ネクスコ・エンジニアリング北海道、ドローン「IBIS2」導入で橋梁点検の夜間通行止め作業を約4割削減

株式会社Liberaware(リベラウェア)は、株式会社ネクスコ・エンジニアリング北海道に、点検用ドローン「IBIS2(アイビスツー)」を導入しました。この導入により、高速道路の橋梁(きょうりょう)の詳細点検において、夜間通行止めで行う作業を約4割削減することに成功しています。

NEXCOの作業員とドローン

IBIS2導入の背景

NEXCO東日本が管理する高速道路の橋梁は、法律で5年に1回以上の点検が義務付けられています。北海道内には800近い橋があり、ネクスコ・エンジニアリング北海道がこれらの橋の保守点検を担っています。

従来の橋梁点検では、橋梁点検車という特別な車両を橋の上に停め、そこから伸びる長いアームの先に点検員が乗って、橋桁(はしげた)や橋脚(きょうきゃく)を目で確認したり、叩いて音を聞いたり、手で触ったりして点検していました。この作業中は、橋梁点検車が道路をふさぐため、車線規制や通行止めが必要となります。

橋梁点検車

特に北海道の高速道路には、片側1車線の対面通行区間が多く、このような場所での点検作業は夜間の通行止めが必要でした。通行止めの時間は、利用者の交通への影響を最小限にするため、夜10時から翌朝5時頃までに限られており、この短い時間内で点検を終える必要がありました。

しかし、将来的に少子高齢化が進むと、点検作業に携わる人が減るため、一度に多くの人手が必要な大規模な点検作業は難しくなります。そこでネクスコ・エンジニアリング北海道は、ドローンを使った橋の点検など、新しい技術を積極的に取り入れるようになりました。

同社では2023年頃からドローンを試験的に導入しましたが、一般的な小型ドローンでは入れない狭い場所があり、結局人が入って点検していました。例えば、中空床版橋(ちゅうくうしょうばんきょう)という橋の支えの部分(支承部)は、わずか20cmほどの隙間しかない場所もあり、人がヘルメットを挟みながら潜り込んで点検するのは大きな負担でした。このような狭い場所を人が点検する限り、橋梁点検車も使わざるを得ず、道路の規制をなくすことはできませんでした。

IBIS2導入による成果

様々なドローンを検討する中で、ネクスコ・エンジニアリング北海道が見つけたのがIBISです。展示会で障害物にぶつかっても飛び続け、狭い場所に入っていく姿を見て、「これだ」と感じたといいます。

IBIS-Aを持つ男性

ネクスコ・エンジニアリング北海道は、IBIS2をレンタルで導入し、高速道路橋の点検に活用しています。特に、人が入るのが困難な中空床版端部の狭い場所や、密閉された箱桁(はこげた)の内部、そして高速道路の下を通る水路ボックスの点検でIBIS2が使われています。

この導入によって、以下のような効果が得られました。

  • 夜間通行止め作業を年間約4割削減
    IBIS2を含むドローン点検の導入により、年間で夜間通行止めが必要な作業日数を38%(7日間)減らすことができました。これにより、夜間通行止めを必要としないドローン点検を日中に行うことが可能となり、道路利用者への交通影響を減らしながら、安全で効率的な点検が実現できています。

  • 作業員の負担軽減と安全確保
    人が入るのが難しかった狭い中空床版端部では、点検員の身体的な負担が減りました。また、密閉された箱桁内部の点検では酸欠事故の危険がありましたが、IBIS2が代わりに行うことで点検員の安全を守ることができます。水路ボックスの点検では、点検員がボートに乗って作業する際に座礁や転覆の危険がありましたが、IBIS2が飛行して点検することで、これらの事故を防ぐことも可能です。

    橋梁下部のドローン点検

    閉鎖空間で飛行するIBIS2

  • 風の中でも安定した飛行と訓練
    IBIS2は主に屋内の狭い空間での飛行を想定して作られていますが、高速道路の点検では屋外で飛行させることもあります。ネクスコ・エンジニアリング北海道の保守担当者4人がIBIS2の訓練を開始し、わずか4日間で「天井裏を飛行できるまでになった」といいます。現在は7人がIBIS2を操作でき、会議室に扇風機を置いて風速3メートル毎秒の環境でも安定して飛行させる訓練を重ねています。

    会議室の訓練風景

    このIBISを使った橋梁点検の取り組みは、ネクスコ・エンジニアリング北海道が毎年開催する業務改善研究発表会で最優秀賞を受賞しました。NEXCOグループの点検支援技術に関する会議でも注目され、他のグループ企業が技術を学びに来るようになったとのことです。

    ワークショップ風景

  • 点検精度の向上と今後の可能性
    IBIS2の高解像度カメラで撮影した映像を後でじっくり確認することで、損傷の見落としを減らすことができます。現在は映像を後で確認する方法が取られていますが、将来的には現場でドローンからの映像を見ながらその場で損傷の有無を判断する手法も試されています。

    NEXCO東日本グループは、少子高齢化による人手不足や技術者の世代交代といった課題に対し、ICTやロボット、AIなどの技術を活用して乗り越える「スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)」という取り組みを進めています。IBIS2の活用は、この取り組みにも貢献しています。

    今後、IBIS2は橋梁だけでなく、高速道路の関連施設や配電設備、天井裏、トンネルの避難抗など、人が入りにくい様々な場所の点検にも活用されていく可能性があります。

株式会社Liberawareについて

株式会社Liberawareは、「誰もが安全な社会を作る」をミッションに掲げ、世界でも珍しい「狭くて、暗くて、危険な」屋内空間の点検・計測に特化した世界最小級のドローンを開発しています。また、このドローンで集めた画像データを解析し、顧客にインフラ点検・維持管理ソリューションを提供しています。同社は「見えないリスクを可視化する」ことを通じて、安全な社会の実現を目指しています。

×