AI-ロードヘッダが進化、遠隔・自動掘削でトンネル工事の未来を拓く

AI-ロードヘッダが進化、遠隔・自動掘削でトンネル工事の未来を拓く

安藤ハザマと三井三池製作所は、山岳トンネル工事の生産性を大きく高めるためのシステム「山岳トンネル統合型掘削管理システム(i-NATM®)」の開発を進めています。この取り組みの一環として、機械掘削工事で自動掘削や遠隔操作を可能にする「AI-ロードヘッダ」の開発を進めてきました。

この度、AI-ロードヘッダに新しい機能を追加した新型機2種類が開発され、実際の現場で長く性能を試すための実証試験が始まりました。

AI-ロードヘッダ MRH-S200Gi
写真1:AI-ロードヘッダ MRH-S200Gi

AI-ロードヘッダ SLB-300Si
写真2:AI-ロードヘッダ SLB-300Si

開発の背景

建設業界では、働く人の高齢化や人手不足が進み、高い技術を持つベテランの知識が失われたり、働き手が足りなくなったりする問題に直面しています。そのため、コンピューター技術(ICT)を活用して仕事の効率を上げることが欠かせません。

山岳トンネル工事の現場では、掘削作業が最も危険な作業の一つであり、多くの粉じんが出るため、働く人の健康への心配もあります。重機を操作する人が長時間、粉じんの中で作業することになるため、この作業を機械に任せる(無人化する)ことは、効率を上げるだけでなく、安全面や環境面でもとても重要です。

開発の経過

2023年6月には、「令和3年度 中部縦貫坊方トンネル工事」で、AI-ロードヘッダ MRH-S200iを使った自動掘削や遠隔掘削の試験が行われ、その有効性が確認されました。

AI-ロードヘッダ MRH-S200i
写真3:AI-ロードヘッダ MRH-S200i

この試験で得られた経験を活かし、掘り出した土砂を効率よく積み込むための機能(集土・排土機能)を追加した「積込み機能付きAI-ロードヘッダ MRH-S200Gi」(写真1)や、より大きくして作業範囲を広げた「AI-ロードヘッダ SLB-300Si」(写真2)が新たに開発され、工場での試験などが行われてきました。

そして今回、開発されたMRH-S200Giは「大分210号川下トンネル新設工事」に、SLB-300Siは「R5国道246号厚木秦野道路伊勢原第一トンネル工事」に導入され、新しい機能を含む作業の確認を目的とした長期実証試験が実施されることになりました。

新型AI-ロードヘッダの特徴と改良点

1. 積込み機能付きAI-ロードヘッダ MRH-S200Gi

MRH-S200Giは、機体の後ろに備えられたコンベヤを使って、掘削した土砂をダンプトラックに直接積み込むことができます。

MRH-S200Gi実証試験状況(集土)
写真4:MRH-S200Gi実証試験状況(集土)

MRH-S200Gi実証試験状況(排土)
写真5:MRH-S200Gi実証試験状況(排土)

2. AI-ロードヘッダ SLB-300Si

SLB-300Siは、パワーが上がっただけでなく、機体が大きくなったことで作業できる範囲が広がり、高速道路のトンネルなどで全断面を一度に掘削できるようになりました。

AI-ロードヘッダ大きさ比較
図1:AI-ロードヘッダ大きさ比較(手前MRH-S200i 奥SLB-300Si)

SLB-300Si実証試験状況
写真6:SLB-300Si実証試験状況

また、新型AI-ロードヘッダは、これまでの機種(MRH-S200i)と比べて、以下の機能が向上しています。

  • 自動運転機能
    AI-ロードヘッダが自身の位置と掘削する場所の位置を正確に把握し、切削ブームの先端にあるドラムがどう動くべきかを自動で計画することで、掘削作業を自動で行います。掘削中の負荷に合わせてドラムの速度を自動で調整し、機械が最適な動きをします。
    新型機では、現場でよく使われる計測システムを使うことで、短時間で自分の位置を正確に知ることができるようになりました。

  • 遠隔操作機能
    離れた場所から、AI-ロードヘッダの「移動」や「掘削」(MRH-S200Giでは「集土」「排土」も含む)といった一連の操作が可能です。AI-ロードヘッダの状況は、遠隔操作室のモニターや掘削アシストシステムを使ってリアルタイムで確認できます。
    前回の実証試験で得られた経験をもとに、トラブルが起きたときに画面にメッセージが出たり、警告音が鳴ったりするなど、さらに状況が分かりやすくなるよう改善されました。また、掘削アシストシステムでは、LiDAR(レーザー光を使った計測技術)で得られた周辺のデータを重ねて表示できるようになり、AI-ロードヘッダと掘削する場所の詳しい位置関係など、より実際の状況に近い形で確認できるようになりました。

掘削アシストシステム
図2:掘削アシストシステム

現場詰所に設置した遠隔操作ブース
写真7:現場詰所に設置した遠隔操作ブース

坑内移動式遠隔操作室
写真8:坑内移動式遠隔操作室

今後の展開

AI-ロードヘッダは、様々な種類をそろえることで、多様な現場の条件に合わせて使うことができます。今回の長期実証試験で得られた経験は、AIのさらなる進化に活かされ、機能の充実が目指されます。

安藤ハザマは、これからも自動化や無人化の技術開発を進め、山岳トンネル工事の安全性をさらに高め、生産性の向上に取り組んでいきます。

参考資料

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