北海道のワイナリーがドローンとAIでブドウ畑の巡回・確認業務を82%削減

北海道仁木町にあるNIKI Hills Wineryは、広大なブドウ畑で高品質なワイン用ブドウを栽培しています。しかし、病害虫の早期発見やきめ細やかな生育管理には、これまで多くの人手と時間が必要でした。この課題を解決するため、NIKI Hills Wineryは、AI技術を開発する韓国のDeepVisions、そしてプロジェクトの企画・調整を担うNAVER J.Hub Corporationと協力し、「スマート農業実証実験」を進めてきました。
実証実験の概要と成果
この実証実験では、ドローンがブドウ畑を自動で撮影し、その画像をAIが解析することで、ブドウの生育状況や病害虫の発生をリアルタイムで見えるようにするシステム「Vineyard Management System (VMS)」を構築しました。傾斜地を含む6.8ヘクタールの広大な畑で、高精度な位置情報や病害虫の認識を目指した取り組みです。
主な効果
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病害虫の自動検出と精密な位置特定
AIがドローン画像を解析し、「灰色かび病」や「マグネシウム欠乏」といった病気や生育不良を自動で検出します。発生箇所は高解像度の地図上に正確に表示されるため、作業者はすぐに適切な対応を取ることが可能です。これにより、必要な場所にだけ農薬をまく「ピンポイント散布」が実現し、年間農薬使用量の削減が期待されます。 -
データ連動型の農業日誌
農薬散布や肥料の記録、日々の作業内容をカレンダー形式で簡単に入力・管理できる農業日誌機能も活用されました。これにより、作業の履歴がデータとして残り、翌年以降の栽培計画をより良くしていくのに役立ちます。 -
AI性能の高度化
実験で集められたたくさんの画像データをAIに学習させることで、病害虫の検出精度が上がりました。特に、影になりやすい場所でも正確に識別できるよう、画像処理の技術が使われています。
この結果、人が畑を歩いて確認する場合に約5,000時間かかると試算される作業が、ドローンを使った巡回・確認作業では960時間で済むことが分かりました。これにより、確認作業にかかる時間を約82%も減らせると試算されています。
今後の展望
NIKI Hills Winery、NAVER J.Hub Corporation、DeepVisionsは、2026年も実証実験を続け、さらに便利な機能を追加したり、システムをさらに高度にしたりする予定です。時期はまだ決まっていませんが、このシステムの製品化を目指しています。
今後の主な機能追加予定
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予察機能の追加
気象観測機を設置し、そのデータとドローンのデータを組み合わせることで、AIが病害の発生条件を分析し、事前に警告する機能を追加する予定です。これにより、病気が発生する前に予防的な管理ができるようになります。 -
生育状況の分析
ブドウ畑の生育や栄養の状態を詳しく分析し、栽培計画に役立てることを目指します。 -
収量予測モデルの開発
ブドウの画像を解析して、畑の区画ごとの収穫量を高い精度で予測する機能です。これにより、ワイナリーの運営や収穫に必要な人手や資源を事前に計画しやすくなります。 -
有害動物監視システム
シカや鳥など、畑に被害を与える動物を自動で感知し、素早い対策を可能にします。
この先進的な取り組みは、農業が抱える課題を解決するモデルとなり、日本の持続可能なワイン産業の発展に貢献することが期待されます。
成果報告会を実施
2025年12月6日には、NIKI Hills Wineryで成果報告会が開催され、実証実験の概要や成果が関係者に報告されました。当日はドローンを使ったデモンストレーションも行われました。

仁木町長の佐藤 聖一郎氏は、この実証実験が「就農者の高齢化、労働力不足、気候変動への対応、鳥獣被害対策といった農業を取り巻く課題を克服するための対策であり、これからの地域農業を切り開いていくための非常に大きな礎になる」とコメントしました。また、北海道大学教授で北海道ワイン教育研究センター長の曾根 輝雄氏は、「病害の情報だけでなく、農作業の管理や就業管理といった側面にも通じるものであり、非常に素晴らしい。今後、病害の予察機能を期待する」と述べました。
質疑応答では、低い高度でドローンを飛ばす際の安全対策について、障害物センサーや自動帰還機能が搭載されていること、運転者が慎重に操作していることが説明されました。ドローンによる農薬散布については、現時点では予定がないものの、AIが算出した病害発生率に基づき、予防としてピンポイントでの葉面散布管理ができれば改善につながると考えられています。また、システムの実装については、ドローン導入コストの課題があるため、2026年には予測システムに力を入れ、安価なドローン写真と気象データを活用した予防を目指す方針が示されました。
各企業について
NIKI Hills Winery
広告会社DACグループが運営する複合型ワイナリーです。仁木町の活性化を目指し、2014年に事業を開始しました。醸造所、ブドウ畑、ナチュラルガーデン、レストラン、宿泊棟を備え、高品質なワインづくりと地域貢献に取り組んでいます。
URL:https://nikihills.co.jp/
NAVER J.Hub Corporation
韓国最大のIT企業であるNAVER Corporationが100%出資する日本法人です。日本国内での事業投資や運営を担当しています。
URL:https://www.navercorp.com/
DeepVisions
「ビジョンAI技術で人類の課題を解決する」を使命とする韓国のテクノロジー企業です。映像データをAIで解析する主力ソリューション「ビジョンプラス」は、様々な分野で社会課題の解決に貢献しています。
URL:https://www.deepvisions.co.kr/
株式会社DACホールディングス
広告事業を中心に幅広い事業を展開する企業グループです。
URL:https://www.dac-group.co.jp/


