愛知県新城市でドローンを活用した「新スマート物流」の長期事業化調査が開始

愛知県新城市において、物流ドローンを活用した「新スマート物流」の長期事業化に向けた調査が開始されました。この取り組みは、愛知県、新城市、株式会社NEXT DELIVERY、株式会社グリーンサービス、株式会社Prodrone、セイノーホールディングス株式会社、愛知東農業協同組合が連携して進めるものです。

本実証実験は、ドローンや空飛ぶクルマといった次世代のモビリティを社会で広く使えるようにすることを目指す「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」の一環として実施されます。複数の荷主の商品を集めて同じ場所に配送する「荷物の集約化」と、迅速な配送やコスト削減が期待される「ドローン物流」を組み合わせた「新スマート物流」の導入可能性を検討することが目的です。

「新スマート物流」とは、物流業界が抱える人手不足や環境問題、デジタル技術への対応といった課題を解決し、人々の生活に欠かせない物流を将来にわたって持続可能にするための取り組みです。特に地域の物流を効率化し、地域社会の課題解決を進めることを目指しています。

陸送と空送を組み合わせたラストワンマイル配送の検証

実証実験の背景と目的

愛知県は2023年5月、「あいちモビリティイノベーションプロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトでは、ドローンや空飛ぶクルマといった次世代の空のモビリティを社会で広く使えるようにすることに加え、自動運転車などの陸のモビリティと合わせて新しい社会「愛知モデル」を作り、次世代の空のモビリティを愛知県の中心となる産業にすることを目指しています。

2024年2月に作られた「推進プラン」では、2026年度頃を目標に、河川や離島を結ぶ物流サービスの実現を掲げています。2024年度には新城市の鳳来地域でドローンを使った配送サービスを約1か月間提供する実証実験が行われ、ドローンの運べる荷物の重さの制限や、着陸後の荷物の受け渡し、料金の徴収方法などが課題として見つかりました。

今回の調査では、これらの課題を解決するための方法で実証実験を行い、住民の皆さんのニーズに合った内容にすることで、より実用的な事例を作ることを目指しています。

屋外でのプレゼンテーション

実証実験の概要

今回の実証実験は、2025年11月17日(月)から12月19日(金)までの約1か月間を予定しています。1日最大5便の飛行が計画されています(天候による影響がない場合)。

使用する機体は、物流専用ドローン「PD4B-M-AN」と「AirTruck」の2種類です。特に「PD4B-M-AN」は、ProdroneとNEXT DELIVERYの親会社であるエアロネクストが共同開発した新型機体で、今回が初めての実地飛行となります。

ドローンの運航は、NEXT DELIVERYが山梨県小菅村から遠隔で管理し、現地での機体の管理や補助業務はグリーンサービスが担当します。両社が協力し、自動で遠隔運航を行います。

具体的な取り組みとして、様々な荷物を集める拠点「ドローンデポ®」がAコープ作手店の敷地内に設置されます。AコープのECストアで注文された約100種類の品物を、トラックまたはドローンで配送します。

ドローンデポで荷物を準備する作業員

各社の役割

  • 愛知県: プロジェクトの全体を管理する役割

  • 新城市: 実証実験を行う場所の提供と地域との調整

  • NEXT DELIVERY: ドローンの遠隔運航と全体の管理

  • グリーンサービス: 現地でのドローン運航と対応全般

  • Prodrone: 物流専用ドローン「PD4B-M-AN」の提供

  • セイノーホールディングス株式会社: 新スマート物流における共同配送や物流の集約方法の検討

  • 愛知東農業協同組合: 小売りの機能と「ドローンデポ®」の場所の提供

大型ドローンに荷物を積み込む様子

報道関係者への公開

2025年11月28日に行われた報道関係者向けの公開では、Aコープ作手店の敷地内にある「ドローンデポ®」に、セイノーHDの協力会社である株式会社愛設運送が荷物(宅配便を想定したダミー)を陸送で届けました。その荷物の一つと、同じ配送先のAコープの注文品をドローンに一緒に積んで配送しました。

ドローンは、NEXT DELIVERYが山梨県小菅村から遠隔で操縦し、現地の補助業務はグリーンサービスが行いました。Aコープ作手店から約5.6km離れた田代老人憩の家まで約13分で運航し、荷物は置き配の形で届けられました。車で同じ場所に行くには、カーブの多い山道を通るため約25分かかります。

