ネットアップとNTT、遠く離れた場所のAI計算で電力効率を大幅改善
ネットアップ合同会社とNTT株式会社は、共同で実施した概念実証実験(PoC)の完了を発表しました。この実験では、遠く離れた場所にあるGPU(画像処理装置)を使ってAIをトレーニングする際、AIの学習時間にほとんど影響を与えずに実行できることを確認しました。これにより、大規模なAIトレーニング環境で使われるエネルギーを効率良く改善できることが示されました。
さらに、IOWN Global Forumが提唱するオールフォトニクス・ネットワーク(APN)技術とNetAppのストレージ最適化技術を組み合わせることで、データ転送の性能をこれまでの12倍に高めることに成功しました。その結果、再生可能エネルギーで動く遠隔のGPUリソースを効率良く利用できるようになり、最大で30%の電力使用効率化が実現できることも確認されています。
AI需要の増加とサステナブルな計算環境の必要性
生成AIや大規模言語モデル(LLM)が急速に広まる中で、企業はたくさんのデータを効率良くつなぎ、活用してAIシステムを作る必要性が高まっています。しかし、AIの計算に必要なGPUは高価で多くの電力を消費します。都市部では電力の値段が上がったり、二酸化炭素の排出量を減らすことが緊急の課題となっています。そのため、再生可能エネルギーが豊富で電力効率の良い地域にGPUを集め、AIを遠隔で利用する取り組みが注目されています。
これまで、遠隔のGPUを使うと、データが届くまでの遅れ(遅延)が原因でAIの学習速度が落ちてしまうという問題がありました。これが本格的な普及の妨げとなっていました。今回の実証実験では、この問題を解決するため、APNによる遅延が少なくデータの損失がない通信と、NetAppのストレージ最適化技術を組み合わせて、その実現性を検証しました。
実験の概要と主な成果
この実証実験では、NTTが開発したLLM「tsuzumi軽量版」を使用し、100kmから3000kmまでの距離を想定した環境でAIトレーニングが行われました。APNとRDMA(Remote Direct Memory Access)を組み合わせることで、従来のネットワークで発生する遅延やデータの損失という課題を解消しました。さらに、キャッシュやレプリケーションなど、いくつかのデータアクセス方法を比較し、遠隔GPUを使う上で最も良いシステム構成を評価しました。
主な実験成果
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3,000km離れても性能の劣化は1%未満
遠隔のGPUを使ったAIトレーニング環境と、同じデータセンター内にある環境を比べたところ、トレーニング時間の増加を1%未満に抑えられました。これは目標値(10%未満)を大きく下回り、距離や場所に関係なくGPUを利用できる可能性を示しています。 -
データ転送性能が最大12倍に向上
APNの遅延が少なくデータの損失がない特性に、NetAppのデータアクセス最適化技術を組み合わせた結果、長距離条件下でのデータ転送性能が従来のIP-VPN接続に比べて最大で約12倍に向上しました。これにより、トレーニングに必要な大量のデータを読み込む速度が大幅に速くなります。 -
大幅な電力使用効率化を達成
再生可能エネルギーの割合が高い地域にGPUを配置することで、電力効率が改善され、特定のモデルケースでは、同じ場所での接続と比べて最大で30%の電力使用効率化が可能であることが明らかになりました。


関係者のコメント
ネットアップ合同会社の代表執行役員社長である斉藤 千春氏は、NTTとの協業により、IOWN APNとNetAppのデータ管理技術を組み合わせることで、遠隔地に置かれたGPUを都市部と同じくらいの性能で活用できることを実証できた喜びを述べました。また、AI開発における電力消費と二酸化炭素排出量の削減は、すべての企業にとって重要な課題であり、今回の成果が持続可能なAIインフラの実現に向けた大きな一歩であると語りました。
NTT株式会社 IOWNプロダクトデザインセンタのセンター長である渡辺 真太郎氏は、AIの高度化と環境への負担軽減を両立できる次世代AIコンピューティング基盤の開発を目指していると述べました。今回の実証を通じて、電力使用効率化とGPU利用の柔軟性を同時に実現できる可能性を示せたことは、今後のお客様企業のAI活用において大きな意味があると考えているとコメントしました。
実証の意義と今後の展望
今回の実証実験により、遠く離れた地域にあるグリーンデータセンターを、都市部と同じ感覚でAI開発に活用できる可能性が示されました。企業は、電力コストの削減、二酸化炭素排出量の抑制、そして持続可能性への対応強化を同時に実現できるようになります。
今後、NetAppとNTTは以下の分野への応用を広げていく予定です。
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テラバイト規模の画像・映像データを扱うAIワークロード
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数百~数千のGPUを使った大規模な分散学習
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企業のAI研究開発における最適なデータセンター配置の検討
NetAppは、今回の成果を元に、持続可能な社会を支えるグリーンAIプラットフォームの実現をさらに加速していく方針です。
関連情報
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Green Computing with Remote GPU over APN (tsuzumi-7B) – IOWN Global Forum: <https://iowngf.org/green-computing-with-remote-gpu-over-apn-tsuzumi-7b/>
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NetAppについて: <https://www.netapp.com/ja/>


