新型ドローン「Antigravity A1」がわずか5分の飛行で空間三次元データ化、実用性を検証
高山ドローンリサーチ株式会社と株式会社アイ・ロボティクスは、昨年12月に発売された小型ドローン「Antigravity A1」を用いた共同実証実験を実施しました。
この実験はアイ・ロボティクスが運営する「ドローンフィールドKAWACHI」で行われ、約5分という短い飛行時間で、屋内の広い空間の三次元データを取得できることが確認されました。これにより、実務で使えるデータが短時間で簡単に手に入る可能性が見えてきました。
検証が行われた背景
これまでの屋内空間での三次元計測や点検作業では、ドローンの大きさや重さの制限、高い操縦技術が必要なこと、そして作業に時間がかかることが大きな課題でした。特に、工場や倉庫、トンネル、上下水道など、GPSが使えない場所では、技術的には可能でも、実際の仕事で安定して使うのは難しい状況でした。
今回の検証では、軽くて小さい「Antigravity A1」を使うことで、これらの難しい条件下でも、継続して無理なく使えるかを確かめる目的がありました。
Antigravity A1の特長
「Antigravity A1」は、Insta360が支援する新ブランドAntigravityが開発した、360度すべてを8Kの高画質で撮影できるドローンです。

このドローンには、360度カメラが2つ搭載されており、飛行中にドローンの周りすべてを8Kの映像で同時に記録できます。そのため、撮影したい方向を意識してドローンを操縦する必要がなく、後で映像を見ながら好きな視点を選べるのが大きな特長です。
また、飛行時の重さは約249gと非常に軽く、持ち運びやすく、すぐに使える設計になっています。専用のゴーグルやコントローラーを使うと、操縦者の動きに合わせて直感的に視点を変えられるため、飛行操作と視点操作を別々に行うことができます。
さらに、障害物を避ける機能や荷物の検知システムなどの安全機能も備わっており、視界の悪い屋内や閉鎖された空間でも、安定して飛行し、作業を行えるように作られています。
なぜAntigravity A1が選ばれたのか
今回の実証実験で「Antigravity A1」が使われた一番の理由は、これまでのドローンとは違う撮影方法ができる点にあります。
一般的なドローンでの撮影では、操縦者が飛行中にカメラの向きやドローンの姿勢を意識しながら撮影する必要があり、特に屋内や閉鎖された空間では、撮り忘れや撮影にムラが出やすいという問題がありました。「Antigravity A1」は、360度すべてを同時に記録する方式のため、飛行中に撮影方向を細かく気にする必要がありません。
これにより、操縦者は飛行ルートの安全確保やドローンの安定した飛行に集中でき、結果として撮り忘れの少ないデータを得ることができます。この特長は、点検や計測のように「一度の飛行で必要な情報を確実に手に入れたい」という場合に、とても役立ちます。
また、8Kの高解像度360度映像は、撮影後に好きな視点にリフレーミングできるため、点群データを作る上でも有効です。撮影時に視点を固定しないことで、空間内の構造物や壁、天井などの情報を広く含んだ映像データを確保でき、三次元点群データを作る際に詳しい構造情報を取り出しやすくなります。これは、後で解析する際の自由度を高め、撮影条件の許容範囲を広げることにもつながります。
さらに、「Antigravity A1」は飛行時の重さが約249gと軽くてコンパクトなため、屋内空間や狭い場所、トンネルや設備の中といった閉鎖された環境でも扱いやすいのが特長です。機体の大きさや重さが作業の制限になりやすい場所で、安全性と使いやすさを両立できるドローンであることも、今回の実証実験で使われた理由の一つです。市販されている民生用ドローンの中で、「短時間で簡単に操作でき、実務に耐える三次元データを確実に取得する」という今回の実験の目的に最も合っていると判断されました。
得られた成果
今回の実証実験を通じて、「Antigravity A1」を使った三次元点群データの取得において、実際に仕事で使えるようになるためのいくつかの成果が得られました。
まず、約5分程度の飛行で、三次元点群データを作るのに十分な量のデータが手に入ることを確認しました。短い飛行時間にもかかわらず、空間全体の構造がわかる点群データを作れたことは、「実務で使える点群データを得るには長い飛行時間が必要」というこれまでの考え方を見直す結果と言えます。
次に、操作の面では、特別な操縦技術や難しい設定がなくても、一般的な操縦レベルで安定してデータが取得できることが確認されました。操縦者の経験に頼らずに作業ができる点は、点検や計測の仕事における人手不足の解消や、作業の標準化に貢献する大切な要素となるでしょう。
さらに、作成した点群データについては、点群だけだと一部に密度の差が見られましたが、メッシュ化という処理をすることで、見た目の粗さが減り、点検や空間の把握に十分な精度があることが確認されました。用途に合わせて点群とメッシュデータを使い分けることで、実際の業務への適用がさらに広がる可能性が示唆されています。

PIX4Dmaticを使った解析結果では、バスケットコートの線や壁の構造がはっきりと再現されており、この方法が空間の形を把握したり、点検したりするのに有効であることが視覚的にも確認できます。
見えた課題とこれからの方向性
今回の実証実験で得られた成果に加え、次に技術をさらに高めるための課題と方向性も明確になりました。これらは今の方法の限界を示すものではなく、実際の仕事で使える精度や再現性を高めるための改善点と位置づけられています。
全方位データの活用
現在の解析では、360度データから特定の向きに切り出したデータを主に使っており、「Antigravity A1」が持つ360度全方位撮影の能力を十分に活用しているとは言えない状況です。そのため、点群データを作る際にエリアごとに密度の差が出ることが確認されました。今後は、360度全方位映像の特長を活かしたデータを選び出す方法や、前処理の最適な流れを作ることで、点群の密度を均一にし、再現性を高める方針です。
ガウシアン・スプラッティング(3DGS)への展開
現在の解析方法は、これまでの写真測量の方法が中心であり、ガウシアン・スプラッティング(3DGS)という新しい技術に直接展開するには、データの形式や処理の面で制約があります。今後は、データの設計を最適化するとともに、PIX4Dなどの解析ソフトウェアの更新状況を見ながら、点群、メッシュ、3DGSといった複数の三次元表現方法を、用途に応じて使い分ける整理をしていく予定です。
これらの取り組みにより、短時間で簡単に操作できるという今回の実証実験の強みを保ちつつ、より実用的で幅広い用途に使える三次元データ取得・表現方法の確立を目指します。
パートナー・技術者募集
高山ドローンリサーチとアイ・ロボティクスは、「短時間で簡単に操作でき、現場で本当に役立つ三次元データ取得」を軸に、これからも共同研究を続けていきます。つきましては、屋内やトンネル、地下施設などの閉鎖された空間での点検・計測業務を主な対象とし、実際の運用を前提とした検証を一緒に進めていただけるパートナー企業や団体を広く募集しています。
また、現場への導入を検討している事業者や施設の管理者の方々からの相談や参加も歓迎しており、実際の業務の流れや運用条件を踏まえた検証を通じて、導入の可否を検討したり、課題を整理したりする取り組みを進めていきたいと考えています。
さらに、三次元計測・解析技術をさらに深め、社会で本格的に使えるように推進していきたい技術者の方にも参加いただければ幸いです。
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高山ドローンリサーチ株式会社: https://www.tdr-drone.co.jp/
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株式会社アイ・ロボティクス: https://irobotics.jp/


