ネットワンシステムズとNTT西日本、IOWN APNを活用した分散データセンターでの次世代オートメーション学習・推論実験に成功
ネットワンシステムズとNTT西日本は、低遅延・大容量・高安定性が特徴の「IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(IOWN APN)」を活用した次世代オートメーションの実証実験に成功しました。この実験を通じて、AIのモデル学習における分散データセンターの有効性や、遠隔からの自律型協働ロボットの推論動作、そして様々な会社の機器をIOWN APNに接続できることなどが確認されました。これは、人手不足といった社会課題の解決に向けた次世代オートメーションの実現に大きく貢献する成果です。
背景と目的
日本では、小売、製造、医療といった様々な分野で人手不足が深刻化しています。この問題に対応するため、AIを搭載した協働ロボットや、自律的に動く技術を使った次世代オートメーションへの期待が高まっています。
しかし、これらの高度なシステムは、大量のセンサーデータや高画質な映像・音声をリアルタイムで処理する必要があります。従来のネットワーク環境では、データが届くまでの遅れ(遅延)や、一度に送れるデータの量(帯域)が足りず、高性能なコンピューター(GPUなど)をそれぞれの場所に置かざるを得ませんでした。これは、管理の手間や電気代、コストが増える原因となっていました。
今回の実証実験は、IOWN APNの「遅延が少なく、たくさんのデータを送れる、安定した」という特徴と、AIの処理を複数のコンピューターに分散させる「分散クラスタ型AI基盤」を組み合わせることで、次世代オートメーションのリアルタイム制御が可能になるかを確かめる目的で行われました。
本実証の概要
NTT西日本が提供するIOWN APNの実証環境を使い、大阪の京橋、堂島、そして福岡の3つの拠点をネットワークで繋ぎました。この分散されたデータセンターでAI処理を行うシステム構成で実験が行われました。このシステム上で、ロボットの動きをAIに学習させる「模倣学習」と、学習したAIを使ってロボットを動かす「自律型協働ロボットの遠隔推論」の実験を実施しました。
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実施期間:2025年8月27日~2025年11月18日
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実施場所:大阪府大阪市、福岡県福岡市
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役割分担:
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ネットワンシステムズ:分散クラスタ型AI基盤とIOWN APNを統合する設計や、機能・性能の検証、新しい使い方やビジネスモデルの検討を担当しました。
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NTT西日本:IOWN APNに関する3拠点の実証環境の構築と提供、使い方やビジネスモデルの検討を担当しました。
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本実証の成果
今回の実証実験では、大阪京橋、堂島、福岡の3拠点をIOWN APNで繋いだ分散データセンター環境において、自律型協働ロボットの模倣動作によるモデル学習と遠隔での推論動作に成功しました。
この取り組みは、AIの処理負荷を分散データセンターで管理・制御する新しいシステム構成が、人手不足などの社会課題を解決する次世代オートメーションの実現に有効であることを確認したものです。これにより、実際に社会で使えるようになる可能性が大きく高まりました。
主な成果:
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自律型協働ロボットの模倣動作によるモデル学習における分散データセンターの有効性の確認
約600km離れた拠点を含む3つの拠点のGPU(AI計算用の部品)を活用した分散学習において、ネットワークの遅延を考慮した調整を行った結果、ローカルのデータセンター環境と比べて約86.0%の処理能力を達成しました(学習にかかる時間は約1.17倍)。この結果から、自律型協働ロボットの模倣学習において、離れたデータセンター間でも複数のGPUを同時に利用し、GPU資源を効率的に活用できる可能性が確認されました。
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IOWN APNによる遠隔からの自律型協働ロボットの推論動作への影響確認
IOWN APNを経由し、福岡のデータセンターに置かれた学習済みAIモデルを使って、約600km離れた大阪京橋に設置した自律型協働ロボットの推論動作を実行できることを確認しました。ロボットの推論処理は、カメラ映像をデータセンターに送り、処理結果を受け取る仕組みのため、ネットワークの帯域と遅延が、ロボットが単位時間あたりに推論を行う回数(推論頻度)に直接影響します。以下の3つの環境で比較検証を行いました。拠点 距離 遅延 推論頻度 動作状況 (ⅰ) 大阪京橋 - 0ms 18.2回/秒 正常動作 (ⅱ) 福岡 約600km 6ms 8.7回/秒 正常動作 (ⅲ) インターネット疑似環境 - 40ms 3.5回/秒 動作のガク付き、タスク失敗が発生 推論頻度の低下は、データ伝送の遅延による影響であり、一定以下の頻度になると正常な動作が難しくなることが分かりました。今回の結果では、IOWN APNを使えば約600km離れた環境でもロボットの推論動作が安定して実行可能であることが確認されています。今後は、ロボット固有の要因も考慮しながら、ネットワーク遅延が正常動作に与える影響の限界値を見定めていくとのことです。

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OpenZRを用いたマルチベンダーデバイスによるAPN接続の実現
今回の実証環境において、HPE(旧Juniper Networks)社とアリスタネットワークス社の機器を使い、IOWN APNと様々な会社の機器を接続することにも成功しました。これにより、IOWN APNを導入する際に、利用者の多様なニーズに対応できる、より柔軟な実装方法が選べるようになる可能性が広がりました。- 参照:ネットワンシステムズとNTT西日本、IOWN APNを活用した次世代オートメーションの共同実験を開始
<https://www.ntt-west.co.jp/news/2508/250827a.html>
- 参照:ネットワンシステムズとNTT西日本、IOWN APNを活用した次世代オートメーションの共同実験を開始
今後の展望
今回の実証実験を通じて、小売、製造、医療、社会インフラなど、それぞれの分野が抱える社会課題に対し、AIとロボット、そしてIOWN APNを組み合わせた自動化がどのように役立つかを検証できました。
例えば、将来的には熟練した人の操作をAIに学習させることで、数百キロメートル離れた場所でもロボットが作業を担うといった活用が考えられます。これにより、人手不足への対応や作業の効率化、コスト削減といった効果が期待されるでしょう。
NTT西日本とネットワンシステムズは、今回の成果をもとに、低遅延、大容量、揺らぎのない通信を実現するIOWN APNと分散クラスタ型AI基盤の統合設計を進めていくとのことです。これにより、素早い反応と拡張性を両立する次世代の自動化システムによるリアルタイムなロボット制御を実現し、労働人口減少などの社会課題解決に向けた具体的な活用例の検証やビジネスモデルの検討を行っていくとしています。
両社は、社会課題解決に向けて、今後も様々な実証実験や試み、そして実用化に向けた検討を推進していくとしています。また、この取り組みを共に進めるパートナーも募集しているとのことです。
マルチベンダーデバイス接続の検証にご協力いただいた企業からのコメント
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日本ヒューレット・パッカード合同会社 執行役員 HPE Networking 事業統括本部長 本田 昌和 様
今回の実証実験において、ネットワンシステムズ社およびNTT西日本社と提携できたことを光栄に思います。HPEが提供する技術は、現在の、そして未来の社会課題を解決するための新しい可能性を広げるものです。両社との連携を一層強化し、社会課題の解決に貢献します。 -
アリスタネットワークスジャパン合同会社 代表社員 職務執行者 社長 稲富 裕樹 様
ネットワンシステムズ社およびNTT西日本社による本実証実験の成功を心より歓迎します。本実証において、当社の技術を用いたマルチベンダー環境でのIOWN APN接続が実証されたことは、オープンで柔軟な次世代ネットワークの実現に向けた重要な成果です。今後もアリスタは、高性能かつ拡張性の高いネットワーク技術を通じ、社会課題解決に貢献してまいります。