Aコープの店舗前で飛行するドローン

荷物を受け取った地域住民の竹下勝之さんは、「大雨が降ると土砂災害で道が通れなくなり、孤立する場所なので、ドローンで食料品や医療品などを運んでもらえると助かります」とコメントしました。

SkyHubの箱を持つ男性

今後の展望

今後も、地域住民の皆さんの理解を深め、地域の課題解決に貢献することを目指し、ドローンをはじめとする新しい高度な技術を活用したドローン配送と陸上輸送を組み合わせた「新スマート物流」が地域で広く使われるようになるための検討が進められます。

関連情報

新城市について

新城市は、地域の未来を支える新しい産業を作り、山間地域が抱える課題を解決するため、2020年8月には隣の豊川市や関係団体・民間企業とともに「東三河ドローン・リバー構想推進協議会」を発足させました。行政と民間が協力し、ドローンを社会で広く使えるようにする取り組みを進めています。物流、災害対応、作業の省力化といった様々な課題に対し、ドローンの可能性を追求しています。
東三河ドローン・リバー構想推進協議会の概要は、こちらをご覧ください。
https://hdrc.jp

株式会社NEXT DELIVERYについて

株式会社NEXT DELIVERYは、エアロネクストグループの子会社として、2021年に山梨県小菅村に設立されました。ドローン配送を主な事業としています。エアロネクストとセイノーホールディングスが共同で開発・展開する「SkyHub®」という新しい社会インフラの企画運営や全国展開を進めています。共同配送やドローン配送に関するハードウェア・ソフトウェアの開発、販売、運用、保守なども行っています。山梨県小菅村をはじめ、全国各地で地域の物流効率化と地域社会の課題解決に取り組んでいます。
会社概要は、こちらをご覧ください。
https://nextdelivery.aeronext.co.jp/

株式会社グリーンサービスについて

株式会社グリーンサービスは、1993年に医薬品物流を専門とする会社として設立されました。近年は、ドローンを活用した次世代物流の導入に特に力を入れています。医薬品配送には「正確性」や「温度管理」といった高い専門性が求められ、ドローンはこれらの要求に応える新しい配送手段として大きな可能性を持っています。既存の陸上配送に加え、ドローンによる“空のルート”を活用することで、災害時の医薬品供給、医療機関への迅速な配送、効率化による時間短縮といった新しい価値を提供できる体制づくりを進めています。
会社概要は、こちらをご覧ください。
https://green-service.co.jp/

株式会社Prodroneについて

株式会社Prodroneは、「地域から一番信頼されるドローンカンパニーになる」という目標を掲げ、中部圏でのドローン関連技術の発展を目指しています。最大20kgの荷物を運べるマルチコプター「PD6B-Type3」や、長距離飛行が可能な「Prodrone GT-M」など、産業用ドローンの開発から生産までを一貫して行っています。
会社概要は、こちらをご覧ください。
https://www.prodrone.com/jp/about/

セイノーホールディングス株式会社について

セイノーホールディングスは、物流を中心に、金融、人材、調達など物流に関連する様々なサービスをまとめて提供しています。「Team Green Logistics」をスローガンに、業界や企業の枠を超えた「オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)」を展開し、少子高齢化や環境問題といった社会課題の解決に向けて、持続可能な物流ネットワークの最適化を実現する「Green物流」の共創に挑戦しています。特に、買い物に困る方々への対策として「社会課題解決型ラストワンマイルO.P.P.」の構築を積極的に進めており、地域物流の集約・共同配送を軸に、新スマート物流プラットフォーム「SkyHub®」の取り組みを全国で推進しています。
会社概要は、こちらをご覧ください。
https://www.seino.co.jp/seino/shd/overall-condition/

愛知東農業協同組合について

愛知東農業協同組合は、愛知県北東部の山間地帯に位置し、長野県や静岡県と隣接しています。管内面積は愛知県全体の5分の1を占めますが、その85%以上が山林であり、農地は3.8%です。昼夜の寒暖差など山間地の気候を活かし、稲作や畜産を主体に、果樹や野菜などの栽培が盛んに行われています。特にミニトマト、菌床しいたけ、イチゴの生産が有名です。金融共済事業、営農事業、生活事業、店舗事業など、地域の総合的な事業を担っています。

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