九電ドローンサービスとリベラウェアが語る「ドローンが創る新たな社会インフラ」イベントレポート
「ドローンの日」に未来を語るイベント開催
2025年12月10日は、国内法で初めて「無人航空機」が明確に定義されてからちょうど10年となる「ドローンの日」でした。この記念すべき日に、九電ドローンサービス株式会社(以下、QDS)と株式会社Liberaware(以下、リベラウェア)は、CIC福岡で共催イベント「Next Flight 2035 ─ ドローンが創る新たなインフラ社会」を開催しました。
このイベントでは、社会インフラの老朽化が喫緊の課題となる中、ドローンがその維持管理にどのような革新をもたらすかについて議論されました。

九州電力とリベラウェアが資本業務提携
イベントでは、九州電力株式会社とリベラウェアが資本業務提携に合意したことが発表されました。この提携は、九州電力が持つ発電所などの設備を活用し、ドローン機体やソフトウェアの共同開発を進めることで、電力設備を含む社会インフラのDX化とドローンの社会実装を加速させることを目的としています。
また、QDSはリベラウェアと販売代理店「Gold Partner」契約を結び、九州エリアにおける狭小空間点検ドローン「IBIS2」の利用拡大を目指していくことも明らかにされました。
各社プレゼンテーションで具体的な取り組みを紹介
イベントでは、両社の代表者によるプレゼンテーションが行われました。
九電ドローンサービス 本田氏の挑戦
QDSの本田氏は、主に3つの挑戦について語りました。
- 下水道点検: 2025年4月頃からリベラウェアと共同で九州域内の自治体へ提案し、従来の目視点検では難しかった箇所の詳細な映像取得を実現しています。
- 屋外自動巡回・点検: ユースケースを増やし、現場作業の省人化に効果的なツールとして導入を推進していく方針です。
- ドローン×AIサービス: ドローンで取得した画像をAI解析システムと組み合わせることで、枯れ木の検知を実現し、広域調査の省力化や倒木事故の未然防止に貢献したいと述べました。

QDSは今後も優れたドローン・ロボット技術をもとに、地域社会の課題を解決し、未来を創っていきたいと語りました。
リベラウェア 閔氏の展望
リベラウェアの閔氏は、福島第一原子力発電所の格納容器内部調査や埼玉県八潮市の道路陥没事故における下水管調査など、有事の際にも貢献してきた実績を紹介しました。

これからは、社会インフラの可視データを蓄積する「データづくり」から、そのデータを活用した「街づくり」へと進んでいきたいという展望を述べました。
ドローンジャーナル編集長を交えたトークセッション
株式会社インプレス「ドローンジャーナル」編集長の河野大助氏をモデレーターに迎え、両社の社長によるトークセッションが実施されました。

ドローンが今「必要とされている理由」
QDSの本田氏は、労働人口の減少、自然災害の多さ、離島の多さといった日本の課題を挙げました。また、半導体・自動車産業の工場進出拡大に伴うドローンやロボットによる点検ニーズの増加、そしてドローン・ロボット・AI活用による新産業での雇用創出の必要性も指摘しました。
「IBIS2」の優れた点と課題
本田氏は「IBIS2」の優れた点として、GPSが届かない屋内空間でも安定した操作が可能であること、国産ドローンメーカーであるため修理対応が早く、運用上の安心感があること、そして故障時の無償修理対応を挙げました。
一方で、IBIS2では進入できないさらに狭い空間の点検を可能にする「さらなる小型化」、そしてGPSが届かない場所でも自動巡回が可能なドローンの実現に期待を寄せました。
今後のドローンの展望
本田氏は、人がドローンを操縦して点検する時代から、ドローンが人を介さずに点検できる世界を目指したいと語りました。
閔氏は、お掃除ロボットのようにドローンもさらに社会に普及し、「気づいたらドローンが実装されている」時代が来るだろうと述べました。
資本業務提携とGold Partner契約の意義
本田氏は、各社の技術・ノウハウを融合し、より高度で安心・安全な社会インフラの維持管理の実現を目指すとともに、IBIS2の販売から現場サポートまでをワンストップで提供していくと述べました。
閔氏は、日々の生活を支える現場で尽力されている方々の力となり、負担を少しでも減らせる存在でありたいと語りました。
狭小空間点検ドローン「IBIS2」のデモフライト
イベントでは、リベラウェアの専属パイロットによる「IBIS2」のデモフライトも行われました。天井裏を想定したスペースで、IBIS2がリアルタイムで点検を行う様子が披露されました。

九州電力とリベラウェアの資本業務提携が目指すもの
この資本業務提携は、「社会の安全を支える」という共通の価値観のもと、電力設備を含む社会インフラのDX化とドローンの社会実装を加速させることを目的としています。
九州電力の電力インフラ点検に関する知見・ノウハウと、リベラウェアのドローン・AI解析技術を融合することで、より高度で安全・安心なインフラ維持管理を実現するための新たなソリューション開発と社会実装が加速されます。
具体的な取り組みとして、以下の点が挙げられています。
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九州地域を中心とした電力インフラ設備点検の協働および持続可能なインフラ維持管理モデルの構築
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ドローンやロボット等を活用した電力事業の点検・保守の高度化
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デジタルツインの点検・保守・管理領域における利活用の促進
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電力設備点検(屋内等)に特化したハードウェア・ソフトウェアサービスの共同開発
両社はこれらの取り組みを通じて、災害対応やインフラのレジリエンス(強靭性)向上など、幅広い社会課題の解決に貢献し、「次世代の安全インフラのかたち」を九州から全国、そして世界へと発信していくことを目指します。
QDSが「Gold Partner」としてIBIS2の利用拡大を推進
QDSとリベラウェアはこれまでも、IBIS2を活用した下水道設備の調査や、インフラ設備の安全・効率的な点検に向けた画像処理技術の検証、機体開発時の共同実証など、多方面で連携を進めてきました。
「Gold Partner」契約の締結により、QDSは九州エリアをはじめとした自治体やインフラ点検事業者への提案活動をさらに強化し、IBIS2を活用した次世代の点検ソリューションの普及を促進します。
QDSは、長年培ってきたインフラ点検の知見・ノウハウと高度なドローン操縦技術を活かし、IBIS2の販売から現場サポートまでをワンストップで提供します。また、ドローンで取得した画像データとリベラウェアが提供するソフトウェア(AI解析や画像処理技術など)を組み合わせることで、設備点検の省人化・高度化を実現していきます。
今後の展望
QDSおよびリベラウェアは、今回のイベントをきっかけに、さらに協業を深め、社会インフラの点検・維持管理分野における新たな価値創造を進めていく方針です。特に、九州エリアでのドローン実装の加速、全国の自治体や民間企業との連携拡大、そしてグローバル展開の推進を重点的に行い、社会インフラ管理の未来像の実現を目指していきます。
九電ドローンサービス株式会社について
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会社名:九電ドローンサービス株式会社
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代表取締役社長:本田 健一
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所在地:福岡県福岡市中央区渡辺通2-1-82
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設立:2024年4月1日
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事業内容:ドローンに関する事業、機体や機材の開発、販売、レンタル及び保守ほか
株式会社Liberawareについて
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会社名:株式会社Liberaware(リベラウェア)
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代表者:閔弘圭(ミン・ホンキュ)
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所在地:千葉県千葉市中央区中央3-3-1
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設立:2016年8月22日
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事業内容:ドローン事業、デジタルツイン事業、ソリューション開発事業
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Xアカウント:https://x.com/liberaware


