイムで行うことが可能になります。

経済性と投資の効果

エッジAIロボティクスを導入することで、作業時間の短縮、不良品の削減、機械の停止時間の減少といった直接的な効果により、1年から3年で投資した費用を回収できる事例が増えています。さらに、教育期間の短縮、保守やセキュリティの負担軽減、電力の最適化といった間接的な効果も期待できます。

今後の展望と白書の価値

2025年から2028年にかけてのシナリオでは、ヒューマノイドロボットが様々な業種で常時使われるようになる強気な見方から、自律移動ロボットや協働ロボットが中心となって広がり、ヒューマノイドロボットは限定的な作業で使われるようになる中位の見方、さらにはセキュリティや人材の制約がある中でも、ヨーロッパの製造業では品質管理やメンテナンスの分野で着実に進展するといった慎重な見方まで、様々な可能性が予測されています。

本白書を読むことで、読者はエッジAIとロボティクス市場の全体像を把握し、導入に必要な技術体系、競合他社の分析方法、業界別の応用シナリオ、導入計画の立て方、リスク管理体制の構築、そしてベンダー選定の基準などを学ぶことができます。

関連情報

本白書の詳細については、以下のリンクをご参照ください。

• エッジAIロボティクス白書2026年版 製本版

• エッジAIロボティクス白書2026年版 PDF版
  （※ 「PDF版」はeメール／ダウンロードでの納品方法にも対応しています）