アイ・ロボティクス、光洋機械産業、Heron AirBridgeが戦略的業務提携 ドローン運航の安全性・効率性向上へ

株式会社アイ・ロボティクスと光洋機械産業株式会社(KYC Asia Pte. Ltd.を通じて)は、シンガポールに拠点を置くHeron AirBridge Pte. Ltd.と、ドローン技術の共同開発や市場展開に関する戦略的業務提携を締結しました。この協力により、日本およびシンガポールを中心とした国内外市場で、安全性が高く効率的なドローン運用ソリューションの研究開発と商業化を目指します。

提携の背景と目的

シンガポールのHeron AirBridgeは、広範囲の空域管理とドローン運航管理を一つにまとめるシステム「AirBridge」とUTM(無人航空機交通管理)プラットフォームを開発している企業です。彼らは「国境を越えて空をつなぐネットワーク」を目標に掲げ、アジア各国でドローンの自動運航や遠隔管理の標準化を進めています。

日本でも、ドローンは物流やインフラの点検、災害対応など、さまざまな分野で使われるようになり、その動きはますます広がっています。そのため、ドローンを安全かつ効率的に使うためには、運航管理システムをより高度なものにする必要があります。このような状況を背景に、日本とシンガポールに拠点を置く3社は、ドローンの技術開発から市場への提供までを協力して進めるための覚書を結びました。

この提携によって、各社が持つ先進技術と国際的なネットワークを組み合わせ、新しい運航ソリューションを作り出します。そして、日本やアジア地域における次世代ドローン産業の発展と、社会での実用化を加速させることを目指しています。

HERONの航空管理システムのインターフェース

提携内容の詳細

3社は、今回の提携に基づき、以下の取り組みを共同で進めていきます。

プロダクトの共同研究

Heron社のドローン運航管理・UTMプラットフォームと、アイ・ロボティクスが提供するドローンソリューションや自動化サービスを統合し、共同で開発・テストを行います。これにより、複数のドローンを同時に遠隔で動かしたり、自動で飛ばしたりする際に、安全で管理しやすいシステムを構築します。

市場展開可能性検証の取り組み

開発したプロダクトを基に、日本、シンガポール、そしてアジア太平洋地域で、ドローンソリューションの共同事業展開が可能かどうかを検討します。各国の法律や市場のニーズを考慮しながら、ビジネスモデルや力を入れる分野を決めていきます。

実証実験の取り組み

この提携で開発された技術を検証するため、複数のドローンを使った実証実験を行います。これには、ドローンのミッション管理、飛行経路の調整による衝突回避、飛行ルールを守っているかの監視などが含まれます。

実証実験は、主に茨城県河内町にある「ドローンフィールドKAWACHI」で行われます。この施設は、アイ・ロボティクスが自治体と協力して運営する大規模な屋外飛行場と屋内試験施設で、夜間の飛行や長距離の目視外飛行(BVLOS)など、さまざまな条件での試験が可能な環境が整っています。また、国内の顧客や関係機関にも参加してもらい、現場のニーズを把握し、意見を取り入れながら、開発の精度と実用性を高めていきます。

モニターを見ながら共同作業する2人の男性

各社の特徴と役割

この提携では、各社が持つ優れた技術、経験、ネットワークを互いに補い合い、大きな相乗効果を生み出します。

  • Heron AirBridge Pte. Ltd.
    シンガポールを拠点に、ドローン運航管理やUAM/UAS(無人航空機システム)向けの高度な航空交通管理プラットフォーム「AirBridge」を開発・提供しています。シンガポール政府の支援プロジェクトから生まれた東南アジア初のUTM技術企業であり、シンガポール民間航空庁と協力して複数のドローン運航管理システムのプロトタイプを構築した実績があります。
    今回の提携では、Heron社がUTMとリモートID技術を提供し、複数のドローンをリアルタイムで管理したり、飛行経路を調整したり、自動で監視したりする中心的な役割を担います。

  • 株式会社アイ・ロボティクス
    マイクロドローンを使った狭い場所の点検や、ドローンポートを使った運用の自動化、壁面作業ロボットによる物理的な作業など、複雑な現場の課題に対応する最先端技術を提供しています。茨城県河内町では、自治体と協力して研究開発拠点「ドローンフィールドKAWACHI」を運営しており、24時間利用可能な往復10kmの屋外飛行エリアや屋内飛行場を備え、ドローンの試験・検証を一貫して行える環境を整備しています。

  • 光洋機械産業株式会社
    1950年創業の老舗機械メーカーで、建設・土木分野向けのプラント設備、仮設機材、コンベヤ装置などの製造販売で70年以上の実績があります。長年培った技術力と信頼を基盤に、日本全国やシンガポール、ベトナムを含むアジア各国に広がるビジネスネットワークを築いています。安全で安心な製品サービスを提供し続けています。

ドローン運用管理システムAnbridgeの画面

今後の協力の見通し

各社は、今回の覚書に基づく共同開発や実証実験で得られた知識を活かし、2026年以降、日本およびシンガポールで統合ドローンソリューションの商業展開を本格的に開始します。インフラの点検、物流、スマートシティの監視など、さまざまな分野のニーズに応えるとともに、将来的には「グローバルサウス」と呼ばれる地域を中心とした市場への展開も視野に入れ、各国パートナーと協力して安全で効率的な無人航空サービス基盤の構築を進めていくことでしょう。

今回の提携は、成長を続けるドローンやAAM(先進航空モビリティ)の市場において、先行する企業同士が市場で優位に立つための、国境を越えた戦略的な行動と言えます。UAS交通管理(UTM)市場は、2030年頃までに年平均17.8%で成長すると予測されており(※1)、特にアジア太平洋地域では年率19.1%と非常に高い成長が見込まれています(※2)。

日本とシンガポールは、技術面でも規制面でも先進的な市場であり、この両国から生まれるソリューションは、アジア全体の無人航空サービス産業を引っ張る大きなプロジェクトに成長するはずです。今後、各社はそれぞれの技術、人材、事業基盤を一つにまとめ、研究開発から商業化までを一貫して進められる体制を作り、ドローンを活用した新しい価値の創造に挑戦していくことでしょう。

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