一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構が『自律型AIエージェント-分野別実装・活用 総覧白書2026年版』を発刊

一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構(INGS)は2025年11月26日、『自律型AIエージェント-分野別実装・活用 総覧白書2026年版』を発刊し、その概要を発表しました。

自律型AIエージェントの活用を網羅した白書

この白書は、自律型AIエージェントを企業や産業で導入する際に必要な、最も幅広い知識を集めたものです。500件以上の実際に使われている事例や、主な技術の仕組み、様々な業界での導入パターンを体系的に整理しています。これにより、技術を選ぶところから、どのように動かすか、目標をどう設定するか、そしてルール作りまで、具体的なやり方を示しています。国内外の先進的な事例を通じて、自律型AIエージェントが単なる「試み」から「会社の重要な仕組み」へと進化する、大切な時期を捉えた戦略的な資料です。

AIエージェントの技術は、ただの対話型AIの延長ではありません。計画を立てる能力(Planning)、道具を適切に使う能力(Tool Use)、情報を覚えておく能力(Memory)、そして自分で実行する能力(Autonomous Execution)を一つにまとめ、人間の管理のもとで業務プロセス全体を自動化し、最も良い状態にすることを目指す次世代の技術です。本白書は、この技術の流れを「幅広い利用事例のカタログ」「導入のための技術の仕組み」「業界ごとの詳しい事例」という三つの層で整理しており、読者が自分の会社のDX戦略にすぐに役立てられる実践的な知識が凝縮されています。

自律型AIエージェント -分野別実装・活用 白書 2026

具体的な導入事例と期待される効果

本白書では、理論だけでなく、実際の導入例とその効果を詳しく説明しています。例えば、エージェントプロトコルやダイナミックプライシングといった汎用的な仕組みから、KDDIの議事録自動化による最大1時間の時間短縮、セブン‐イレブンの発注時間4割削減、清水建設の市民開発展開といった具体的な事例まで、どれくらいの効果があったかや、導入プロセスを詳しく紹介しています。これにより、技術を選ぶ際の妥当性の確認、投資に対する効果(ROI)の試算、段階的な導入計画の作成が可能になります。

AIエージェント採用曲線 (2023-2027)

また、本白書は業界ごとの特別な条件や、最も効果的な方法を明確にしています。金融業界での規制対応(FRTB、AML)、医療業界での管理体制の設計(ヒューマン・イン・ザ・ループ、監査証跡)、物流業界での例外処理や目標設定など、単に技術を導入するだけでなく、運用がどれだけ成熟しているかという視点を提供しています。AIエージェントの「失敗する可能性」と、そのリスクを管理する方法も一緒に示すことで、過度な期待を避け、現実的な導入計画を立てる手助けとなります。

業界別AIエージェント実装事例と定量効果

白書の多様な利用シーン

この白書は、様々な立場の人がAIエージェントを導入・活用する上で役立つように作られています。

  • 戦略立案・投資判断: 経営層やCIO、CDO、事業企画部門は、AIエージェントへの投資の優先順位を決めたり、予算を配分したり、どれくらいの効果があるかを試算したりする際の根拠として使えます。

  • 技術選定・アーキテクチャ設計: CTO、ITアーキテクト、AI/MLエンジニアは、複数のエージェントを組み合わせたシステムの設計、モデルの選定、ツールの構成、他のシステムとの連携方法を検討する際の技術的な参考資料として活用できます。

  • 業務プロセス改革・DX推進: 業務部門長、プロセスオーナー、DX推進室は、既存の仕事の流れにAIエージェントを組み込む方法、自動化できる範囲の特定、目標設定を行う際の実務的なガイドとして機能します。

  • リスク管理・ガバナンス構築: CISO、コンプライアンス責任者、リスク管理部門は、AIエージェント導入に伴うセキュリティリスク、データ管理、説明責任、監査の記録、倫理的な配慮を評価・設計する際の統制の枠組みとして活用できます。

  • 市場調査・競合分析: 産業アナリスト、市場調査担当、ベンチャーキャピタル、コンサルタントは、エージェント市場の動向把握、技術トレンドの予測、投資機会の評価、競合他社の位置づけ分析を行う際の一次資料として機能します。

  • ベンダー選定・RFP作成: 調達部門、プロジェクトマネージャーは、AIエージェントソリューションの比較評価、ベンダー選定の基準作り、RFP(提案依頼書)の要件定義を行う際の評価軸として活用できます。

  • 人材育成・組織変革: 人事部門、研修担当、チェンジマネジメント責任者は、AIエージェント時代に求められるスキルセットの再定義、組織の能力開発、業務の役割の再設計を行う際の変革の指針として機能します。

市場ドライバーとビジネス成果の概念図

白書を読むことで達成できること

この白書を読むことで、以下のような目標達成が期待できます。

  • 戦略的意思決定の加速: 500事例の具体的なデータに基づいて、AIエージェントへの投資の優先順位や予算配分、期待できる効果を客観的に判断できるようになります。「やるべきか」ではなく「何を、いつ、どこまでやるか」という具体的な計画を描けるでしょう。

  • 技術選定の精度向上: 複数のエージェントを組み合わせたシステムの設計、LLM(大規模言語モデル)の選定、ツールの構成、他のシステムとの連携方法など、導入のパターンを学ぶことで、無駄な投資や将来の技術的な問題(技術負債)を避け、合理的なシステム設計が可能になります。

  • 実装リスクの最小化: 業界ごとの特別な条件(規制、セキュリティ、管理の仕方)と、過去の失敗例を理解することで、開発段階でのリスクを事前に見つけ、対策を組み込めます。

  • 組織変革の具体化: 従業員が自ら開発を進める「市民開発」の推進、業務の役割の見直し、必要なスキルの変更、組織を変えるための実践的な方法を学ぶことで、技術導入を組織の能力として定着させる変革計画を立てられます。

  • 競争優位の構築: 競合他社の動向(例:小売大手20社のAI対応度ランキング)や先進事例(トヨタ、Amazon、三菱UFJなど)を参考に、自社のデジタル化の進み具合を相対的に評価し、他社との差別化を図れる分野を見つけられます。

  • エコシステム連携の視座獲得: 会社の中でのエージェントの統合にとどまらず、サプライチェーン、パートナー企業、顧客との境界を越えたエージェント同士の協力という将来の姿を描き、次世代のビジネスモデルの構想に着手できます。

2024年から2025年は、AIエージェント技術が「試行段階」から「会社全体での導入」へと大きく進む時期です。この白書は、この変化の時期に、企業が「何を」「どこまで」「どのように」導入すべきかという大切な問いに対して、500件の実証データで答えるものです。

関連情報

白書に関する詳細情報はこちらから確認できます。

監修・発行:
一般社団法人 次世代社会システム研究開発機構

発刊日:
2025年11月26日

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