ソフトバンクとエリクソン、ロボットのAIを支える高速・高信頼な通信技術を実証

ソフトバンク株式会社とエリクソンは、ロボットの高度な判断や動作を可能にする「フィジカルAI」に必要な、低遅延で信頼性の高い通信ネットワークの実現に向けた実証実験に成功したことを発表しました。

フィジカルAIとは?

フィジカルAIとは、ロボットがセンサーやカメラ、外部のシステムから得た情報をAI(人工知能)で分析し、その結果に基づいて柔軟で複雑な動きができるようにする技術です。これにより、ロボットは周囲の状況を正確に把握し、より賢く動けるようになります。

ロボットのAI処理における課題

近年、フィジカルAIへの注目が高まっていますが、ロボットが高度な判断をするために必要なAI処理は、状況によって計算量が大きく変わります。そのため、ロボットに搭載されているコンピューターだけでは、十分な処理能力が足りなくなることがあります。

また、AI処理を外部のコンピューターに任せる場合、通信ネットワークを通じてデータをやり取りする必要があります。このとき、通信が遅れたり、途切れたりしないように、低遅延で信頼性の高い通信を確保することが重要です。しかし、従来のネットワークでは、AI処理と無線通信(RAN)の制御が別々に設計されており、外部のコンピューターと連携して柔軟にロボットを動かすことが難しいという課題がありました。

実証実験の具体的な内容と成果

ソフトバンクとエリクソンは、これらの課題を解決するため、ソフトバンクが開発中のAI-RANのMEC(Multi-access Edge Computing)基盤と、エリクソンの5Gネットワークの技術を組み合わせました。これにより、ロボットと通信ネットワーク、外部のコンピューターを一体的に連携・制御できる仕組みを構築しました。

この仕組みでは、ロボットの状況や処理の負荷に応じて、AI処理をロボット単体で行うか、MEC基盤にオフロード(外部のコンピューターに任せる)するかを自動で切り替えます。さらに、エリクソンのネットワーク機能を使って、アプリケーションごとに必要な通信の速さや信頼性に合わせてネットワークを最適化する「差別化された接続」を実現しました。

ロボットのAI処理におけるシステム構成の比較

この結果、軽いAI処理はロボット単体で行い、高度な判断が必要な場合はMEC基盤に処理をオフロードすることで、ロボットがより柔軟で高度な動作を実現できることが確認されました。これにより、以下のような安定したフィジカルAIの運用が可能になります。

  • 計算資源の動的な制御と最適化: ロボットの動きや処理の複雑さに応じてAI処理をMEC基盤にオフロードすることで、ロボットの効率的な運用が可能になります。これにより、ロボットは必要なときに外部の計算資源を活用でき、より柔軟な動作、高度なタスク実行、バッテリー使用の最適化、デバイスの計算負荷軽減を実現できます。

  • 低遅延・高信頼な接続性: ネットワークスライシングや優先制御といった「差別化された接続」によって、ロボットの制御やAI処理のオフロードに必要なネットワークが最適化されます。これにより、AI処理や制御信号に対して、低遅延で信頼性の高い適切なネットワーク性能が確保されます。

今後の展望

ソフトバンクとエリクソンは、今後も協力してAI-RANの取り組みを進め、製造業や物流、インフラの保守といった分野でのフィジカルAIの導入に必要なネットワークの設計を進めていきます。今回の実証実験で、差別化された接続とAI処理の動的なオフロードが実現可能であることを示したことは、フィジカルAIを広く社会に導入するための重要な一歩となります。両社はこれからも、AIを活用したサービスを支える次世代ネットワークの技術を進化させ、あらゆる産業でAIが活用される社会の実現を目指します。

ソフトバンクの執行役員 兼 先端技術研究所 所長である湧川隆次氏は、「社会課題の解決に向けて、通信インフラの役割を進化させるAI-RAN技術やMEC基盤を活用したリアルタイム処理技術の開発を進めてきました。今回の仕組みと、低遅延かつ高信頼なネットワークのさらなる高度化を通じて、より柔軟で高度な判断が可能なフィジカルAIの実現を目指します」と述べています。

エリクソン・ジャパン株式会社の代表取締役社長であるジャワッド・マンスール氏は、「ロボティクスのようなフィジカルAIアプリケーションには、変化する計算や接続の要求にリアルタイムで適応できるネットワークが求められます。ソフトバンクの技術とエリクソンの差別化された接続の活用により、AI処理をエッジインフラ全体で動的にオフロードし、支えることが可能であることを実証しました。これにより、エリクソンのネットワークに期待される性能と信頼性を維持しながら、無線アクセスネットワーク(RAN)上で新たなAIドリブンなサービスの創出を可能にします」と述べています。

エリクソンについて

エリクソンは、高性能なネットワークを通じて世界中の人々にコネクティビティを提供しています。150年以上にわたり通信技術開発のパイオニアとして、通信事業者や企業にモバイル通信とコネクティビティのソリューションを提供しています。

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