能登のダム管理を遠隔で高度化！“空飛ぶ通信基地局”HAPS活用によるDX実証

能登のダム管理DXを高度化する実証実験が実施

NTTドコモビジネス株式会社、株式会社ミライト・ワン、国際航業株式会社の3社は、石川県能登にある小屋ダムを使い、非地上系ネットワーク（NTN）を活用したダム管理のデジタル変革（DX）高度化の実証実験を行いました。この実験は、「空飛ぶ通信基地局」と呼ばれるHAPSの利用を見据え、インフラ設備を遠隔で点検する新しい方法を作り出すことを目的としています。

実証実験の背景

能登半島地震では、広範囲で通信ができなくなったり、山間部にあるダムのような大切な施設が被災しても、すぐに状況を把握できなかったりする問題が明らかになりました。この課題に対応するため、NTTドコモグループが石川県と結んだ「災害からの復興・地域活性のための包括的連携協定」に基づき、「能登HAPSパートナープログラム」の一環として、今回の実証実験が行われました。

このプログラムは、HAPSや衛星通信といったNTNを使って、山間部や災害時でも通信が途切れないネットワークを活用した解決策を開発することを目指しています。

実証実験の内容

今回の実証実験では、NTTドコモビジネスが提供する「Starlink Business」と「Skydio 2+ドローン」、ミライト・ワンの「自営無線Wi-Fi HaLow」と「AIカメラ」、そして国際航業のGNSS自動変位計測サービス「shamen-net」を組み合わせました。

特に、「shamen-net」が持つ、最高約1～2mmというわずかな変位を24時間365日遠隔で監視できる高精度なGNSS計測解析技術と、NTNの災害時にも途切れない通信環境を組み合わせることで、人が近づきにくいダム施設の点検や、普段の維持管理をより高度に、そして少ない人数で行うためのダム管理DX手法の有効性が確認されました。

各社の役割

• NTTドコモビジネス: Starlink Businessによる衛星通信の提供、Skydio2+ドローンによるダムの遠隔監視を担当しました。

• 国際航業: GNSS計測センサーによる変位監視、ドローンで撮影した画像のAIによる判読を行いました。

• ミライト・ワン: 自営無線Wi-Fi HaLowの構築、人物検知AIカメラの運用を担当しました。

今後の取り組み

今回の実証実験で得られた知識や成果は、能登地域のような山間部での通信確保や、地域のインフラ維持管理をより良くすることに役立つだけでなく、総務省が進める「デジタルインフラ整備計画2030」が目指す、通信インフラを強くすることやHAPSを社会で実際に使うことにも貢献するものです。

今後3社は、今回の実証実験で確立したダム管理DXの手法に、地上からの監視カメラや、宇宙からのSAR衛星（合成開口レーダ）を加えた、次世代の通信技術を使ったインフラモニタリングサービスを一つのパッケージとして提供し、社会での実用化を早めていく計画です。これにより、全国のインフラ維持管理をより高度に、そして少ない人数でできるようにするための共同事業を進めていきます。

用語解説

• HAPS: High Altitude Platform Stationの略で、地上から約20kmの成層圏に浮かぶ無人航空機などを使い、広い範囲に無線通信サービスを提供するシステムです。

• NTN: Non-Terrestrial Networkの略で、人工衛星や無人航空機（ドローン）などを使い、地上以外から広い範囲にネットワークを提供する技術です。

• GNSS: 人工衛星から送られる信号を使って、自分の位置などを測る技術です。

• SAR衛星: 合成開口レーダー衛星のことで、地球の表面情報を画像にするリモートセンシング衛星です。